チームビルディングを学ぶ
仕事をしていてどんな職種でも一人だけでやるものってほとんど無くて、大小の違いはあれどある程度チームで動くことが多くなりますよね。
私たち理学療法士も当然、一人の患者さんに対して医師、看護師、介護福祉士、ソーシャルワーカー、薬剤師、臨床検査技師などさまざまな職種と一緒に関わります。
部署内、部署間でも何か取り組みが有ればそれに向けてチームを組むことになります。
病院であれば栄養サポートチームとか、職員研修チームとかそういったものがあると思います。
私も現在、仕事の中で複数のチームに所属していますが、上手く進むチームと途中で進まなくなったり、目的が不明確になりそのまま解散をしてしまうなどいろいろなパターンがあります。
できればせっかく立ち上がり、物事を良い方向に向けようとチームを結成したのであればはっきり目標に向かってそれを達成したいですよね。
今回はそういったチームでの活動を上手く進めるためのチームビルディングの講義が本になった
「いつかリーダーになる君たちへ 東大人気講義チームビルディングのレッスン」
リディラバ代表 安部敏樹
を紹介します。
講義が本になっているので内容は初心者でも分かりやすく、ワークの様子も紹介されています。
本の背景と概要
著者はさまざまな社会問題に対して、関心がない「関心の壁」、知らない「情報の壁」、実際を見れない「現場の壁」の3つの壁を壊すための企画を作っている団体、リディラバの代表です。
この本は東大の講義を元にしています。東大に入れる、または東大で教職に就く人は個人としての優秀さは言うまでもありませんが、それでもチームとして動く際に上手くいかないことも珍しくありません。更に、さまざまな社会問題に取り組むソーシャルビジネスの分野では社員とボランティアなど色々な立場の人が参加することから特にチーム作りの難しさがあるそうです。そこで、これからソーシャルビジネスに取り組む学生に向けてのチームビルディングの講義を行っており、それを本にしたのが本書です。著者は学生のみでなく様々な企業や官公庁での講義やグループワークも行っており、読む人の現場で役立つ内容になる本になっています。
良いチームを作るには?
良いチームの原則として
•ルールとマインドセットの共有
→グランドルールなど
•技法の共有
→ディスカッション、ブレインストーミング、プレゼンなど何をやるか決まった時に全員が同じイメージを持つこと
•進捗状況と議論のステージの共有
→発散と収束
•意欲の共有
→やる気 前の3つをやってると自然にやる気も上がって来る
が挙げられています。
また、コミュニケーションの方向としてチームが成熟していくに従って形が変わっていきます。はじめはリーダーを中心に各メンバーとのやりとりが行われるハブ型からスタートして徐々にメンバー間の横の繋がりができていき、最終的にはリーダーも各メンバーも混ざり合う形で相互に意見のやり取りが行われるP2Pへと進化していきます。
グランドルールを決める
ルールとマインドセットの共有におけるグランドルールについて講義で決められたものとして以下の内容が紹介されています。
•議論に積極的に参加する
積極的に参加して意見を出し合うことは大前提。
•属事的であれ
個人に対する好き嫌いとかは課題解決には意味がないので、問題や課題や目標に対して自分の考えを向ける。
•発言の意図を明確に
主張、相談、質問、自分でも分からないなど明確にしないと相手は求められることが分からない。
•準備不足でしたは言わない
準備不足を言い訳にすると前に進まない。限られた時間でできるだけのところで準備をし、前進することを優先する。
•そんなの無理とは言わない
意見を出し合っていくとほとんどのことは意外と不可能ではないことが多いため、無理とは言わずに議論する。
•自分ができてなくても批判する
自分ができていないからと批判しないでいると話し合いは発展しない。個人が今の段階でできているかどうかよりも批判によりプロジェクトが前進することに意味がある。
技法
技法についてはプレゼンテーション、ディスカッション、ブレインストーミングが紹介されています。
①プレゼンテーション、伝える力
•伝えるの3段階
発信→相手が受信→相手の気持ちや行動が変化
第3段階までいかないのがつまらない話。学校の先生の授業とかは知識を発信、受信までで止まるのでつまらない。
•ギャップで惹きつける、ストーリーを練るなどで相手に感情移入しやすい工夫をする。
•トレーニングとして1分間プレゼンテーションが紹介されている。
②ディスカッション
ディスカッションのルールとして最低限欲しいものとして
前提条件:テーマの細かい設定
役割:ファシリテーター、書記、タイムキーパーなど
議決:結論を出すにあたり、全員一致、多数決
ルール共有:全員が発言する、ファシリテーターの進行に従う
対外共有:発表の有無
選択肢:結論に対する選択肢があるかどうか
時間配分:ディスカッションとまとめていく時間
が挙げられています。
この辺りを明確にしながら、発散と収束のタイミングを意識しながら議論していくことが大切になります。
③ブレインストーミング
チームでのアイデア出しの段階です。
意見を出しやすくするためのルールとしては
•批判しない
•実現可能かは気にしない
•とにかくたくさんアイデア出す
•人に乗っかるのOK
があります。そこに更にいくつか工夫を足して、身体を動かす、アイデアの数を数える、場所を変えるなどを加えると意見が出しやすくなります。
また、「日本を良くするには」など抽象的なテーマの場合にはあえて、ア行から始まることのみなど遊び心を含んだ制限をつけることで意見を出しやすくなります。
ファシリテーション
ファシリテーターは話し合いを円滑に進行する上で非常に重要であり、企業やグループによっては外部から招聘することもあります。ファシリテーターの腕次第で3時間かかって決まらないことが1時間で決まるなどかなり変わってきます。ファシリテーターは単純に話し合いを盛り上げれば良いわけではなく、1時間ならその時間内に意見を収束させ、合意形成をつくる必要があります。また、相互理解を深め、チームとして何か新しいアイデアを創り出すことが大切で、もともとある一つの答えのようなものに誘導するのでは、意味がありません。
また、ファシリテーターがメンバーに役割を与えることで個々の苦手な部分を補うこともできます。例えばしゃべりすぎて他者の意見を聞けない人に仕切り役を任せることで、意見を聞かないといけない役割になるので、他者の意見を聞けるようになったりします。
一方でしゃべれない人であれば、あえて「あまり発言しない立場から」などその人に近い立ち位置からの意見を出す役割を与えることで話し出しやすくなったりします。
話し合いの中では前述の技法を取り入れながら、話し合いのステージはどこにあるのか、発散と収束どちらがメインの時間なのかを意識していく必要があります。
例えばブレインストーミングであれば発散がメインになるでしょうし、ディスカッションであればスタートは発散で結論に向けて収束していく形になります。このイメージを共有しておくこと、ファシリテーターは何をしているかを明確に進行していく必要があります。
実はチームとして最も機能するのは、リーダー以外にファシリテーションの能力が高い人がメンバーにいて、リーダーをサポートできるチームがとても良いチームとして機能します。この人はリーダーが進行しようとするところの意図を汲み取り、それを他のメンバーに波及させられるので自ずとメンバーが考えを共有しやすくなります。
私が本書をどう役立てていくか
現在、私は仕事上で新しいチームが立ち上がりメンバーとして参加していますが、まだメンバー個々のイメージが共有されていません。
状況を説明すると
メンバー
10人程度、議論の経験は全体に少ない
意見の強いメンバーがいて、議論にも慣れている。
リーダーが複数いる体制、どの人もまだファシリテーションは慣れていない。
私はリーダーではないメンバーの一員。議論自体は経験することが多く慣れているが、ファシリテーションはあまり上手ではない。
チームの段階(タックマンモデル)
フォーミング(形成期)からストーミング(混乱期)への移行期
※このモデルについては以前の記事、「意見の衝突って大事」で紹介してます。
まだ互いの考えをぶつけ合えず、バラバラの方向を向いている。
チームとしての課題
プロジェクトとしての目的は理解しているが、細かい部分での理解度に差があり、温度差もある。意見の強いメンバーの考えが全体を引っ張っている。他のメンバーの意見は少なく、反映されにくい。このままやっていけるか不安を感じるメンバー、納得いかないメンバーがいる状態。一方で引っ張っているメンバーは周りの煮え切らない態度に怒りが抑えられない、という状態になっている。
こういう状況って割と良くあるんじゃないかな、と思います。
そこで、今回の本の内容を活かしていくと
•グランドルールを決めて共有、ベースとなる知識の共有
•ブレインストーミングを行いメンバーの意見を引き出す
•その際にルールを決めて個人の安全を守る
•相互理解が深まったらディスカッションに進む
•ディスカッションでもルールの共有
•それぞれの段階で行なっている技法の共有をする
といったことができるのではないかと思います。
そしてこの過程で課題の温度差や主張の強さの偏りも整ってくると思います。
ストーミングに突入、無事乗り越えればノーミングに入りチームとして成熟してくるというストーリーを描いています。
まずはルールや技法についての提案をしてみようと思います。
この部分に関しては私自身のこれまでの経験上も重要だと思っている部分なので、しっかり提案します。
そして私自身はファシリテーターのサポート役に回ります。スキルは決して高くないですが、チームの中では経験のある部類に入るためサポート役として機能しやすいのではないかと考えています。
本の内容通りにうまくすんなりいく訳はなく、実際どうなるかはやってみないと分かりませんが、また今後のnoteの中で時々状況を紹介していきます。
その時には改めて、今回の内容も含め振り返っていこうと思います。
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