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幻想小説 幻視世界の天使たち(始まりのエピソード)

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遥かな時を超えて、歴史上の謎の解明に挑む者たちの物語です。物語の主な舞台は現代の日本と中央アジアですが、まずは 千年ほど昔の出来事から始まります。
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#幻視

幻視世界

ミッキー・イナゲヤ

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公開中の動画「古のパワースポット北鎌倉のお寺」のBGMとして使われています。フラメンコギター楽曲の音階や不協和音を用いて深く不思議な世界を表現してみました。

幻想小説 幻視世界の天使たち 第15話

幻想小説 幻視世界の天使たち 第15話

日本の大学生二人がユースフの研究室を訪問した頃、大学の辺りでは異変が起きていた。その日は朝から一点の曇りもない晴天であったが、数カ所で専門家がスーパーセルと呼ぶ異常な気象現象が起きた。それはこの地方では、昔からしばしば発生し住民たちを脅かした巨大竜巻だった。
竜巻は大学の周りの田園や街中で発生し、すさまじい雷鳴と上昇気流を伴いいくつもの建物を破壊した。大学においては、キャンパス内の数か所で突風が起

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幻想小説 幻視世界の天使たち 第13話

幻想小説 幻視世界の天使たち 第13話

ユースフは話を戻して続けた。
「ピジョンのメールには触れられていなかったが、私が調べた古文書の中には、鏡を見る事によって幻視が始まり、加速させ、また鏡を見ることによって現実に戻るということが書いてあった。何故だかよくわからないのだが、右と左が反対の自分の姿を見ることで、感覚が研ぎ澄まされた脳に何らかの影響があるのかもしれません。ボイドさん、いずれにしても道具立てをそろえて頂き感謝します」
そう言う

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幻想小説 幻視世界の天使たち 第12話

幻想小説 幻視世界の天使たち 第12話

この篠原ミカからのメールを読み終えると、ユースフは両腕を頭の後ろに回し、研究室の天井をじっと睨んだ。ボイドが推してくる女性だけあって、その立てた仮説は説得力がある。ユースフは彼が幼い時に見た強烈なスーパーセルに固執しすぎたかも知れない。ボイドもこのミカの説には賛同しているようだ。しかしこの説を採るにしても、それを実証するのはどうすれば良いのだろうか。彼はまたしばし考え込んでしまった。そしてやがて独

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幻想小説 幻視世界の天使たち 第11話

幻想小説 幻視世界の天使たち 第11話

ユースフは考えた。息子のジンに先進医療技術のある海外の病院で治療を受けさせるためには、あの賞金百万ドルは何としても手に入れたい。この際、モンゴル帝国軍の船団の消失に関しての研究を継続できるなら、日本の女子大生が誰にせよその教えを受けよう。それが今、大金を手にするために彼に残された唯一の方法だと思われるのだから。
その時、ユースフのパソコンにテキストだけのメールが送られて来た。差出人はミカ・ピジョン

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幻想小説 幻視世界の天使たち 第2話

幻想小説 幻視世界の天使たち 第2話

 マイラムの治療にも拘らずアイの意識は戻ることなく、その日も夕方近くになった。マイラムも疲れたように椅子にへたりこんでいた。リョウとマイラムは殆ど口を聞かなくなっていた。やがてマイラムは日が暮れ始めた窓の外を覗きリョウに言った。
「これ以上私にはどうすることもできない」
リョウは半分泣きながら言った。
「何でもします。母さんを助けてください。何とか、何とかお願いします」
マイラムは暫く黙っていて考

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幻想小説 幻視世界の天使たち 第1話                

幻想小説 幻視世界の天使たち 第1話                

(前書き)
遥かな時を超えて、歴史上の謎の解明に挑む者たちの物語です。物語の主な舞台は現代の日本と中央アジアですが、まずは 千年ほど昔の出来事から始まります。

(プロローグ 中央アジア古からの伝承)
深い緑の草原を青年が馬を走らせていた。目の前にはなだらかな弧を描く丘が見える。あの丘を越えると村がある。青年はその村に住むこの辺りでは只一人の医者の許に急いでいた。
青年はリョウという名前であった。

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