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東欧の高度ITエンジニア達が出雲に集結。ハッカソンと視察ツアーに行ってみた。

昨年初めて訪れた出雲。縁結びの聖地として知られる出雲大社の名が示す通り、不思議な縁で再訪することに。

今回は、東欧の高度ITエンジニア達によるハッカソンイベント「Hack Izumo」の DEMO Day と、あわせて実施された出雲ビジネス視察ツアー(日本企業向け)に参加しました。

今回は2月27日、28日の2日間で行われたイベントを見て感じたことなどを書きます。


Hack Izumo とは

「Hack Izumo」は、東欧から日本への移住を検討している高度IT人材*が集まるハッカソンイベントです。

参加者は半年間のオンライン日本語学習を終わらせて2月後半に来日。2週間の滞在で特定のテーマに沿った開発を行い、その成果を発表しました。

イベントは、株式会社People Cloudが運営する「Hello, Yaponiya(ハロー・ヤポーニヤ)」プログラムのひとつです。東欧の雇用環境がウクライナ侵攻による世界情勢の変化で激変したこと背景に、安全で安心できる環境を求めて流出した30万人以上の東欧のIT人材に焦点を当てサービス展開しています。

*ここでいう高度IT人材は、数学、物理、情報科学などの理数系の高等教育を受けた、高い技術力を持つITエンジニアです。

ロシア、東欧出身のITエンジニアには有名テック企業の創業者が多いですね。

People Cloud 概要資料から引用

いきなり余談中の余談ですが、マックス・レヴチンの How I Built This のエピソード (Spotify)はめちゃくちゃおもしろいです。

DEMO Day (成果発表)

今回は出雲市が抱える以下の課題について、参加者がアプリケーション・ソリューションを開発しました。

  1. 日本語指導が必要な児童生徒への支援

  2. 外国人住民の多言語対応

  3. 周遊・滞在型観光に向けた利便性の向上

発表当日、朝10時過ぎに始まった DEMO Day 。司会はボリスさん (People Cloud) 。明るすぎる挨拶、周りを巻き込むエネルギー。なんだこれ。すごいコミュ力に圧倒された。上手な方だなと思っていたらなんと過去に演劇を学んでいたそうです。どうりで・・・

開発環境は協賛企業のトランスコスモス社が国内で展開するノーコードツール「Adalo」を使用。Adalo のカスタムコンポーネントを使って実装。仕様上、実現が難しい部分については各チームがシステムを自作し対応していく。

DEMO Day では、大半の参加者来日ながら提案のクオリティは高く、最前列に座る有識者たちが頷く場面が多かったことが印象に残りました。プレゼンは日本語と英語が通訳も入りながら進行。日本語の自己紹介は完璧で、英語はビジネスレベルを超えていました。

(各チーム発表内容の詳細は別のエントリーでご紹介予定です)

オーディエンス側の参加者と話をして興味深かったのは、作業者的な IT エンジニアは Copilot、生成AIが前提の withAI 時代になると仕事探しに苦労する件。

凄まじく低コストで開発ができるようになった結果、仕事が見つからないエンジニアが既に出てきており、オフショア開発が盛んなベトナムでは課題が既に顕在化しているとのこと。

慢性的な「エンジニア不足」はどの国でも言われているが、Copilot が供給するリソースによって一部のエンジニア不足は急激に改善されているようです。

一方で、ハッカソンに参加した東欧からのエンジニアたちは高度ITエンジニアの名の通り、作業だけではなく自走できるエンジニア達だったと発表後に周囲の話を聞いて理解しました。彼らは今後も必要とされ続ける人たちです。

発表が終わった後は、発表側とオーディエンス側で混ざってランチ。詳しい話を聞けました。

気になっていたのは、「なぜ日本なのか?」ということ。待遇面だけを見ると、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジア等より良い条件がある中で日本を選ぶ理由はなにか。

何人かに聞くと、純粋に日本に関心がある、好きなので住んで働きたい、という回答が基本にありつつ、「安心、安全が担保されていて未来を予測できる生活ができるのが良い」という社会の安定を理由にしている方もいました。当然、必要な待遇の最低ラインはありますが、あくまで日本に来て働くことが最優先。

何をどうやったら日本で働けるのかわからなかったから、Hello, Yaponiya を入口として使った、という点はすごく納得。既に People Cloud が興味関心を持つ顕在層にリーチできるプラットフォームとして成立していることがわかります。

開始直前の様子
1チーム20分間のプレゼンテーションを3組行う。
通訳も入りながら実装内容を発表。
実際にデモを動かした際には会場が盛り上がる。
発表中のワンシーン。
発表終了後に協賛企業のトランスコスモス株式会社から記念品の授与。
Con Soleil, 吾郷さんによるヨーヨーパフォーマンス (写真が遠くてすみません・・・) 
吾郷さんは10代でクラウドファンディングで集めた資金を元手にヨーヨーの会社を起業されたそう。パフォーマンスも会場を広く使って立体感があり盛り上がりました。

People Cloud が目指す世界

株式会社People Cloudは東欧の人材が日本で働くことをフックに、地方都市への企業誘致を目的に設立された行政と一体となった官民合弁の会社です。

「出雲から、Izumoへ」をスローガンに掲げて、出雲を日本の一地方都市から、世界中から優秀な人材や企業が集まる、魅力溢れる国際都市に導くことを目指しています。

People Cloud 概要資料から引用

そもそもなぜ出雲なのか、どこから始まったのか、は People Cloud を支える企業の一つ、SAMI Japan 代表の牧野さんとボリスさんが特集されたコテンラジオのエピソードを聞くとわかりやすいです。

優秀な海外人材や企業を日本に呼び込む事業を展開する企業は幅広く存在しています。

People Cloud がユニークなのは、人を呼び込むだけではなく、呼んだ後にどう幸せに暮らしてもらえるかまでを考えている点です。行政と協働して地域密着していることからわかるように中長期的な視野に立っています。

People Cloud 概要資料から引用
People Cloud 概要資料から引用

出雲市の企業誘致策はお得な点がたくさん

視察ツアー中に、出雲市が取り組む企業誘致施策を教えてもらう機会がありました。結構、お得です。

People Cloud を一例として、島根県出雲市は企業誘致に積極的。助成金の敷居も低く、まずは出雲を知ってもらうことから始められるような点が魅力的です。例えば次の2つ。

出雲市IT企業拠点開設トライアル助成金

出雲市中山間地域へのオフィス開設支援事業助成金

住宅家賃補助、オフィス代補助、航空運賃の補助 (すごく有り難い)などがあります。

日御碕サテライトオフィスの様子

誘致施策に関連して、日御碕サテライトオフィスを見学。ここは2015年に閉校となった出雲市立日御碕小学校をリノベ。2022年春に「日御碕サテライトオフィス」として再スタート。

外観、内装がとてもキレイ。廃校だったとは全く感じさせない。そして、景色。絶景が楽しめる日御碕の名の通り、オフィスから見える海の景色は素晴らしかった。(写真を取り忘れてしまった)

出雲の豊かな文化資本に感じた可能性

急に何の話ですか、という感じですが・・・

今回、出雲行きの機内で「文化資本の経営」という本をたまたま読んでいました。読んだ内容を反芻しながら出雲見学すると、出雲の将来にすごく可能性を感じました。

著者は経済活動を経済資本、文化資本、環境資本に分類して話を進めます。文化資本は経済資本と環境資本を繋ぐものとしてを位置づけます。これまで「見えない資本」として経済資本に取り込まれていなかった文化や歴史などを、あえて経済的な資本として捉えて新しい価値を創造していく、という話です。それをどう経営に活かすか、「文化資本を活かした経営」について理論から実践まで丁寧に書いています。

一回読んだだけでは言葉の定義などが難解で理解が難しかったので、読み返しています。ただ、気づきに繋がるヒントは多くあり、本の中の言葉が出雲での体験とリアルで重なる部分が多く驚きました。

出雲は本が定義する文化資本がとてつもなく豊かです。歴史、企業文化、人の営みが擦れていない。良いか悪いかは置いて、市場経済が浸透しきっておらず、まだ消費の対象として食い物にされていない。つまり、新しい価値を創造していく土壌が完璧に整っているように見えるのです。

一体何を見てそう思ったか、それは長くなってしまいそうなので次回に。

出雲がアツい。

People Cloud の杉原さん、ボリスさんを中心に出雲大社を案内いただいた。
出雲大社。平日だったので空いていて快適だった。
延泊して行ってきた足立美術館。
冬の横山大観コレクションも見れて最高でした。

参考資料



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