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国際情勢:プーチン大統領について⑨

 ドルとプロパガンダ(⑨は3,619字)

 プーチン大統領
 「プロパガンダ戦争において、米国に勝つことは非常に困難です。なぜなら、アメリカは世界中のメディアと多くのヨーロッパのメディアを支配しているからです。ヨーロッパ最大のメディアの最終的な受益者はアメリカの金融機関です。ご存じないのですか?」
 
 President Putin
 “Win a propaganda victory in the war of propaganda, it is very difficult to defeat the United States, because the United States controls all the world's media and many European media. The ultimate beneficiary of the biggest European media are American financial institutions. Don't you know that?”
 
 プロパガンダと金融の問題について、プーチンは語っている。
 
 ロシアの天然資源、特に天然ガスを送るパイプラインに、欧米は関心を持っていた。
 
 まさにハートランドの例でもある。このロシアの天然資源は、アングロ・サクソンの政治・経済の邪魔だった。
 
 この後、プーチンは、2022/09/26のノルド・ストリーム爆破事件について、言及している。
 
 この問題に動機・関心がある者と、爆破実行可能な者の中に、犯人がいるとする。
 
 これはスパイの考え方、KGB流の考え方だろう。推理小説で言えば、名探偵ポワロだ。
 
 アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』で、ポワロは速攻で犯人を見つけて、捕まえた。
 
 これは殺人の動機を持つ者の中から、実際に殺害可能な凶器を持つ者を分けて、犯人を特定している。
 
 ノルド・ストリーム爆破事件についても、これと同じ事が言えるだろう。
 
 英米では、証拠主義のシャーロックホームズが、重視されるが、証拠がない限り、決着が付かない。
 
 コナン・ドイル『名探偵ホームズ』では、第一話で証拠が見つからず、事件を解決できず、失敗している。
 
 名探偵と言っておきながら、第一話でいきなり失敗するのは、小説として、インパクトがある。リアルだ。
 
 ホームズとポワロの対立は、英米と大陸の考え方の違いを反映しているが、プーチンはポワロ派だ。
 
 西洋文明は、アングロ・サクソンの英米派と、独仏の大陸派に分かれているが、これはそのまま、考え方の対立になり、ホームズ流の証拠主義と、ポワロ流の動機主義の対立になる。実際はもっと複雑だが、単純化すると、そういう側面もある。哲学の世界でも、大陸合理論とイギリス経験論とか、対立の構図は複数ある。
 
 西洋文明の中での、英米と大陸の対立は、永遠に続く、永久機関のようなものかも知れない。
 
 プーチン大統領
 「ドルを外交闘争の道具として使うことは、アメリカの政治指導部が犯した最大の戦略的過ちの一つです。ドルは米国のパワーの礎石です。ドルをいくら刷っても、すぐに世界中にばらまかれる事は、誰もがよく理解していると思います」
 
 President Putin
 “You know to use the dollar as a tool of foreign policy struggle is one of the biggest strategic mistakes made by the US political leadership. The dollar is the Cornerstone of the United States power. I think everyone understands very well that no matter how many dollars are printed they are quickly dispersed all over the world.”
 
 プーチン大統領
 「アメリカの同盟国でさえ、ドル準備を縮小しています。それを見て、誰もが自分たちを守る方法を探し始めるのです。しかし、アメリカが特定の国に対して、取引制限や資産凍結などの制限的な措置を取る事は、重大な懸念を引き起こし、全世界にシグナルを送る事になります。2022年まで、ロシアの対外貿易取引の約80%は米ドルとユーロで行われていました。米ドルは第三国との取引の約50%を占めていました。しかし、現在は13%にまで減少しています。米ドルの使用を禁止したのは私たちではありません。そのような意図はありませんでした。米ドルでの取引を制限したのはアメリカの決定です」
 
 President Putin
 “Even the United States allies are now downsizing their dollar reserves. Seeing this, everyone starts looking for ways to protect themselves, but the fact that the United States applies restrictive measures to certain countries such as placing restrictions on transactions freezing assets Etc causes great concern and sends a signal to the whole world. what did we have here until 2022 about 80 % of Russian foreign trade transactions were made in US Dollars and Euros US Dollars accounted for approximately 50% of our transactions with third country, while currently it is down to 13% . It wasn't us who banned the use of the US dollar we had no such intention it decision of the United States.”
 
 これはアメリカの現政権が、自爆した件について、語っている。
 
 サッカーで言えば、オウンゴール並みの失敗であり、敵を傷つけようとして、自分が傷ついた。
 
 今までは、問題ないと思って使っていたドルだが、アメリカの意向次第では、どうにでもなると分かった。
 
 世界各国、早速、ドルの積み立てを崩して、減らし始めている。リスク分散で、他の通貨を積み立てる。
 
 別に普通の事だが、今まで、敢えて、アメリカが手を付けないから良かったのに、手を付けて、自爆した。
 
 プロパガンダでは成功したが、肝心の金融では失敗している。これはアメリカの一人負けだ。
 
 この件では、プーチンは何もしていないし、勝手にアメリカが、オウンゴールしただけだろう。
 
 アメリカの現政権は、よほど知性が低いのかも知れない。意味不明の重体だ。
 
 商売敵の悪口は散々言ったのに、自分の信用は下げてしまった。とても愚かな商人だ。
 
 プーチン大統領
 「今年ロシアが議長国を引き継いだBRICSについては、BRICS諸国は概して非常に急速に発展しています。私の記憶が正しければ、1992年にはG7諸国の世界経済におけるシェアは47%でしたが、2022年には30%強にまで低下しました。BRICS諸国は1992年にはわずか16%でしたが、現在ではG7のシェアを上回っています。これはウクライナの出来事とは何の関係もありません。これは先ほど述べたように、世界の発展と世界経済の傾向によるもので、避けられないことです。これは今後も起こり続けるでしょう。それは太陽が昇るようなものです。太陽が昇るのを防ぐことはできません。それに適応する必要があります。アメリカは、武力、制裁、圧力、爆撃、軍事力の使用の助けを借りてどのように適応するのでしょうか。これは自惚れの問題であり、あなたの政治体制は客観的な状況下で世界が変化していることを理解していません。」

 President Putin
 “As for BRICS where Russia took over the presidency this year, the BRICS countries are by and large developing very rapidly. Look, if memory serves me right back, in 1992 the share of the G7 countries in the world economy amounted to 47%, whereas in 2022 it was down to I think a little over 30% the BRICS countries accounted for only 16% in 1992, but now their share is greater than that of the G7. It has nothing to do with the events in Ukraine. This is due to the trends of global development and World economy as I mentioned just now and this is inevitable. This will keep happening. It is like the rise of the sun. You cannot prevent the Sun from rising. You have to adapt to it how do the United States adapt with the help of force sanctions pressure bombings and use of armed forces. This is about self-conceit your political establishment does not understand that the world is changing under objective circumstances.”
 
 結構、痛烈である。思いっ切り、アメリカをこき下ろしている。
 
 アメリカのドル政策の失敗と、BRICSの興隆は、今到る処で、議論されている。
 
 これはアメリカの現政権のせいだけでもないが、アメリカ全体の凋落を示している。
 
 もしトラで、アメリカがどこまで挽回できるのか、高みの見物である。
 
 また現職が勝って、続くなら、それこそ、アメリカに対する「自爆テロ」は続くだろう。
 
 G7の世界経済におけるシェア低下の原因については、エマニュエル・トッドの『西洋の敗北』で取り上げる。
 
 1990年代と2020年代の間には、2000年代と2010年代がある。ここで一体何が起きていたのか、後程説明する。

 少しだけ予告すると、G7の中産階層の没落である。では、その原因は何だろうかと、トッドは考察している。
 
 プーチン大統領
 「ロシアは昨年、あらゆる制裁や規制にもかかわらず、ヨーロッパで最初の経済大国となりました。あなたの視点からは、制裁、制限、ドルでの支払いの可能性がSWIFTサービスから遮断され、石油を運ぶ彼らの船に対する制裁は正常ですか?飛行機に対する制裁。あらゆるもの、あらゆる場所での制裁。世界で最も多くの制裁がロシアに対して行われています。そしてこの間、私たちはヨーロッパで最初の経済大国となりました」

 President Putin
 “Russia was the first economy in Europe last year, despite all the sanctions and restrictions. Is it normal from your point of view sanctions restrictions impossibility of payments in dollars being cut off from Swift Services sanctions against our ships carrying oil sanctions against airplanes sanctions in everything everywhere the largest number of sanctions in the world which are applied are applied against Russia, and we have become Europe's first economy during this time.”
 
 これは現在の状況を切り取って、そう言っている。こういうのは、またいつひっくり返るか分からない。
 
 アメリカの現政権が続く限り、そうなのかもしれないが、政権交代が起これば、変わるだろう。
 
 ロシアもいつまでも調子がよいとは限らない。不安材料は国内に沢山ある。
 
 「兵士たちの母の会」という組織が、ロシアにはある。プーチンが最も恐れる組織である。
 
 この組織を敵に回したら最後、プーチンも政権を追われる。だから平身低頭で接している。
 
 泣く子も黙るプーチンも、兵士たちの母は怖いようだ。滅茶苦茶、低姿勢だし、支持を得ようとている。
 
 別にプーチンは、女たちが怖い訳ではない。最近は囚人の女性まで、兵士にしている。
 
 両軍ともに、囚人兵を戦争に使い始めているが、とうとう女性の囚人兵まで登場した。
 
 これは止めるべきだ。絶対にやるべきではない。本人たちがOKでも、やるべきではない。
 
 戦争は男の仕事だ。命を産み、育てる女性のやる仕事ではない。絶対に反対だ。
 
 こんな事をOKしたプーチンが、死後どうなるのか、今の処、分からない。
 
 殺した人の重さより、救った人の重さが、勝れば、英雄として、天国に帰れるかも知れない。
 
 だが囚人女性たちを兵士にして、戦場に送り込むのは罪だろう。確実に地獄寄りの政策だ。
 
 英雄は、本当に死ぬまで分からない。沢山の人を殺し、沢山の人を救うからだ。
 
 そこには、単純な算数の問題だけでなく、動機や意図も含まれる。大物の天国地獄は難しい。
 


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