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☆本#170,171 儚く散る 「海」「ことり」小川洋子著を読んで

 海は短編集、ことりは長編。

前者の表題「海」は、結婚の挨拶で女性の実家へ行った男性が、義弟から聞いたことのない楽器を教えてもらう。著者の作品としては、比較的現実世界。二十歳の女性がツアー旅行で、同室の60代女性の元恋人に会いに彼のいる病院へ行く、ウィーンでの巻き込まれ旅が印象的。実は相手が違っていて、実は隣にいる人と判明し、不思議な余韻を残す。勘違いしていた相手は目を覚ますことはなく逝く。

言葉を話さない子供との交流も、独特の世界観、空気感。

「ことり」は、今年読んだ本の中で、今のところ読みながら一番悲しかった話。なんでだろう。著者の作品は寂寥感がオブラートに包まれてる感じで悲しくてもそう感じさせないのだけど。

子供の頃鳥の言葉を話し出し、それまで話していた言葉を話さない兄と、唯一兄の言葉を理解し、両親の死後寄り添って生きてきた小鳥の小父さんの生涯。

大事件が起きるわけではないのに、心に何かずっしりくる。

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