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☆本#173 「待ち遠しい」柴崎友香著を読んで

以前書評で知って読もうと思っていた作品をついに読んだ。

主人公は39歳の独身女性の春子で、結婚願望がない。仲の良い友人がいて50歳を過ぎたらみんなでいっしょに住もうとゆるい約束をしている。

10年住んでいる家の大家のおばあさんが亡くなり、そこにその娘ゆかりさん(60代)が引っ越してきたことで交流が始まる。ゆかりさんの夫は2年前にがんで亡くなっていて、子どもたちは遠くに住んでいる。

敷地内に彼女の甥夫婦が住んでいて、その嫁の沙希ちゃん(25歳)との交流も始まる。
ストーリーはこの3人を中心に進む。

春子は就職氷河期世代で、就活では苦労しているので今の仕事は満足しているわけではなさそうだけど辞める予定はなく、現状に満足している。

ゆかりさんは若干おせっかいなおばさんだけど、基本いい人で思いやりもある。けど、いじめにあって登校拒否した娘が自殺しかけ、子どもとの関係が相当こじれているという意外な過去がある。

読んでて最初群ようこのすみれ荘シリーズを想起した。これは、主人公が独身女性で貯めたお金で生涯生きようと家賃の安いすみれ荘に引っ越し、周りの人やすみれ荘の住人との交流を描いた作品。
比較すると、すみれ荘のほうは登場人物が自立していて全体的に平和な感じというか淡々としていて、確かたまに母親に振り回される。「待ち遠しい」のほうは沙希ちゃんが結構面倒臭いキャラクターで事件も彼女を中心に起こる感じ。良く言えばスパイス的、悪く言えば自己中で人をわざと嫌な気分にさせる物言いをする点で質が悪い。

沙希ちゃんはおそらく脳がまだ成長中なのだろう。シングルマザーの母親からうちはお金がないからという言葉を呪縛のように散々聞いて、どうやら夢や希望をもとからあきらめている。
ストーリーは沙希ちゃんの妊娠がわかり、今後も3人の交流が続くだろう的感じで終わる。

この著者の本は、「寝ても覚めても」を読んだことがある。その後特に読んでなかったようだけど(印象が薄い...)、どれか読んでみようかなという気になった。


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