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営業活動を革新する「5つの基本」③

皆様こんにちは、㈱マネジメントパートナーの人材・組織開発コンサルタント、関 教宏(たかひろ)です。

前回まで、環境変化に左右されず業績を上げ続ける営業のものの見方(考え方)=5つの基本の内、「役割と責任の認識」「お客様の理想像実現を心から願うスタンス」をご紹介してきました。

今回は3つ目の「お客様を知る為の視点」についてお伝えします。

「5つの基本」その③:お客様を知るための視点

前回の記事(https://note.com/mgp_seki/n/n52c1d228ce22)で、これからの時代における営業の必須条件は「お客様の理想像実現を心から願うスタンス」を持つこと(その対極が「売るモノありき、自分の都合ありきのスタンス」)とお伝えしました。

ではどうすれば「お客様の理想像」ならびに「理想像実現のポイント」を知ることが出来るのか?ここでは環境変化に左右されず売上・利益を上げ続ける営業がどのような視点でお客様の事を視ているのかお伝えします。

(1)「お客様の3C」を整理し、お客様の現状を知る

市場において自社の置かれている状況を整理するためのフレームワークに3C分析というものがあります。3Cは「Company(自社)」「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」それぞれの頭文字をとったものです。

営業活動において3C分析をすることは、お客様が欲する価値は何か、その中でも競合には提供できず、自社にならば提供できる価値は何か(ユニーク・セリング・プロポジション=USPと言います)仮説を立てる上で非常に有効です。

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実務においてこのフレームワークを用いる際のポイントは「USPを考える前に、お客様の3Cを整理する」事です。

お客様の3Cとは、「お客様のお客様(BtoCならばお客様の関係者=例えばご家族等)」「お客様の競合(BtoCならば脅威になりうる外部環境=例えば法改正、補助金等)」の状況を整理する事で、お客様(企業および対象となるキーパーソン)が描いている理想像の背景や、理想像実現に向けてお客様がすべきこと、既に取り組めていること、できていないことを推測するという意味です。

*お客様の理想像そのものについては、前回も触れましたが「IR情報、業界紙、アンケート、生の声」などを情報収集した上で仮説を立てることが有効です

こうして、思考の起点を「自社に出来ること」から「お客様の理想像とその実現ポイント」に意図的にシフトさせることで、「売るモノありき、自分の都合ありきのスタンス」から脱却したUSPを作り上げるのです。

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ところが、お客様の3Cのみでは「お客様の理想像実現を心から願うスタンス」を体現するには不十分です。

なぜならば、お客様の3Cはあくまでも「外部環境から導き出したお客様の課題」に過ぎないからです。

お客様からしてみれば、いかにも理路整然と「置かれている環境がこうだから、御社はここに取り組むべきです」などと言われたところで、

「ウチのことを何も知らないクセによくそんな正論を言えるな」と、感情的に"No"が出る可能性が高いのです。

当たり前の話ですが、私たち営業が商売をするお相手は血の通った生身の人間です。AIやセールステックがどれだけ進化しようがこの原則は変わりません。

ではどうすればお客様に「本当にウチの事を考えてくれた提案だ」と心を開いていただけるか?そのために必要なのがお客様の「内情」と「想い」を知るという視点です。

(2)お客様の内情を「業務プロセス」と「財務」の視点で理解する

B to B、 B to C に関わらず、お客様が抱えている内情は千差万別です。

結局のところ、個別事情についてはご本人にお話を訊く以外に本当の所を知る術はありません。

一方でお客様は、どんな営業に対してもご自身(自社)の内情を明け透けにお話ししてくれる訳ではありません。「この営業は本当にウチの業界や状況を理解してくれている」という安心感があってこそ本音を話してくれるのです。

ここではお客様の内情を正しく理解するために営業がどのような切り口でお客様の内情を整理すべきかお伝えします。

1)業務プロセス

ここでいう業務プロセスとは「仕事の進め方及び体制」という意味です。下の図をご覧ください。

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これは弊社がお客様のビジネスを理解するために用いている経営のフレームです。

外部環境変化に適応するために、お客様は自社のビジョンに立脚した戦略・方針を掲げます。変化への適応ですから、動き方を変え、変化の方向でマンパワー、人的能力を向上させる必要があります。

さらに、内部のメンバー同士、部門間の連携、外部との連携の形も最適なものにすべくオペレーション(仕組みや制度、システム等)に改廃を加えます。そうして動きを変えた結果が経営成果です。

お客様の業務プロセスを理解する時にはこのフレームを用いて整理すると便利です。

1例として、オール電化家電の販売店(従業員50名以下)における業務プロセスを見ていきます。

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このようにして現状を整理し、且つお客様の3Cと紐づけることで、お客様が理想像を実現する上ですべきことは何か、現実を見た上で整理することになります。

なお、B to C のビジネスにおいては、ここの部分は、この後にお伝えする財務の視点と合わせて、シンプルに「お客様の個別事情」と読み解くとよいです。投資の促進要因、阻害要因となる関係者との関係性や優先している事柄などを読み解いていくことが重要です。

2)財務の視点

財務というと数字の羅列で身構えてしまうという方は少なくないと思います。財務分析は非常に深淵な世界であり、それだけで食べている方もいるくらいです。

ここではそのような詳細を述べるつもりはありません。あくまで営業として、財務の視点で最低限見るべきところをお伝えします。

最低限見るところとは「お客様が昨年度、一昨年度と比較したとき、売上、利益がどのように変動しているか」です。

財務を齧ったことのない方でも「増収増益、増収減益、減収増益、減収減益」という言葉を聞かれたことはあると思いますが、ここで申し上げたいのはそのことです。

お客様の売上と営業利益(本業での儲け)について、以下の4パターンで過去と今とを比較することで、お客様の現状理解を深めていきます。

*なお、情報源については、上場企業であれば有価証券報告書、ホームページなどで発信されています。非上場企業においては、決算公告や普段からの活動の中での情報収集という手段になります。

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営業として重要なことは、先ほどまでにお伝えした「お客様の3C」や「業務プロセス」の整理に合わせ、財務の視点を加えることで、お客様の投資の優先度や、目指す理想像実現のスピード感を探ることです。

勿論、この切り口でお客様の事を視たところで、すべてを把握することは難しいです。分からないことは、お客様に訊けばよいのです。

お客様の立場になって考えてみてください。何の準備もなく「懐事情を教えてください」という営業と「決算書を見ても御社は大変好調と推測しますが、特にどういった点に注力されているのですか?」と、こちらの状況に配慮して具体的な質問をしてくる営業。

皆様ならどちらに頼りがいを感じるでしょうか?また、「この営業にならば話してみよう」という気になるでしょうか?

お客様の内情理解は、お客様に配慮した提案をするための第一歩といえるのです。

(3)お客様の”想い”を時間軸で整理し、理想像の背景を知る

お客様の内情を理解する上で、時間軸の整理も大変有効な手段です。

なぜならば、こういった整理をすることでお客様が描く理想像の背景にある「ストーリー」を理解できるからです。

私たちが歴史上の人物に強い思い入れを持って共感、尊敬できるのも、彼らの「ストーリー」を知っているからです。

例として、B to B ビジネスにおけるお客様経営層のストーリーを整理する切口をご覧ください。

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いかがでしょうか?こちらをお客様が扱っている商品を主語にするならば、過去の部分は「この商品が世に出ることになったストーリー」を整理することになりますし、B to C ならば「現在の悩みや問題(或いは叶えたい事)が生じたそもそものきっかけ」と置き換えて考えます。

こうして相手の状況を理解・共感した上での提言により、営業の配慮がお客様に伝わり、「ここまでウチの事を理解し、配慮・共感してくれる営業が言うのだから、聴いてみよう、こちらの想いを話してみよう」と、お客様の感情が動くのです。

(4)「自社の3C」を整理し、「USP」の仮説を立案する

ここで、初めにした話に戻ります。「売るモノありき、自分の都合ありきのスタンス」から脱却するためには、思考の起点を「自社にできること」ではなく「お客様の理想像とその実現ポイント」に意図的にシフトすることが必要と申し上げました。

ここまでにお伝えした「お客様の3C」及び内情(業務プロセス・財務・”想い”の時間軸)でお客様の理想像とその実現ポイントを俯瞰した上で、自社の3Cを用いて「競合にはできず、自社にできること(USP)」整理することで、お客様の立場に立った仮説を立案することになるのです。

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まとめ

今回は、営業活動を革新する5つの基本:その3「お客様を知るための視点」についてお伝えしました。以下のまとめをご覧いただき、ご自身、あるいはマネジメントしているチーム・組織の現状を整理することをお勧めします。

・「お客様の3C」を起点に「理想像と実現のポイント」を整理する

・「業務プロセス」「財務」(或いは”個別事情”)の視点でお客様の内情を理解する

・お客様の「ストーリー」を時間軸で理解し、”想い”への共感をベースに提案する

・最後に「自社の3C」を整理し、USP仮説を立案する

次回予告

「お客様を知るための視点」いかがでしたでしょうか。もっと詳しく知りたい、急いで悩みを解決したいという方は是非弊社までお問い合わせください。

次回は、環境変化に左右されず業績を上げ続ける営業が持つ、お客様の現状を分析し、仮説を立案する際の「思考フレーム」をお伝えいたします。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


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