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とんびいなくなった。

僕が定住している秋田県由利本荘市のとある僻地、もしくは限界集落と呼ばれている場所には色んな生き物が生息している。

特別天然記念物のカモシカを筆頭に、ホンドギツネ・ニホンイタチ・ハクビシン・アナグマ・ニホンリスは毎日のように目にする。

春へと向かいつつあるこれからの時期はとくに、原野を仲良く駆け回るホンドギツネの親子の仲睦まじい様子を眺められる。

しかし僕がここに住んでいた高校生の頃まではホンドギツネなんて目にしたことがなかった。それこそ帰郷した昨年に初めて発見し、めっちゃ興奮したくらい。親曰く、ここ数年は当たり前のように人里にあらわれるらしい。

そういえば、かつては田舎の空を悠々と回翔していたトンビの姿が1羽も見当たらない。いつからその姿を見なくなったのかさえ定かではない。気づいたらいつの間に姿を消していた。

トンビの引っ越しと同時にやってきたのかは分からないが、いつの頃からかノスリをよく見かけるようになった。ノスリはトンビと同じ猛禽類(もうきんるい)であり鷹の一種だ。

ノスリを初めて見たときもホンドギツネと同様に興奮したものだ。しかし今ではすっかり見慣れてしまっている。

ノスリ一族もこの限界集落にすっかり定着した様子。やや濃いめの茶色とくすんだ白色が混じったまだら模様を見せびらかすようにして優雅に飛んでいる。

この数十年で限界集落からは人がすっかりいなくなった。一方で、わずかではあるが外部からやってきた人たちもいる。

その土地に根を張る人が移り変わるように、自然に生きるものたちもこうやって変遷してゆくのだろう。

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