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名前も知らないどこかの誰かが、

すっかり夜も更けた午前1時過ぎころ。めざしを肴(さかな)に、日本酒をくいっとあおる。これこそまさに至福のとき。僕ももうすっかり、胸を張って誇れる一人前の「おっさん」になったんだぜ。

基本的には朝型人間の僕だけれど、最近はなぜか宵っ張り(よいっぱり)になりつつある。昨日はなんと、午前4時まで起きてしまったのだ。

撮りためた写真のフォルダをあさる。こうやって写真を見返してみると、たくさんの写真に他人がうつっているのに気づく。とりわけ、観光地で撮ったものだとなおさらだ。

そこそこ高価なカメラで撮影しているためか、観光客の顔まではっきりと確認できる。この写真は確か、10年ほどまえに京都の嵐山で撮ったものだ。

渡月橋の上をひっきりなしに往来する観光客を狙って、何十枚も撮影した覚えがある。

色とりどりの着物に身を包んだ2人組の女性が、アクセントとしてよく映えている。橋を渡っている人々の口角はあがっており、楽しいひと時を過ごしているのがうかがい知れる。

あれから10年がたった。皆がもれなく、10年の歳を重ねたってことだ。彼らは今、どこで何をしているのだろう?元気で過ごしているのだろうか?

名前も知らないどこかの誰かが、今日もどこかで平穏な日々を過ごしていますように。


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