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ツメ磨き

少年は爪をしっかり磨けと幼い頃から言われてきた。
少年の家庭は狩りをする一家だった。
狩りは素手で行われる。
それが、より己を鍛える術であるし、最も腐らない方法だった。
そのため、少年は狩りをするために爪を伸ばし、磨かなければならなかった。
少年は狩りが苦手だったが、それはさらなる爪を磨くことによって解決できると思っていた。
親に聞いても、ツメを磨けとしか言われなかったからだ。
少年は動物を殺したことがなかった。
狩の家に生まれ、ずっと狩りを行ってきたのにも関わらず、殺したことがなかった。
少年には残念ながら慈悲の心があった。
しかし、少年はそれは爪を磨くことによって解決すると思っていたのだ。
ある日少年は子鹿と出会う。
狩りをしなければならないため、飛びかかり爪で引っ掻くが、とどめが刺せない。
少年は詰めが甘かったのだ。
親が言っていたのは詰めであった。
少年はそれに気が付かず、ずっと爪を磨いていた。
しかし、爪を磨き続けたことにより、子鹿には致命傷が与えられ、殺してしまった。
少年はひどく悲しくなったが、逆に覚悟を決めることができた。
少年はこれから詰めを磨き始めるだろう。

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