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『ウルトラマンZ』とグノーシス主義とタイムトラベルとノアの洪水から、時間の循環する可能性

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はじめに

ここでは、特撮番組『ウルトラマンZ』のヘビクラショウタの目的から、タイムトラベルの可能性の推測、グノーシス主義などとの哲学的な関連を探ります。
あくまで推測であることをご了承ください。
ちなみに、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの情報も扱いますが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の展開は明かしません。
ここで重要な展開を明かす作品を前もって挙げます。ここから先を読む方はご注意ください。
特撮テレビ番組
『ウルトラマン』
『ウルトラセブン』
『ウルトラゼロファイト 第2部 輝きのゼロ』
『ウルトラマンギンガ』
『ウルトラマンギンガS』
『ウルトラマンX』
『ウルトラマンオーブ』
『ウルトラファイトオーブ』
『ウルトラマンジード』
『ウルトラマンR/B』
『ウルトラマンZ』
特撮映画
『大怪獣バトル THE MOVIE ウルトラ銀河伝説』
『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』
『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い‼︎』
『ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』
特撮オリジナルビデオ
『ウルトラマンゼロ外伝 ウルトラマンゼロvsダークロプスゼロ』
テレビアニメ
『ドラゴンボール超』
『涼宮ハルヒの憂鬱』

『新世紀エヴァンゲリオン』
漫画
『ドラゴンボール』
『ドラゴンボール超』
テレビドラマ
『JIN-仁-』, 『JIN-仁- 完結編』
扱いたい小説
『塩狩峠』
『二重螺旋の悪魔』





ウルトラシリーズの説明



 まず、近年のウルトラシリーズで、ここで取り上げたい作品の重要な要素を説明します。
 『ウルトラマンZ』で、防衛組織「ストレイジ」の隊長を務めるヘビクラショウタの正体は、『ウルトラマンオーブ』でウルトラマンオーブ=クレナイガイの敵であったジャグラスジャグラーでした。
 彼は魔王獣「ゼッパンドン」に変身してウルトラマンゼットを攻撃したり、主人公のハルキを鍛えたり、明確に敵であるセレブロの逃げるのに協力したりしていますが、宇宙人としての姿で「敵か味方かは時と場合による」と話すなど、曖昧な姿勢になっています。
 また、ストレイジに強力な兵器である巨大ロボット「特空機」を作らせ、そのうちのウルトロイドゼロを奪おうとしたようです。
 その目的は判然としませんでした。
 そこで私は、近年のウルトラシリーズとの関連から、「ヘビクラは時間をさかのぼり、並行世界を作り出したいのではないか」と推測しています。
 まず、その根拠となりそうなウルトラシリーズの物語を、順番に挙げます。



『大怪獣バトル THE MOVIE ウルトラ銀河伝説』
>敵であるウルトラマンベリアル(レイブラッド星人の影響で黒く染まった姿)にウルトラマンタロウがストリウム光線を放ったものの、当たっている様子がありません。

『ウルトラマンZ』
>主人公のハルキが過去に行き、父親と話したあと戻り、父親はそこから現在までの間に「また会える」と話したため、過去は変化しておらず組み込まれているようです。
>一見『ウルトラ銀河伝説』に似た背景でベリアルにストリウム光線が当たり、その細胞「デビルスプリンター」が飛散した描写があります。
『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』
>アブソリュートタルタロスが数万年前のベリアルなどに出会い、倒される未来を教えて別の戦いをさせました。
>このとき「並行世界」が生じ、別の歴史を辿った「並行同位体」としてのベリアル(黒く染まる前の姿)が現れました。


ベリアルの未来の分岐



 ここで、何者かが「ベリアルにストリウム光線が当たった未来」を作り出したのではないか、だとすればそれは何故なのか、とも考えました。



画像1



 他のウルトラシリーズも参考にします。

『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』
>複数の多次元宇宙が登場し、サロメ星人によるどの宇宙にも属さない空間の操作で、宇宙全体が消滅の危機に陥りました。また、ベリアルの操っていたダークロプスゼロが暴走しました。
『ウルトラマンゼロ THE MOVIE ベリアル銀河帝国』
>ウルトラマンゼロが宇宙間を超える能力を手に入れ、ウルトラマンベリアルを一度倒しました。
『ウルトラゼロファイト 第二部 輝きのゼロ』
>ゼロがある程度時間を戻す能力を手に入れるものの、味方と共にベリアルを蘇らせてしまいました。
『ウルトラマンギンガ』
>ウルトラマンギンガが未来から来たとされました。
『ウルトラマンギンガS』
>ウルトラマンギンガと敵のダークルギエルは本来一つでした。
『ウルトラマンX』
>ウルトラマンエックスの使うエクスラッガーが未来からの電波を受信していました。
『ウルトラマンオーブ』
>『太平風土記』という書物で人間が怪獣などを予言していました。
『ウルトラファイトオーブ』
>シャイニングウルトラマンゼロの時間を司る能力の副作用で、ウルトラマンオーブに未来の映像が伝わった様子があります。
『ウルトラマンジード』
>ベリアルが一つの宇宙を破壊し、復元された宇宙を再び破壊しようとするも倒され、永久追放空間に封じ込められ、宇宙の傷は完治しました。
『ウルトラマンジード つなぐぜ!願い』
>終盤で電子媒体上の歴史書が書き換えられたらしき様子があります。
『ウルトラマンR/B(ルーブ)』
>主人公の母親の湊ミオが異次元空間に閉じ込められ、未来を見ました。主人公のカツミとイサミは先代のウルトラマンの能力を引き継ぎました。ミオの見た未来は変化しました。
『ウルトラマンR/B セレクト 絆のクリスタル』
>ミオの分身であるアサヒは、先代のウルトラマンの妹であった宇宙人の美剣サキから引き継いだ能力でグルジオレギーナ、そしてウルトラウーマングリージョとなりました。


 ここから、推測がかなり入ります。
 ジャグラスジャグラーは『オーブ』でかつて味方だったのが、ウルトラマンの力に選ばれなかった嫉妬心などから敵対し、味方かどうか曖昧な態度を取り続けました。
 破滅を喜ぶような言動もあり、「何もない暗闇こそが永遠だ」とも話しています。

 しかし、彼がなりすました『Z』のヘビクラショウタは、「敵か味方かは時と場合による」と主人公に独特の姿勢でいます。
 また、ウルトラマンを超える兵器をハルキの属する「ストレイジ」やその上部組織「GAFJ」に作らせることを目的としていたようでした。
 しかしヘビクラが兵器を使い具体的に何をするつもりだったのかの目的は曖昧なままであり、また、自分が宇宙人であり兵器を乗っ取ろうとしたことが露見してストレイジの「本部」と対立したあと、「(自分達のいる場所に)本部の連中が殺到するかもしれない。俺は怪しい宇宙人だしな」と笑ったり、変身出来るため丸腰だと信じ込んで自分への攻撃をためらった相手を気絶させ「丸腰じゃなくて悪かったな」と話したり、「俺は人間やセレブロの行動を調整してきた」と話したりしています。自分の行動の評価についての善悪の境界も曖昧にしたいようです。
 そこで私は考えました。ヘビクラの目的は、「『ウルトラマンZ』の世界をタイムトラベルにより作り出す未来に繋げる」ことであったのではないかと。
 特空機の製造データの源は怪獣「グルジオライデン」であり、この怪獣は『ウルトラマンR/B』のグルジオレギーナなどに似ています。
 そしてグルジオレギーナは、惑星O-50からウルトラウーマンに選ばれなかった美剣サキが変身した怪獣であり、その背景がジャグラーに似ており、その怪獣の能力を引き継いだ湊アサヒは、ウルトラウーマングリージョに変化しました。
 さらに、湊アサヒは先述した湊ミオが異次元空間に入ったことで生まれた分身でした。ミオは未来を見ています。
 特空機が、湊ミオ、湊アサヒ、O-50、ジャグラー、グルジオレギーナ、グルジオライデンを通じてタイムトラベルに関わる何らかの要素を持っている可能性があります。
 とりわけ、ヘビクラが奪おうとした特空機「ウルトロイドゼロ」は、ウルトラマンゼロ、ウルトラマンギンガ、ウルトラマンエックスなどの情報も含み、それらのウルトラマンには派生形態も含めれば時間を戻す、過去に関わる能力もあるようです。
 ヘビクラの目的は、「グルジオライデンやウルトラマンの能力を仲介して特空機により過去にさかのぼり、『ウルトラ銀河伝説』の時間でウルトラマンタロウのストリウム光線がウルトラマンベリアルに当たった並行世界を生み出す」ことではないか、と推測したのです。 『Z』ではブルトンによりハルキが時間をさかのぼったとき、命を落とす前の父親に会っています。その父親が相手を未来の息子だと察していたらしいこと、「その後」に当たる死の間際に当時のハルキに「また会える」と話していたことから、ハルキが父親に会った過去は元々の「現在」に組み込まれていたのではないかと考えました。
 すると、仮に「グルジオライデンの能力を仲介としたタイムトラベル」が起きるとすれば、それが元の歴史に組み込まれる、というより『Z』の世界そのものがそれにより誕生していた可能性さえあります。

 まとめますと、「ヘビクラショウタ=ジャグラスジャグラーは、グルジオライデンの情報からストレイジに作らせた特空機を用い、過去にさかのぼり、ウルトラマンベリアルにウルトラマンタロウのストリウム光線が当たり細胞が飛散した未来を作り出し、『ウルトラマンZ』の世界を生み出す予定だった」と推測しました。


 ここで、他の物語や宗教や哲学との関係を探ります。

ウルトラマンゼットの名前


 ウルトラマンゼットはウルトラマンエースに、「この地球に平和をもたらす最後の勇者になれ」という願いから名付けられたと説明されています。

 しかし、仮に「デビルスプリンター誕生、グルジオライデンから特空機製造、特空機から時間をさかのぼりデビルスプリンターを生み出す」と循環するならば、その先の未来が成立しなくなり、「未来ごと消失してしまう」ことでゼットが「最後の勇者」になるおそれもあります。
 クトゥルフ神話流に表現すれば、「始まりの邪神」でしょうか。

『ドラゴンボール』シリーズ

 ここで、タイムトラベルの要素が複雑な『ドラゴンボール』シリーズから幾つかの部分を説明します。
 『ドラゴンボール』原作では、願いを叶えるドラゴンボールを生み出した「地球の神」やさらに上位の神々に認められ、サイヤ人という宇宙人であった孫悟空や科学者のブルマ、武闘家の亀仙人などが地球や宇宙を守るためにドラゴンボールを使いながら戦います。
 けれども途中から、悟空などが変身可能になったあとに孫悟飯やトランクスも目覚めた超サイヤ人でも倒せない人造人間17号と18号が地球を壊滅させ、ブルマのタイムマシンで息子のトランクスが過去に向かい並行世界を生み出しました。それが本編世界です。

 しかし、そのトランクスのいた未来も、人造人間セルが過去に向かい生み出した並行世界であったようです。
そして並行世界を生み出すタイムマシンによる事象に対し、『ドラゴンボール超』では、神々のうちの界王であるザマスが強制的に界王神となり、「時の指輪」で並行世界を往復して様々な混乱や破壊を招き、界王神の上に立つ全王が一つの並行世界を消滅させました。
 そのため、並行世界を生み出すトランクスの行いは善なのか悪なのかが曖昧になります。

 さらに、宇宙のバランスを保つために破壊をもたらすはずの破壊神のビルスも、自分がトランクスとは別の未来でザマスにより危機に陥ると知ると、身を守るために歴史を変えて並行世界を生み出してしまったようです。
 『ドラゴンボール』原作の鳥山明さんは、『ドラゴンボール』での敵は「倒しても良い絶対悪」だったのが『ドラゴンボール超』でのザマスは少しこじらせた「歪んだ正義」だと説明しています(『ドラゴンボール超』漫画版第4巻)。
 また『ドラゴンボール』の物語の骨子は、「神々に認められた人間(宇宙人も含む)が宇宙の平和を守る」と言えます。「地球の神」、閻魔大王、北の界王、東の界王神などはそうでした。
 しかし『ドラゴンボール超』の破壊神は宇宙のバランスを保つための破壊を職務とし、「サイヤ人がむかつくからフリーザに惑星ごと破壊させた」、「僕はフリーザとサイヤ人のどちらの味方でもない」といった言動があります。「悪に悪を倒させる」という曖昧な行為をしています。
 天使は破壊神の武術の師匠であり、界王神の「時の指輪」とは別に時間をさかのぼる「やり直し」を可能とします。そして「善悪のどちらにも偏らない中立」だと自称します。
 そして全王は、界王神や破壊神や天使の上に立ち、宇宙や人物を並行世界ごと消滅させられます。しかし並行世界を生み出して混乱を招くタイムマシンに対抗するには、それが必要だったとも考えられます。
 説明が長くなりましたが、私が『ドラゴンボール超』と『ウルトラマンZ』を関連付けたいのは、並行世界を生み出すのは「善悪を超えた」面をもたらすのではないかということです。
 トランクスは、地球の外の宇宙人や神々と連絡出来ない状態で、地球を救うことを重きにおいてタイムトラベルした部分があります。それがやがて並行世界全体に波及して宇宙全体を混乱させたと言えます。これは天使や破壊神に批判されていますが、善悪の曖昧な部分があります。
 ヘビクラショウタも、ここまでの推測が正しければ、「この世界を生み出すために辻褄を合わせるには、どうしても時間を超える力が必要だった。それは良いことなのか、悪いことなのか?」というように主張するかもしれません。
 なお、『ドラゴンボール』原作の前半では「悪魔」が「僅かでも悪の心があれば倒せる光線」を持ち、未来をある程度予知する占いババと共に行動しています。
 『ドラゴンボール超』で天使が時間をやり直したり、中立であったりするのも何らかの繋がりがあるとも取れます。


『涼宮ハルヒの憂鬱』「エンドレスエイト」



 私が知る限りのライトノベルの系統の作品で、『涼宮ハルヒの憂鬱』アニメ版に「最後の勇者」を連想させる部分が見受けられます。
 『涼宮ハルヒの憂鬱』では、無意識に世界を操作してしまう神のような少女のハルヒの行動を、本人に教えられずに混乱させられるキョンの視点から描いています。
そこに超能力者、宇宙人、未来人も関連しています。
 しかしハルヒが夏休みへの不満から時間を循環させ、同じ期間を繰り返して未来が消失してしまい、未来人が帰れなくなったエピソードがありました。
 この「エンドレスエイト」は重要なエピソードだという評価もあるらしく、それを題名にした書籍を見かけたことがあります。

 無意識に時間を操作してしまう、時間が循環して未来が消失してしまうなどの事象もどことなく『ウルトラマンZ』に繋がると私はみなしています。


グノーシス主義とノアの洪水とタイムトラベル



 ここで、宗教との関連を探ります。

 私はタイムトラベルについて考察するとき、キリスト教で異端とされた思想であるグノーシス主義を思い出しました。
 これは狭義では、この世界は悪の創造主に作られたもので、人間はその中に秘められた真実や神の性質を認識することで救われる、というもののようです(注1),(注8),(注9),(注12)。
 また、物質の世界を創造した無知な神であるヤルダバオト(注9)あるいはデミウルゴス(注10)を産んだ母親の名前は「ソフィア」です。この知恵につながる名前は、『ウルトラマン』の「ゾフィー」に繋がる可能性があります。この名前は「哲学」=「オイロソフィー」のドイツ語読みから命名されたそうです(注11)。

 「悪の創造主」とは、周りの状況を把握せずに物質の世界を生み出してしまったともされます。
 すると、タイムトラベルにより並行世界を生み出したのは、その並行世界の分岐で未知の影響がもたらされることを考慮することが出来ない意味で、「無知な創造」とも言えます。
 グノーシスとタイムトラベルは、思想や哲学において何らかの繋がりがあるのではないかとも推察しました。
  小説『二重螺旋の悪魔』では、人類が知的存在の失敗により進化したとされ、人類の他の生物にない特徴や進化論と宗教の関係も考察されていました。
 ただ、『ウルトラマンZ』とグノーシス主義と『二重螺旋の悪魔』がここから繋がるには、かなりの飛躍が必要かもしれませんが。

 さらに、聖書におけるノアの生き延びた洪水も想起しました。
 神の引き起こした洪水でノア達だけが生き残ったという神話で、「何故選ばれた存在だけが生き残るのか?」という視点から、タイムトラベルと知識の関係を連想したのです。
 タイムトラベルで過去を変えたとき、タイムトラベルを防ぐように元の未来が変化すると、タイムトラベルをするのかしないのかの矛盾が起きるパラドックスについての疑問が生じます。

 このとき、並行世界を生み出すので元の未来に影響はしないという観点もあります。
 しかし、設定の緩いSF作品では、タイムトラベラーだけは元の未来の記憶を維持したままであるというものも見当たります。それが有利か不利かは時と場合、あるいは解釈によりますが。

 すると、これと「ノアの洪水」を組み合わせて、「元の未来の情報を知らない」ことを「災い」に対応させて、「タイムトラベラーだけが元の未来を知っている、すなわち災いから逃れられる」ともみなせるかもしれません。

 そのような思想や物語を直接知っているわけではありませんが、キリスト教圏でタイムトラベルを扱うSF作品を描く場合、そのような発想が根底にあるのかもしれないと考えました。
 この「グノーシス主義」と「ノアの洪水」が、私の知る宗教的要素で『ウルトラマンZ』との繋がりを感じさせるものです。
 皮肉な話かもしれませんが、『ドラゴンボール』原作では「地球の神」がタイムトラベルに直接関わる能力を持たないため、タイムマシンでやって来たセルに驚いていました。
 タイムトラベルによる分岐した世界は、未来まで視野に入れれば、際限のない悪影響が広がる可能性を持ちます。

 『ドラゴンボール』や『JIN-仁-』ドラマ版などのタイムスリップを扱う作品では、僅かに過去を変えたことが、意図しない大きな影響をもたらしています。
タイムトラベラーはそれを予測出来ない、世界の悪を予期出来ない「愚かな創造主」となる、という表現も出来ます。

 なお、ヘビクラはハルキやゼットや部下のユカ、敵のバロッサ星人の言動や行動に予想外の面を見ている様子もあるため、「全ての未来が読めてはいない状態で、過去にさかのぼっている」可能性もあります。


キリスト教の原罪




 また、キリスト教の基本的な「原罪」との関係も気になります。
 キリスト教では、アダムとイブが知恵の実を食べたことによる罪が、人間の「原罪」だとされます。
 これは英語で「sin」と表現され、法律上の罪である「crime」とは別であるそうです(注2)。
 私がキリスト教の概念に関心を持ったきっかけの一つの小説『塩狩峠』では、キリスト教における罪を、行動ではなく内面の罪、と表現しています。
 また、イエスキリストが磔にされたのはあなたの罪によるものである、と主人公に説く人物も登場し、時間の論理や前後関係を超えた「罪」であるようです。
 つまり「原罪」とは、いつどのような行動をしたかという罪ではなく、人間の内面に関連し、なおかつ時間の流れとは異なるものだという可能性があります。

 キリスト教の価値観は近代に入り、合理主義により否定される部分があったともされます。
 仮にヘビクラが「時間をさかのぼり辻褄を合わせるために破壊や攻撃を行う」ならば、それは「時間や論理を超えた罪」かもしれません。

 なお、『ウルトラマンZ』ののちに円谷プロでは映画『シン・ウルトラマン』を公開するそうです。
 『シン』が何を意味するかは何とも言えませんが、「sin」との関連を私は個人的に見出しています。 「sin」は「サイン」と読めば数学の三角関数の正弦となり、波動の図形を描くため、物理学でも重要になります。

理屈を超えたパワー




 ウルトラマンゼットは、虚空怪獣「グリーザ」と戦うときに、宇宙の不条理であり空間の穴であるグリーザを倒すには「理屈を超えたパワー」が必要であると表現しています。
 それが新形態「デルタライズクロー」に繋がりました。
 しかし、私の印象が入りますが、「理屈を超えたパワー」は単なる都合の良さではなく、「理屈を超えた罪」をもたらす可能性もあるのではないかとみなしています。
 デルタライズクローやグリーザが、今後ヘビクラの時間のさかのぼりに関係するのではないか、とも推測しました。
 グリーザは「虚数」に関係している可能性があると説明され、虚数がマイナスの時間の流れをもたらすという物理的な解釈もあるかもしれませんが。

 またヘビクラが時間の流れを組み込むために善悪の曖昧な行動をしていたとすれば、「事情があるならば伝えなければならない」という通常の論理も成立しにくくなります。

 「伝えれば歴史の流れが成立しない」とも言えますし、「自分が善悪の曖昧な創造主になるのは構わない。しかしハルキ達に伝えればその重荷を背負わせてしまう。それは避けたい」という感情があったという推測も成り立ちます。

宇宙の始まり



 また、虚数は「宇宙のはじまり」に関して宗教と結び付く可能性があります。
 宇宙がビッグバンで生まれたとき、物理的な理論で、無限大の数値を含む、円錐の頂点のような特異点が最初の時間に生じてしまうとされます。
 そのため、説明の付かない部分を、キリスト教圏で「神の一撃」と表現するとも言われます(注13)。
 神が最初の衝撃を与えたのちに、世界が機械時計のように自動的に動く「機械的世界観」という考えをニュートンなどが唱えていたそうです(注3)。
 しかし、宇宙が始まる前は虚数の時間だった、という仮説もあります。これならば特異点は生じず、球面のように数値が繋がるそうです(注4),(注5),(注6),(注7)。
 仮に『ウルトラマンZ』の世界が、特殊な時間の流れで生じたならば、「虚数」や「神の領域」にも関わるかもしれません。

セカンドインパクト


 『新世紀エヴァンゲリオン』では、巨大生物から製造されて制限時間を持つ兵器など、『ウルトラマンZ』を連想させる要素があります。
 そしてこの作品では、「セカンドインパクト」という災害が劇中の15年前に起きており、ファーストインパクトは詳しく言及されず、続きのサードインパクトが起きるかが重要になります。
 すると、『Z』の世界観では、『ウルトラ銀河伝説』の世界の宇宙が誕生したビッグバンをファーストインパクト、そこから時間が分岐しデビルスプリンターが拡散して並行世界が生まれたのをセカンドインパクトに対応させて、「新しい宇宙の始まり」とみなし、サードインパクトに対応する時間のさかのぼりを目指している可能性があります。

結論

 ジャグラスジャグラー=ヘビクラショウタは、時間をさかのぼり、『ウルトラマンZ』の世界を分岐で生み出して「善も悪も超えた創造主」になりたいのではないかと結論付けました。

注1.(兠木励悟,2008年;pp.130-134)
注2.(中島岳志,2017年;pp.50-53)
注3.(遠山啓,1986年;pp..141-144)
注4.(佐藤勝彦,2005年;pp.196-199)
注5.(佐藤勝彦,2005年;pp.208-215)
注6.(佐藤勝彦,2006年;pp.218-221)
注7.(科学雑学研究倶楽部,2015年;pp.190-191)
注8.(林道義,1980年;pp.150-154)
注9.(A・モミリアーノ,1987年;pp.35-41)
注10.(A・モミリアーノ,1987年;p.27)
注11.(切通理作,2000年;p.42)
注12.(大貫隆,2008年,pp.31-32)

注13.(佐藤勝彦,2010年;pp.46-47)


参考文献


中島岳志,2017,『NHK100分de名著 ガンディー『獄中からの手紙』』,NHK出版
A・モミリアーノほか(著),桜井万里子ほか(訳),1987,『異端の精神史』,平凡社
大瀧啓裕,2000,『エヴァンゲリオンの夢 使徒進化論の幻影』,東京創元社
大貫隆,2014,『グノーシスの神話』,講談社学術文庫
大貫隆,2008,『グノーシス「妬み」の政治学』,岩波書店
藤巻一保,2009,『世界の天使と悪魔 図解雑学 絵と文章でわかりやすい!』,ナツメ社
林道義,1980,2007,『ユング 人と思想59』,清水書院
真野隆也,1995,『天使』,新紀元社
遠山啓,1986,『遠山啓のコペルニクスからニュートンまで』,太郎次郎社
兠木励悟,2008,『エヴァンゲリオン研究序説〈新版〉』,データハウス
佐藤勝彦,2006,『相対性理論と量子論』,PHP研究所
佐藤勝彦,2005,『〔図解〕相対性理論がみるみるわかる本 愛蔵版』,PHP研究所
科学雑学研究倶楽部(編者),鈴木昌子(発行人),2015,『量子論のすべてがわかる本』,学研プラス
切通理作,2000,『怪獣使いと少年』,宝島社文庫

佐藤勝彦,2010,『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』,講談社ブルーバックス



参考にした物語
特撮テレビ番組
樋口祐三ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966-1967,『ウル
トラマン』,TBS系列(放映局)
野長瀬三摩地ほか(監督),上原正三ほか(脚本),1967-1968(放映期間),『ウルトラセブン』,TBS系列(放映局)
アベユーイチ(監督),足木淳一郎(脚本),2012,『ウルトラゼロファイト 第2部 輝きのゼロ』,テレビ東京系列(放映局)
アベユーイチほか(監督),長谷川圭一ほか(脚本),2013(放映期間),『ウルトラマンギンガ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2014(放映期間),『ウルトラマンギンガS』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2015(放映期間),『ウルトラマンX』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),中野貴雄ほか(脚本) ,2016(放映期間),『ウルトラマンオーブ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一(監督),足木淳一郎(脚本),2017,『ウルトラファイトオーブ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),安達寛高ほか(脚本) ,2017(放映期間),『ウルトラマンジード』,テレビ東京系列(放映局)
武居正能ほか(監督),中野貴雄ほか(脚本),2018(放映期間),『ウルトラマンR/B』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),吹原幸太ほか(脚本),2020(放映期間),『ウルトラマンZ』,テレビ東京系列(放映局)
特撮映画
坂本浩一(監督),小林雄次ほか(脚本),2009(公開),『大怪獣バトル THE MOVIE ウルトラ銀河伝説』,ワーナー・ブラザース(配給)
アベユーイチ(監督・脚本),2010(公開),『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』,松竹(配給)
坂本浩一(監督),根元歳三(脚本),2018(公開),『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い‼︎』,松竹メディア事業部(配給)
武居正能(監督),中野貴雄(脚本),2019(公開日),『ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』,松竹(配給)
特撮オリジナルビデオ
おかひでき(監督),荒木憲一(脚本),2010(発売期間),『ウルトラマンゼロ外伝 ウルトラマンゼロvsダークロプスゼロ』,バンダイナムコアーツ(発売元)
テレビアニメ
大野勉ほか(作画監督),冨岡淳広ほか(脚本),鳥山明(原作),2015,『ドラゴンボール超』,フジテレビ系列(放映局)
谷川流(原作),西屋太志(総作画監督),涼宮ハルヒとやっぱり愉快な仲間たち(シリーズ構成),2009,『涼宮ハルヒの憂鬱』,tvkほか(放映局)
漫画
鳥山明,1985-1995(発行期間),『ドラゴンボール』,集英社(出版社)
鳥山明(原作),とよたろう(作画),2016-(発行期間,未完),『ドラゴンボール超』,集英社(出版社)


テレビアニメ

庵野秀明(監督),薩川昭夫ほか(脚本),GAINAX(原作),1995-1996(放映期間),『新世紀エヴァンゲリオン』,テレビ東京系列(放映局)
テレビドラマ
村上もとか(原作),石丸彰彦ほか(プロデュース),森下佳子(脚本),2009,『JIN-仁-』,TBS系列(放映局)
村上もとか(原作),石丸彰彦ほか(プロデュース),森下佳子(脚本),2011, 『JIN-仁- 完結編』,TBS系列(放映局)
扱いたい小説
三浦綾子,2005,『塩狩峠』,新潮社
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ


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