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飯野謙次『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』~感想

失敗学とは

 著者は「失敗学」の副会長である。「失敗学」とは何か、その定義から引用しよう。

失敗学は、  地球上のどこかで起こった事故や不祥事の情報を収集し、なぜその事故が起こったのか、 大きな事故の裏に隠された真の要因は何か、 繰り返さないためにはどうしたらいいのかを検証し、情報として蓄積する学問です。

本書15ページより

 前著『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』において、著者は個人の失敗を「学習不足」「計画不良」「注意不足」「伝達不良」の4つに分類していた。
 本書ではそれに「自然(不可抗力等)」を加えて5つに分けているが、わたしの追求する「フリーランス校閲者のミスを減らす」という目的に照らすと、「自然」への対策は、PCに無停電電源装置をつけるくらいしか考えられない。今回、「自然」はいったん外して考えてみる。

「ミス」への対策を立てようと思うのが第一歩

 パソコン作業での入力ミス といった単純な例を見てみましょう。事務作業におけるミスこそ、 職場で真っ先に避けるべきものです。
  では、そこから「自分は入力ミスが多い」と自覚して、独自の対策を立て、 自身のミスを撲滅できたらどうでしょう。

本書9ページより

 まずは、「対策を立てる」ことからである。本書の上の引用部分では「ケアレスミス」、つまり注意不足から来るミスについて触れている。

「注意不足」はミスの起こったポイントを見直して防ぐ

 本書では、ケアレスミスは「うっかりできない仕組み」を作って防ぐとある。言い換えればシステムや環境を見直すということだが、個人の校閲者にそれが応用できるだろうか。
 JustRight!などツールを使う、画面と紙の両面で見る、明るくて目に優しい照明を使う、眼に優しく画面も紙も見やすい眼鏡を使うといったことがこれに当たるだろう。これらはすべてわたしが実行・実践している項目である。

「前回ケアレスミスが起こった ポイントそのものを見直す。 なくす」 というような、 抜本的な改革 

注意すればするほどいいわけでもない、というのは、 注意力に対する基本の考え方です。

本書16ページ、234ページより

 ケアレスミスを防ぐには「注意すればするほどいいわけではない」ことをまず念頭に置く。「注意する労力」のほうが「ミスをして起こる結果」の重大さを上回ってはならないからである。
 そして「自分の注意力」に頼っていてはいけない。ミスの起こるポイントをなくす、変えるのが大事。

「エクセルの入力ミスというような小さなことでも「入力途中で話しかけられた」とか「 元のデータを見間違えた」といった原因はあるわけです。

本書97ページより

 そうそう、こういうやつですね。わたしたち校閲者がケアレスミス(つまり「間違いを拾えず落としてしまう」)をしないために改善すべきことは。焦りが強い性格であるわたしも「作業中に電話がかかってきた」ら、必ずといっていいほどミスをしてしまう。
 そこで、「机周りに(物理的な)付箋を置いておいて、電話をとる前に校正紙でも画面でも、『いまやっていたところ』に付箋を貼る」という対策をとるようにしたら、「電話で中断されたためのケアレスミス」は激減した。こういう小さな対策が大事である。

「計画不良」は抜本的にすべてを見直す

 「 計画不良」への対策は、抜本的に全てを見直すことによってこそ、 実現します。「 物事が起こる前に、うまく行く仕組みを作る」という「高遠の対策」を立てる必要があるのです。

本書139ページより

 計画不良は、「計画余裕不足・人材能力不足・計画外作業発生・計画外外乱」により起こるというのが著者の分析結果だ。
 計画がうまくいかなくて失敗するごとに、このうちどこに原因があったのかを突き止める。それを経験値として、「こうすれば失敗する」から「そうでない方法、仕組みを考えよう」と自分自身にフィードバックする方法で計画を見直すことを勧めている。
 この辺はフリーランスにどこが応用できるのか、今後(いつも)考えていこう。「組織の力」は使えないが「自己裁量」がすべてなのだから、「自分」を把握することで、「自分の計画が上手くいく仕組み」もできるはずだと思う。

「伝達不良」は指示を言い換えて確認

 個人のミスの4つ目の原因「伝達不良」については、前著において「(相手の)指示の曖昧さを自分で明確にして『こう受け取った』と知らせる」のが最大の対策だと著者は述べていた。
 本書でも同じことが述べられているが、相手に知らせるとき、「自分が指示全体を把握していることを、どうやったら端的に伝えられるか」をきちんと考えることがポイントだという。
 「端的に言い換えて伝える」ことは、わたしたち校閲者や、ことばを使ってビジネスを使っている人ならば得意なはず。メール返信ひとつにもコツがあるということだ。

私はといえば、 指示や依頼はもちろん、アポや会合や講演の待ち合わせ といったメールでは、 最終確認に、キーワードを入れて返信するようにして、さらにメールにおけるミスをなくしています。

本書220ページより 

 著者は実際に「最終確認」のときも「キーワードを入れて返信」しているという。これは真似できそう。相手に確認してもらう対策にもなる。
 とくにわたしの場合、メインクライアントの担当者のひとりは必ず「電話」をしてくるので、電話で言われた内容をきちんと箇条書きにして「メール」で返信するのが何よりも大切だなぁと、改めて思った。
 最後に、著者の前著『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』についても数週間前に投稿しているので、本書に興味ある方はぜひご一読いただければと思う。


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