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やまと言葉を哲学しよう

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しばらく昔に書いて発表した論文集。権利者オーケー。
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#言語

宣長と「あはれ」の変容

宣長と「あはれ」の変容

〜閉じた言語論と開かれた物語〜

『源氏物語』の「あはれ」

 本居宣長が列挙して見せたように、『源氏物語』で「あはれ」の語が出てくるときは大抵、「ただ自然と思う心の情」「心につつんで忍びえぬ思い」「女童のごとき弱くみれんな心」(『紫文要領』巻上、岩波文庫)という直裁的な意味に受け取ることができる。少なくとも光源氏生前の巻までは(第40帖「幻」)。しかし、筋の中心が京都を離れた途端(第45帖「橋姫

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越境する「もののあはれ」(2)

越境する「もののあはれ」(2)

ヤコプソンの「詩的言語機能」と宣長の「かたち」

ヤコブソンの「言語の六つの機能」

 1960年、ハーヴァードの言語学者ロマン・ヤコブソン(Roman Jakobson:1896-1982)は『言語学の文体について"Style in Linguistics"』という論文集をMIT出版会から刊行した。その中には、その4年前にアメリカ言語学学会で口頭発表した報告をまとめた論文があった。「言語学と詩学

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