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NVIDIAのGPUがメルセデスベンツの「MBUX」を進化させる

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』で取り上げる企業は、カリフォルニア州に拠点を置くAI用半導体のリーディング・メーカーNVIDIAです。

NVIDIAは、2020年9月2日、ニュースルームのサイトに、「In a Class of Its Own: New Mercedes-Benz S-Class Sports Next-Gen AI Cockpit, Powered by NVIDIA(NVIDIAが搭載された次世代AIコックピットのメルセデスベンツ新「Sクラス」)」という記事を掲載しました。

記事では、新「Sクラス」には次世代「MBUX(メルセデスベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)」のAIコックピットシステムが搭載、ARヘッドアップディスプレイ、AI音声アシスタント、豊富なインタラクティブグラフィックを備え、ドライバーと乗客全員がそれぞれパーソナライズされたサービスを利用できること、その次世代「MBUX」は瞬時のAI処理とシャープなグラフィックスを実現するNVIDIAのGPU(グラフィック・プロセシング・ユニット)で動作することが紹介されています。(動画参照)

また、次世代「MBUX」は「クルマがソフトウェアによって定義される」未来に向けた重要な一歩で、自動運転機能がクルマに統合されてくると、ドライバーと乗客はよりパーソナライズされた乗り心地を体験することができる、とも述べられています。

GPUは自動運転になくてはならないものです。自動運転車両の「脳」としてセンサー(26回目を参照)から得た情報を元に状況を判断し車両に操作指示を出し制御するのがAIですが、その役割には「学習」と「推論」があります。「学習」とは、センサーが取得したデータを読み込ませてAIにトレーニングをさせること。「推論」とは、トレーニングに基づいて、AIに、リアルタイムで、路面状態・車線・走行車・歩行者・障害物など周囲の状況を把握させ、停車か・減速か・車線変更かなどを判断させ、操作指示を出させること。こうしたAIによる「学習」と「推論」に欠かせないのが、3次元画像データを処理する演算装置、GPUなのです。

GPUをAIのディープラーニングへ初めて利用したNVIDIAは、バイドゥ「アポロ」(15回目を参照)に参画、またメルセデスなどの自動車メーカーや部品メーカーなどと幅広く提携を進めてきており、AI用半導体メーカーとして業界で好位置を占めています。

自動運転のカギの一つ、高度なAIの演算処理に欠かせないAI用半導体。消費者には見えにくいプロダクトです。しかし、必ずしも自動車製造メーカーがピラミッドの頂点に立つわけではない自動運転領域で、NVIDIAは半導体メーカーと言うよりもコンピューティング・サービス企業として言わば「影の支配者」のような存在感を放っています。

「エッジコンピューティング」「エッジAI」、GPUよりも高速の演算処理が可能とされる半導体「FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)」の存在などテクノロジーの覇権競争の中、自動運転の将来を見るうえでNVIDIAの戦略は重要なポイントの一つです。

田中道昭

PS.よろしければ著書もお手にお取りください! 第8章でNVIDIAなどについて解説しています。






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