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新じゃがいもの頃 ~丹波山村のじゃがいもに思いを馳せて~

春になって「新」の文字が目立つようになりました。新社会人、新一年生、食材では新玉ねぎや新きゃべつ、新じゃがいも等が耳心地の良い頃です。

東京では、新じゃがいもが九州から東へと順に出回り始めました。新じゃがいもは実も皮もやわらかく皮のまま食べられますので、じゃがいも本来の香りが鼻に抜けます。

〇丹波山村のじゃがいもに思う

じゃがいもと言えば、あまり知られていませんが山梨県北都留郡丹波山村の名産品にじゃがいもがあります。

数年前のこと、東京の水の源流を訪ねて、東京都奥多摩に隣接する山梨県の丹波山村を尋ねました。丹波山村は自然豊かな山村です。

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一泊した民宿の女将(70代)とのご縁は、出てくる食材と料理が、魚以外は全て手作りという素敵な出会いとなりました。
コンニャクはコンニャクイモから作り、野菜は自身の畑で栽培する。その中にじゃがいもがありました。
畑で収穫してすぐに皮ごと茹で、じゃがいもの香りと甘みで調味料が無くても美味しくいただけました。
郷土料理としては、手作りの「辛みそ」をつけていただく素朴な料理が紹介されました。

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女将さんの話によると、全国に地いもが50~60種類ほどあると言われている中、丹波山村には昔から2種類の地いもが受け継がれているそうです。
「落合いも」「つやいも」という種類だと聞かされました。初春に植えて初夏に収穫するので、出番はこれからです。

「落合芋」は芋の実が白っぽく硬くしまった食感、「つやいも」は小ぶりで水分量が多く、もちもちとした食感が特徴です。どちらも茹でて熱々の内に食べるか、煮物料理に向いているらしい。

このあたりは傾斜地が多く水はけが良いため、じゃがいもの栽培に適した土壌なのだと言います。東京の美味しい水のためにも、水を汚さない栽培をしているのだと、女将さんは、日に焼けた健康そうな顔で自慢げに話してくれました。

女将さんにそばが食べたいと言えば、挽いたそば粉を出してきて目の前でそばを打ち始める。これが、日常の生活なのですから「食の豊かさ」を感じました。

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〇基本のじゃがいもの種類

じゃがいもは、栽培時期や栽培土等でその品種は相当種類あります。私が、料理に考慮する時の基本の分類は次のように整理しています。

① 男爵いも
ホクホクした食感が特徴です。煮崩れしやすいため、茹でてからつぶして料理するコロッケやマッシュポテトなどに向いています。
男爵いものホクホク感を利用して煮物にしたい場合は、最初から調味料と一緒に煮ると崩れにくくなります。

②メークイン
しっとりした食感があります。煮崩れしにくいので煮物や煮込み料理向きです。
最近は、男爵いものホクホク感とメークインのしっとり感を両方合わせて、コロッケや煮物を作り、ねっとりしたその複雑な食感を楽しむ人も増えているそうです。

③キタアカリ(北光)
実が黄色く甘みが濃いのが特徴です。そのため「栗じゃがいも」とも呼ばれて人気があります。
強い甘みを利用してじゃがバターやポテトサラダにおすすめですが、適度にホックリしていて煮崩れないため、どのようなじゃがいも料理にも使えると評判です。

④コナフブキ系
粉っぽく荷崩れしやすいため、最近は料理にはあまり使わず、加工食品用に利用されています。多くは片栗粉や春雨の原料になっています。

⑤赤土育ち系のじゃがいも
かつて安芸津いもといって広島県の安芸津町辺りで赤土によって栽培されていることから知られました。形がまるいため「丸赤いも」とも呼ばれています。
甘みがとても強く、身がほくほくした食感が人気です。

〇じゃがいもと馬鈴薯

私のお気に入りの食材図鑑によると、じゃがいもは、ナス科ナス属の南アメリカ原産の多年草です。
じゃがいもの語源は、1600年頃オランダ人によってジャガトラ(現インドネシア、ジャカルタ)から伝来し、ジャガタライモが略してジャガイモと呼ばれるようになったと記されています。

じゃがいもは、漢字に書くと「馬鈴薯」ですが、私は、読めても書くことができませんでした。

馬鈴薯は中国語の和名とされていますが、別の云われには、馬につける丸い鈴がじゃがいもに似ていること。土で作った素焼きの鈴が色と形共にじゃがいもに見えるから、なのだそうです。

私はこの云われが結構好きです。

〇じゃがいもの栄養と天然の毒素

じゃがいもは意外にもビタミンCが豊富です。しかも、このビタミンCはでんぷんに守られているため、加熱しても壊れにくいのが特徴です。

じゃがいもは野菜のグループですが、里芋やさつまいも同様炭水化物が豊富に含まれているため、肥満や糖尿病などの食事療法ではごはんやパンと同じグループに位置づけられます。

食事療法が必要な方は、じゃがいも料理(中玉1個150g程度)を食べたら、ごはんはいつもより3口(60g程度)減らしたいものです。

じゃがいもの芽や光に当たって青緑色になった部分を見たことがあると思いますが、これには天然の毒素であるソラニンやチャコニンが含まれていることがあります。
収穫後気温20度以上に放置しておくと発芽しやすいので、冷暗所の保存が必要です。

先にご説明した丹波山村では、どの家庭でも床下にじゃがいもを保存している光景が見られました。

ソラニンやチャコニンは加熱しても完全に分解はしません。
誤って食べると嘔吐や腹痛、頭痛などの食中毒症状が出ることがあるので、注意しなければなりません。
調理の時は、芽は取り除き、青緑の部分は厚めに皮を剝いて十分に取り除いてから料理する必要があります。

今回もありがとうございました。


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