豆達が集合~福島県の穀物問屋さんで大豆やインゲン豆、小豆、ひよこ豆、レンズ豆と出会う~
昨年仕込んだ自家製みそは、ゆっくり時間をかけて熟成させたら「一年みそ」が完成した。
東京では特に寒の時季に仕込まなくても、適度な発酵のみそに仕上がることが、ここ数年の経験でわかった。
今年は春を迎えるこの時季に、仕込んでみることに決めた。
例年は千葉県産の大豆を使っていたが、今回は、親戚が暮らす福島県いわき市で大豆を調達しようと出かけて行った。
〇福島県で出会った穀物問屋さん
いわき市で美味しいと評判の豆腐屋の店主さんに、乾燥大豆を分けてもらうお願いをした。
「あー、家の大豆をなあ、分けてやってもいいけど、仕入れている穀物問屋の方が安くしてくれるよ。行って聞いてみな」と、穀物の卸しを営む問屋さんを紹介してくれたのだ。
ちなみに、穀物問屋さんはいわき市常磐関船町の「(有)大宮一郎商店」という。豆の魅力を伝えるために、娘さんがインスタグラムで発信している。
豆腐屋さんが、原料大豆の入手先を親切に教えてくれたことを、心温かく感じて嬉しくなった。
問屋さんには、四角い木のマス目で蓋がガラスの棚が平らに置かれ、幾種類もの豆が売られていた。
優しく穏やかな高齢の店主さんが豆を天秤ばかりで計量し、欲しい量だけ売ってくれた。
子供の頃、東京下町にもこんな風景があったなと、とても懐かしかった。
ガラス棚にはつややかで丸っこい黄色い大豆があって、店主さんお勧めの大豆は、青森県産「おおすず」という品種だ。
私の今年のみそ用大豆は、青森県産の大豆を福島県で購入することとなった。
大豆以外の豆も買った帰り際に、気前のよい店主さんと娘さんから「サービスだよ」と、ひよこ豆とレンズ豆を頂戴した。
最近は豆そのものを食べることが少なくなったから、この機会に、手に入れた6種類の豆達に思いを寄せながら、きっとおいしく煮てしっかり食べるわ!と思いながら帰宅した。
〇大豆
普段は、大豆製品の食材といえば豆腐や油揚げ等が思い浮かぶが、原料が大豆であることをいちいち意識することはあまりない。自分で大豆を加工して作ることがないからかも知れない。
今回は「原料大豆を利用する」という視点から大豆を見てみた。一言でわかる程度にまとめたが、自分で大豆から加工することは難しい。
昔から大豆は硬くて食べにくいので、いろいろと加工をして人々は食べてきたのだ。
よく知られたものでも次のとおり。
① 豆腐
水に浸けて軟らかくした大豆に水を加えながらすりつぶして呉(ご)を作る。これを煮て絞って豆乳とおからに分ける。豆乳を煮詰めてにがりを入れて凝固させたものが豆腐。
② 油揚げ
水切りした豆腐を薄く切り、油で揚げたものが油揚げ。
③ 凍り豆腐
豆腐を凍らせた後に乾燥させた凍豆腐。乾物として保存ができる。
④ 豆乳
水に浸けて軟らかくした大豆に水を加えながら、すりつぶした呉を絞ったものが豆乳。健康食品として飲料にも使われる。
⑤ 湯葉
湯葉は豆乳を煮詰め、表面にできた皮膜状のものを掬い取ったものを湯葉
という。乾燥させたものもある。
⑥ みそ
みそは、水煮浸した大豆をき砕き、麹と塩を混ぜて発酵させたもの。
和食に欠かせない調味料だが、最近では和洋華にも展開して応用できる調味料となっている。
⑦ 納豆
蒸した大豆に納豆菌を作用させ発酵させて納豆を作る。
⑧ きな粉
炒った大豆を粉末にしたものがきな粉。
などなど。
昔の人は、生きるために食べ物に知恵を絞って工夫してきたのだから感心してしまう。
調べたところ
大豆は中国、朝鮮半島、日本等に広がっている「つる豆」という野生大豆から発生したと伝えられている。起源は色々な説があるが、中国5000年前と云われていて、日本では縄文時代の遺跡から炭化した大豆が出土されていることがわかっている。
大豆はそもそも冷涼地を好み、昔から中国や日本などのアジアの限られた地域で栽培されてきた。
そのため東洋では、みそ、納豆、豆腐などの大豆を原料とした大豆食品が各種作られ、おいしく食べらていた。
アジア原産の大豆は、19世紀頃アメリカで大規模に栽培されて以来、世界中に広がり今では油脂やたんぱく質源として最大の作物となっている。
近年では、改良された大豆がインドやブラジルなどの熱帯地域でも栽培されていて世界的な作物だ。
さらに品質が改良されて、新しい大豆性食品(例えば肉に変わる大豆ミート)も研究されていて、その活用方法はこれからが楽しみだ。
ところで、最近では国産大豆が一部の生産地に限られ、栽培量は減ってきている。
国産大豆は、たんぱく質の含有量が多く、脂肪や炭水化物も適度に含まれているため、食品としての適性度が高い。
一方で、アメリカ産を含む外国産大豆は脂質が多い品種である。
外国産大豆を豆腐や油揚げに使う場合は、その中でも比較的脂質が低く、高たんぱく質の品種を使っている。
また、みそや納豆用には脂質が少なく炭水化物が多い大豆が適しているので、国産や中国産が使われることが多い。
大豆は色別の種類もあって、黄大豆や黒大豆、青大豆がありおもしろい。
一般的には黄大豆をよく見かけるが、黒大豆は煮豆に、青大豆はきな粉に適している。
〇インゲン豆(隠元豆)
アメリカ原産で、16~17世紀にヨーロッパから世界に広がったと云われている。
多くの品種があるが、完熟した豆を乾燥させて、煮豆、甘納豆、餡などに利用する。また、若いさやは野菜用としてやわらかくおいしくいただける。
日本で流通している乾燥インゲン豆は、金時類(赤紫色つややか)、手亡類(白色小粒)、白金時類(白色つややか)、うずら類(褐色地に赤紫の斑紋)、高級菜豆(虎模様で通称虎豆)等、五種類程の銘柄がある。
金時豆の代表は大正金時。赤紫色の中粒種で煮豆、甘納豆、餡等に用いられる。
白色の品種は白金時という品種で、中粒から大粒種があって、大正金時と同様に煮豆、甘納豆、餡等に利用される。赤と白では豆の風味が異なるため、好みは人によって極端に分かれると言われる。
〇小豆
粒の長めが大納言小豆、短めが普通小豆だ。
国産の大納言では兵庫県や京都府の大納言が、普通小豆は北海道産の小豆が香りが良い、と有名どころだ。
ただ、全国各地の小豆に各々特徴があって、皮が柔らかい、香りが強い、風味が餡に向いている等それぞれだ。
小豆の80%が和菓子の餡や甘納豆に、その他には甘みなどの味を付けずに小豆粥や赤飯に使われている。
小豆はどうしても砂糖の使用量が多いので、甘みを付けずに豆の香りでいただく「小豆粥」「小豆赤飯」などは、風味のよい一品で私は好みだ。
〇ひよこ豆
チックピーとも呼ぶ。主にインドで生産されていて世界の約80%を占めていると云われている。乾燥している豆には1個の突起があって鶏の頭に似ていることからひよこ豆というそうだ。
豆の中でも癖のない味と風味であるため、色々な料理に使っても違和感がない。
ひきわりにしてスープに活用したり、カレーに加えるのも良いが、茹で豆にしてサラダなどのトッピングにも合う。
ひよこ豆は、私には馴染みが少ないので、穀物問屋の店主から聞いた取り扱い方を紹介するので、ぜひ参考にしてみてほしい。
【ひよこ豆の取り扱い】
① 洗う
豆は十分に洗う。
② 豆の浸水
厚手の鍋に洗ったひよこ豆とたっぷりの水を入れ、一晩(10時間程)十分に浸水させる
③ 煮る
十分に浸水したら、強火にかける。この時にお好みで塩を少々入れる。沸騰したら弱火にして、やわらかくなるまでコトコト煮る。
煮ている間、水が減るのでひよこ豆が自ら出ないように差し水をする。
アクが浮いてくるので取り除く。
鍋の大きさにもよるが、目安として30分程度煮た後、好みのやわらかさになるまで煮る。
煮れば煮るほどやわらかくなる。
④ できあがり
好みのやわらかさになったらできあがり。余熱でひよこ豆がよりやわらかくなるので注意する。
カレーやサラダのトッピング、スープなど色々な料理に工夫して使える。
すぐに使わない場合は、煮汁ごと冷凍保存ができる。
〇レンズ豆
ヒラ豆とも呼ぶ。
原産はトルコとされているが、生産はインドが多い。インドではひきわりにしたり、全粒にして料理に使っている。
また、トマトや玉ねぎで風味を付けて一緒に煮込み、裏ごしして作るスープが有名で、いかにも栄養がありそうだ。
レンズ豆もあまり一般的ではないので、ここでも穀物問屋さんに教えてもらった取り扱い方を紹介する。
【皮付きレンズ豆の取り扱い】
① 洗う
レンズ豆をさっと水洗いする。
② 豆の浸水は必要なし
浸水(水戻し)は要らないので簡単。
③ 煮る
《サラダやスープの後入れ、料理に使う場合》
鍋の中にたっぷりの水と、水洗いしたレンズ豆を入れる。沸騰したら火を弱め、目安として10分程度煮た後に好みのやわらかさになるまで煮てできあがり。
皮付きなので煮崩れがしにくく簡単。
なお、粗熱が取れたら保存容器に移し、冷蔵庫で4日~5日保存できる。
《スープやカレーなどの煮込み料理に使う場合》
沸騰した湯で10分程度で煮えるので、スープなどができあがる10分程度前に、洗ったレンズ豆を入れて煮込んでできあがり。
〇思うこと
国産大豆(黄大豆乾燥)の栄養は、100g当たり372㎉、たんぱく質33g、脂質19g、利用可能な炭水化物は7gと栄養バランスがよい。
何よりも食物繊維総量は22gと多いのが特徴で、余分な残渣を排便する際に便通を整えるなど、腸の活性化には欠かせないものだ。
品種にもよるが、一般に豆類は食物繊維が豊富で健康にはよい食品と言える。
だだ、炭水化物も多くさらに煮豆や餡にする場合に砂糖を多く使うことから、豆類の煮豆は、菓子としての嗜好品扱いになることがある。
肥満改善や糖尿病などの病気治療中は、積極的に取るべき食品には含めないほうがよいので注意しておきたい。
甘みを付けずに、茹でて料理にトッピングするなどの工夫をして、豆を食べることはおすすめできる。
今回も最後までありがとうございました。
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