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全ADHDにとって憧れの仕事術【書評】SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる デボラ・ザック

めったにkindle読み放題以外買わない私だけれど、この本は、かなり前に購入し、時々読み返す。一つのことに集中して、一個一個成し遂げていけたらどれだけ、格好いいだろうか。注意欠陥症候群気味の私にとっては、シングルタスクは、あこがれ(でも手が届かない)の仕事術だ。

しかし、特性上、一つのことに集中できないとはいえ、ひとつの「生き方」としてシングルタスク仕事術から学べる点がある。今日は、そんな点を。

本当に「重要なこと」は少ない

仕事術や時間管理の本が大好きだけれど、それは、その手のスキルが致命的なまでに低いことを意味する(参考:本棚を見ればその人が分かる!真の意味を知って驚愕した。ちょっと悲しい。

ADHD特性のある私にとって、15分刻みでスケジュールを立てて、それをしっかりこなすというのは、綱渡りしながらお手玉するくらい難しい。結局、無理なんだ。だから、究極的には、やるべきことを少なくするしかないということに気づいた。整理整頓ができなくても、部屋に物がなければ乱雑になりようがない。悲しいながらも、正しい方法を発見したのだった。

シングルタスク仕事術でも、この同じ考え方が説明されている。それが「バイタル・フュー」というキーワードだ。

「 ジョセフ・ジュランはジョセフ・デフェオとの共著『ジュランの品質ハンドブック(Juran’s Quality Handbook)』(未邦訳) のなかで、「バイタル・フューの法則」 として「重要なものはごくわずかしかない」と説明している。」
「質の高い仕事をする鍵は「 些末 な多数」(トリビアル・メニー) と「ごくわずかな重要なもの」(バイタル・フュー) を区別することにある。そのためには、自分のタスクをていねいに見なおし、 最重要のタスクと、とりあえず後回しにできるものとを区別する とよい。最重要のタスクをすべて終えたら、後回しにしたタスクを再度、見なおす。そして、着手すべきタスクなのか、あるいは、そもそも不要なタスクなのかを見きわめるのだ。 」

シンプルな話だが、何もかもできないことを認めることだ。私の場合、一日の中で、できる大きな仕事(ブロック)は3コマ(1時間半×3)と決まっている。そこに、大事なことを詰めて、とにかく3コマは一生懸命やるようにしている。残りの3コマは、あまり重要そうではないタスクに手を付けたり、noteを書いたり、本を読んだりしている。これも仕事といえば仕事だから。

何もかもできないことが分かれば、できないことは捨てなければならない。とにかく、捨てる技術を磨くことが、シンプルな生き方をする秘訣になるだろう。優先順位を決めようとすると、大事なことばかりに思えるから、捨ててもよいところを、とにかく捨てるのが良いと思う。

これを劣後順位という。やりたいなと思うけれども、やらなくてもいいことは思いのほか多い。それを削っていくだけで、ADHDでも管理できる範囲に落ち着いていくはずだ。

休む時は休む

自分で言うのもなんだけれども、私は相当の働き者だ。そのモチベーションになっているのは、第一に、人並み以上にやらないと「普通」の人に追いつけないからだ。ADHDの生産性の低さは、きっと普通の人が思う以上に低い。相当の努力が必要。そして第二に、仕事に依存してしまうのだ。ADHDはドーパミン不足で依存症になりやすいと言われている。

だから、休みたい時にも休めない。悲しいくらい、駆り立てられるように仕事してしまうのだ。特に在宅ワークになってからは、オンとオフがないので、朝起きた瞬間から、寝る瞬間まで仕事になってしまう。メールも即返信癖があるので、雇う側にとっては、24時間働いてくれるので勝手が良いだろう。でも、本人の幸福度は日々削り取られる。

そこで、自分を大切にする考え方が「タイムシフト」だ。なんでも英語で言うと格好がいい。まあ、休む時は休めってことだ。

「 目の前の作業に没頭したいのなら、定期的に休憩をとろう。 一点集中術は、 最優先の作業から少し離れる時間を予定に組み込む ことで大きな効果を発揮する。」
「あなたの心臓の動きを見習うといい。「心臓は休むことなく、つねに動いていると考えている人が多い。だが実際には、収縮のあと、かならず休憩する時間がある。1日のうち、ゆうに 15 時間は休憩しているの だ」 「タイムシフト」とは、生産性の高い時間とリラックスする時間を交互にもつという手法だ。大変な仕事に取り組んでいるときは、頻繁に休憩をとり、エネルギーが 枯渇 しないようにしよう。」

そう、定期的に休んだほうが、パフォーマンスは上がるのだ。これは間違いない。私はメンタルタフネスの技法を知った時に、このことを理解した。全力でトレーニングするより、インターバルトレーニングのほうが、パフォーマンスは上がる。適度に休むのがコツなのだ。

それで、仕事面では、このことがずいぶん行えるようになっている。ポモドーロテクニックを使って、25分刻みで仕事をして5分休憩してというのは、私の仕事の型だ(最近は45分仕事して10分休むこともある)

しかし「人生」の時間という観点で見た時に、十分に休憩をとっているとはいいがたい。オンとオフを分けてはいない。フリーになってから「休日」をとったことがない。まあ、いつでも休んでいるようなものだから(という考えになってしまうので)休日だろうが、日曜だろうが、朝だろうが、夜だろうが働いてしまう。

時には、ネットに接続しない時間・期間も必要かもしれない。(1日でもそんな時間をとったら発狂しそうだなぁ。)生き方においてのタイムシフトは、これからもチャレンジが必要だ。これも、集中する時は集中し、休む時は休むというシングルタスク仕事術なのだ。奥深いねぇ。

集中すると幸せになる

結局、なんだかんだいっても、シングルタスク仕事術が魅力的なのは、思いっきり集中している時の人は幸せを感じやすいからなのだという。

「デヴィッド・ゴールドマン博士によれば、「幸福になる鍵は、いまという瞬間にどっぷりとひたることにある」という。・・・ 科学者たちの説明によれば、 人はなにかに専心しているときのほうが充足感を覚える。」
「2010年、ハーバード大学の研究者たちは成人の被験者2250人の機嫌のよさや、いまの作業にどのくらい集中しているかなどを、ランダムな間隔を置いて評価した。すると、仕事に熱心に取り組んでいる人ほど、幸福を実感していることがわかった。同様に、すぐに気が散ってしまう人ほど幸福を感じる度合いが低い ことも判明した。」

フロー状態に入ると、謎の恍惚感がある。少ないながら、私もそういう時がある。本を読んでいる時か、文章を書いている時だけど。気がつくと3時間くらいたっていることがある。

残念なのは、このような集中力は、自分ではほとんどコントロールできないことだ。それよりも、気が散っている時間のほうが、はるかに多い。気が散っている人は、幸福度が低いのだという。ただでさえ、仕事ができなくて気分が滅入るのに、集中できないことで幸福度が下がるとは、踏んだり蹴ったりだなぁと思う。

まあ、できないことはできないで、しょうがないけど、これからもシングルタスクへのあこがれはずっと続く気がする。



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読書感想文

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq