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【感想】又吉直樹のヘウレーカ!「大舞台で実力を発揮できますか?」

メンタル的にプレッシャーに弱い方ではないと思っていた。大舞台でも比較的安定したパフォーマンスはできると。確かにそうなんだけれど、いや、そうでもないかなと気づき始めたのが、ここ数年だ。

とにかく、大きなイベントや重責を果たす必要のあるプロジェクトを務めている時には、不安な身体症状が次々に表れるようになったのだ。自分では、それがメンタルの問題だとは気づいていなくて、本当に体に来ていると思い込んでいた。ある時は心臓発作を心配し、ある時はガンの恐怖におびえ、ある時は脳梗塞・脳卒中恐怖症。

だんだん自分でもおかしいと分かるようになってきた。そして、その不安は、大きな仕事と連動している。明かな不安障害を自覚したのが、このNOTEの開設のきっかけだ。自分のカラダ・脳の中で起きていることが、ある程度分からないと、コントロールもできない。プレッシャーを克服するために、役立つ「ヘウレーカ!」はスポーツ心理学から得られる。

「ゾーン」と適度な緊張

大きなプレッシャーは力になることも、逆に実力を発揮できなくさせるファクターにもなる。適度な緊張状態のことを、スポーツ心理学では「ゾーン」という。ゾーンにいる時は集中力が研ぎ澄まされている。しかし、ひとたびゾーンを超える緊張状態に陥ると、運動能力は落ちてしまうのだ。

音大生を集めたピアノコンクールの実験がある。大物審査員に評価されることを意識した音大生たちは、出番待ちの時も、演奏中も緊張しっぱなしだった。演奏時の心拍数は180超え、さらに鍵盤をたたくスピードが上がり演奏時間が短縮されてしまう人が多かった。プロとアマを比べると際立っていたのが、オンとオフの違いだ。プロは演奏中には緊張しているが、演奏前後には筋肉の緊張はほとんど生じていない。アマは緊張しっぱなしだ。

プロは練習時に、大舞台をイメージして、心拍数を十分に上げた状態での演奏を行っていることが知られている。本番の緊張状態も見込んだうえでの体・メンタルの作りこみなので、当然、本番に強くなるのだという。とはいえ、練習のしすぎには注意が必要だ。

練習のし過ぎとイップス

スポーツ選手は「イップス」という現象を経験し、スランプに陥ることが多い。以前は、メンタルの問題だと言われていたが、実は「練習のし過ぎ」であることが分かっている。
同じ動作・同じ練習をし続けると、だんだん、脳はその行為を自動化するようになる。そのため、思ったような動き(脳が体に命じる動き)ができなくなり、身体が勝手に動き、コントロール不能になってしまうのだ。

完璧主義で、ひとつでもうまくいかないと、繰り返して練習し続ける人に発生しやすいのがイップスだ。番組では、M-1決勝戦に進んだこともある、漫才コンビ「ゆにばーす」に密着した。ツッコミの川瀬は極度の緊張症で、ネタあわせは本番直前には60回以上も繰り返すという。明らかに練習のし過ぎである。練習のし過ぎで、自動化が起こると、予想外の事態に対処できず「真っ白」になる状態が起きる。だから、川瀬はアドリブに弱い。

真っ白になるのが怖くて、練習をしまくってしまうのだが、実は練習が多すぎて真っ白になってしまうのだ。こういうことは教えてもらわないと分からないことだ。イップスを防ぐには、同じスキルを繰り返さないようにすることだ。練習に多様性を取り入れること。サーキットトレーニングのように、合間、合間に違うトレーニングを挟むことだ。

私も相当練習する方で、大舞台の前は、1週間前から練習漬けになっていることがある。結局、丸暗記状態になっていて、それも良くないよなと思いつつ、不安を克服するためには練習しかない!と念じて、念じて、やり続けていたのだが、この辺で軌道修正が必要のようだ。

脳の特性を利用した不安の解消法

不安を感じている時は、脳の中の扁桃体が暴走している時だ。扁桃体が活性化すると、運動の実行機能は低下する。不安や緊張が募ると、身体が動かなくなったり、しゃべれなくなったりするのはよく分かる。(参考:不安障害・強迫的な思考のループを止める「ブレインロック解除」

扁桃体を暴走させないためには「考え方」がとても大事だ。ネガティブな考え方をすると、扁桃体は暴走する。ドキドキした時に「ああ、失敗する予兆かも」と考えるか、「やる気がわいてきたぞ。準備はできている。」と考えるかの違いだ。私は、もともとネガティブ思考だが、心理学を勉強してから、考え方は変えられるということを知った。

コツコツとだが、自分の間違った考え(非合理的な信念)に挑めば、扁桃体を暴走させない生き方は可能なはずだ。

ちなみに「不安や緊張を克服する」という言葉を使い続けるのも、良いことではない。「不安」や「緊張」を前提にしているからだ。むしろ「実力を発揮する」と言い換えると良い。ちょっとしたことだけど、言葉・定義に人は引っ張られてしまうから。(参考:論理療法(REBT)「言葉定義法」を用いて誤った信念をD(論駁)する

私のメインサイトは「メンタルを強くしたい」というタイトルをつけていたが、これも「メンタルが弱い」という前提に立っているので、こういう言い方をしている限り、メンタルが強くなることはないことがわかった(涙)

集中力を高めるルーティーンの力

一流のスポーツ選手は集中力を強化する独特のルーティーンを持っていることで知られている。野球のイチローや、ラグビーの五郎丸。毎回、毎回、同じ動作を繰り返すことで、ゾーンに入り込む。うまいルーティーンを持っている人は、まるでスイッチのように、自分の集中力をオンオフできるのだ。

ルーティーンに入った時のプロ選手の脳と、一般人の脳を比べると面白いことが分かる。一流のプロ選手はルーティーンを始めると、脳の「補足運動野」という、運動の準備を行う箇所が活性化することが分かっている。しかし、他の場所は落ち着いているのだ。一方、一般人がルーティーンをすると、脳のあらゆる場所が活性化してしまっている。特に情動をつかさどる部分も活発になっており、気が散っていることが分かる。

この実験から分かるように、ルーティーンの役割は、これから行うパフォーマンスに関係のないことは一切考えないようにすることにある。特に、無駄な想念が浮かばないようにするのは大事なことだ。この点で、適切なルーティーンの作り方に関しては、精神科医の樺沢さんの本が参考になる。

集中力を高めるルーティーンの作り方

ルーティーンは、ある程度複雑である必要があるという。ラグビーの五郎丸のルーティーンは7つの挙動から、イチローのルーティーンは6個の異なる動作を11回行うという複雑なものだという。実は、これ、あえてワーキングメモリーをいっぱいにして、不安や雑念が起こらなくしているのだ。

「ワーキングメモリのキャパシティは、だいたい「3つ」と言われます。つまり、人間の脳で、同時に考えられることは、せいぜい「3つ」までということです。脳の中には、「三つのトレイ」があって、そのトレイを使って情報処理をしている、と考えるとイメージしやすいでしょう。」

「7つの挙動からなる五郎丸ルーティーンを行うと、この「三つのトレイ」がすべて占拠される。結果として、「ネガティブな考え」をするワーキングメモリの余裕がないために、ルーティーンを行うと雑念がわかなくなるのです。 過緊張しやすい場面で、 自分なりの「ルーティーン」を作っておけば、「ルーティーンの動作をする」に気をとられて、「失敗したらどうしよう」と心配する脳の余裕がなくなる。 不安が不安を呼び、緊張が強まるということもない。過緊張緩和に大いに役立つということです。」

 自分なりの、ルーティーンを作る時は、3つ以上の動作が組み合わさったものを選ぶと良いという。自分の頭の中にあるトレイ、つまりワーキングメモリーを、あえて、いっぱいにするのだ。

私の朝のルーティーン

私も、日々、自分のメンタルを安定させるのに、ルーティーンが役立っていると思う。特に、朝のルーティーンは、もう決まり切ってきた。

1:体温を測定(2分)
2:血圧を測定
3:体組成計で体重を測定
4:NOTEに「睡眠日誌」を記入(10分)
5:NOTEに1記事を入稿(30分)
6:シャワー(7~8分)
7:食事(20分以内)
8:皿洗い・布団片付け・ひげそり(20分前後)
9:トイレ掃除(5分~7分)
10:滑舌訓練(7~8分)
11:音読練習(10分~12分)

いつの間にか、このルーティーンは確立している。毎回、すべての動作をtoggleを用いて時間計測しているので、だいたいの時間も分かる。(参考:時間管理のキモは1分ごとに記録し続けること。toggleという時間計測ツール。)。ポイントは食前・食後に分けて、始業前に、この一連のルーティーンをこなすことだ。

とくに、最近、身につけた、滑舌訓練や音読トレーニングは、仕事の前に、脳をシャキッとさせる効果が大きい。それぞれ、5分~10分の動きを組み合わせたものだが、次々と動いていくことで、仕事開始のウォーミングアップを自分の身体に叩き込んでいるのだ。おかげで、朝の時間に、心配になったり、不安になったり、考え込んだりすることはない。

忙しく、次から次へとすべきことがあるから。今の課題は、昼と夜だ。やはり、カギになるのは、食事で、この食事の前後をうまくルーティーン化すると、かなり多くのことを成し遂げることができることが分かっている。頭をお留守にすると、余計なことばかり考えてしまう。

この本を書いた時点では、朝・夜のルーティーンは、今実践しているほど完成形ではなかった。しかし、とにかく生活にルーティーンを持ち込むのが正しいことはわかってきた。試行錯誤でやり続けている実践も、それほど的外れではないことが分かるとうれしい。特に、脳科学やスポーツ心理学の知見は役に立つ。

感想

実は「又吉直樹のヘウレーカ!」を見たのは初めてだったが、知的好奇心を刺激する、とても良い番組だった。お笑い芸人なのに、テンションが一定の又吉さんも、良い味が出ている。回によって、興味のあるなしは、あるけれど、これからチェックしていこうと思う番組だった。とても面白い番組!(NHKオンデマンドでおすすめだ)

今回、解説をしてくれた、工藤和俊さんは、スポーツ心理学の専門家で、ゴルフの石川遼選手の活躍のサポートもしている。メンタル強化のプログラムに、もっとスポーツ心理学で学んだことを応用してみたい!と思った日だった。


綿樽剛の著書一覧

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq