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不安障害・強迫的な思考のループを止める「ブレインロック解除」

私にとっては、ADHDよりも、はるかに困っているのは不安障害だ。病気不安に取りつかれてからというもの、心の健康が大いに損なわれた。いつ発作が起こるだろうかとビクビクしながら生活するようになった。(参考:不安障害は簡単には治らない。何度もぶり返し、繰り返す戦い。

メンタルを強くする本を読み漁っているのも、元はといえば不安障害に対峙するためだった。私にとって不安障害は、なかなか手ごわい相手だが、脳の仕組みを知ることが、正体不明の敵と戦うカギになっている。なぜ、強迫的な不安が生じるのかというメカニズムを知ることが大切だ。原因が分かれば、それに対処する方法がある。

不安障害のループ

不安障害と強迫性障害(OCD)には共通点があり、一度抱いた合理的ではない考えに「とらわれる」。自分では「バカげている、もうやめよう」と思っても、その考えのループから抜け出せないのだ。私の場合なら、ガンで死んだ友人を看取ったところから、ガン恐怖が始まった。みぞおちのしこりや、絶えず感じる胃もたれ、何から何までガンの初期症状に感じた。

「だれでも、こうした気持ちになることはあるが、長くは続かない。一方、OCD患者は、心配事をよそにやることができない。脳も心も、恐ろしい結末を迎える話ばかりを想像してしまう。考えまいとしても無理なのだ。あまりにも恐怖が真に迫っているので、どうにかしなければならないと思ってしまう。」

「OCDの場合、時間が経つにつれてひどくなる患者がいる。だんだんと脳の構造が変わっていってしまうからだ。患者は、自分の心配事に神経を集中させることで、安心を得ようとする。・・だが、自分の恐怖について考えれば、それだけ心配も大きくなる。心配が心配を生むからだ。」(P194-195)

不安障害のメカニズム

幸いなことに不安障害・強迫性障害のメカニズムはわかっている。人が不安を感じるような状況になると、脳の3つの部位が次々と発火する。

まず、眼窩前頭皮質(前頭葉の一部)が「ヤバイ!」という「感情」に火をつける。次に連鎖するのは、帯状回(脳の辺緑系にある)だ。この部分は、不安に連動して、身体的な反応を生じさせる。そして、何かの行動をとって「もう大丈夫」とギアチェンジをする機能が尾状核(脳の中央、大脳基底核)で起こる。どんな不安なことでも、それに応じた行動をとることで、思いを切り替えられるのは尾状核が、ちゃんと仕事をしているからだ。

ところが、不安障害の人はこの3つの機能が活性化しっぱなしになっていることが多いという。特に尾状核がギアチェンジをしないために、不安になり、身体症状が起き、その状態から抜けられなくなってしまうのだ。「ブレインロック(脳がロックされた)」状態だ。まるで、壊れてしまった警報装置のように、もはや原因がないのに、激しく警報が鳴り響く。止めることはできない。

解決策は「眼窩皮質と帯状回のつながりをはずし、尾状核の機能を正常化させることによって、OCD患者の脳回路を変化させる」(P200)ことだ。脳には「可塑性」があるので、間違った学習をしてしまった脳を再教育することも可能なのだ。

ブレインロックを解除する方法

脳の可塑性を語るうえでは、二つの原則を覚えておくのが役に立つ。
1:一緒に発火するニューロンは、一緒につながる
2:別個に発火するニューロンは、別個につながる

強迫行為をすればするほど、そのつながりは強固になる。しかし、何とか抵抗してその行為をしなければ、やがてそのつながりは消え去る。間違った習慣を捨てて、新しい習慣を作るのだ。

非常にシンプルな方法を、繰り返し練習することでブレインロックを解除できる。二つのステップを繰り返し、繰り返し練習することだ。

1:不安障害・強迫性障害を認識する
まず大切なのは、これはOCDの症状だと認識することだ。この治療を行う医師は患者にこう言わせるという。

「そうだ、私には問題がある。しかし、その問題は細菌ではなく、OCDだ。」
「症状がすぐに消えないのは、脳の回路がおかしいからだと、自分に言い聞かせるのもいい。」(P201)

自分の不安が病気の一部であることを認めることは、治療のスタートラインだ。立ち向かうべき敵が、脳の間違った回路であることを理解して初めて次の方法が役に立つ。

2:楽しさを味わえる前向きな行為に集中すること
OCDの症状が出ていると気づいた瞬間にこれを行うのだ。人は、ひとつのものにしか集中できない。不安や心配に圧倒されている時にはそれしか考えられないが、別のことに打ち込むこともできることを知ろう。それは、どこに焦点を定めるかという意志の問題だ。感情はすぐには変わらない。しかし、とにかく別のことを「行う」ことが大切なのだという。

「目標は、OCDの兆候が出たら、15分か30分のあいだ、新しい行為に「チャンネルを変えること」だ(そんなに長い時間が無理でも、抵抗するだけでも効果がある。たった一分でもいい。その抵抗、努力が、新しい回路を築くのである。)(P204)

くり返し使われる脳の回路は固定していく。恐怖や心配を繰り返し考える脳は、絶えずそのことを考えるようになる。しかし、OCDの症状が現れるたびに、楽しいことに打ち込もうとする人は、オートモードを解除して、マニュアルでギアチェンジをしようと努力しているのだ。やがて脳に新しい回路が創造されていく。

実際にOCDから回復した患者の脳スキャンでは、不安と恐怖で活性化していた3つの部位が、連動しなくなっていることが確認された。ついにブレインロックが外れたのだ。

脳は変えられる!という希望

メカニズムが分かると、対処法も考えられるようになる。メンタルの問題は自分で意識しないところで起きてしまう。つまり、もう自動運転でプログラムされてしまっているような状態なのだ。気づかずに自分で誤学習してしまったのだ。これを治すには再教育するしかない。

私は、音楽の力(好きな歌・ポジティブな気持ちにさせる音楽)で、ブレインロックを外すことに取り掛かった。激しい不安・恐れに襲われる時には、前向きな歌を朗らかに歌い上げるのだ。とにかく、それを習慣にする。

脳が可塑性を発揮するには時間がかかる。コツコツした努力が必要だ。しかし、必ず脳の回路は作り変えられていく。不安障害に立ち向かう上でも、この重要な知識が役に立つ。心理学は脳科学とセットでなければ意味がないと、つくづく実感する。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq