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「オネエっぽい」と言われた日

「なんかオネエっぽいね」

2年前の大学1年生の時、いつものようにサークルが終わった後に立ち話をしていた時にその場にいた人から言われた言葉。

喋っているとつい相手を叩いてツッコみたくなる時があるけど、僕はあくまでもその場が和めばいいなって思いってて、相手に痛い思いをさせないために弱めの力で叩いていたつもりだったけど相手からしたらそれはオネエっぽかったらしい。その振る舞いに加えて喋り方もオネエっぽいって言われたような気がする。

しかも驚いたのは1人が言った「オネエっぽいね」という言葉に、その場にいた何人かが「なんかわかるかも」って言ったこと。

まったく意識していないところで出てしまった言葉遣いとか振る舞いのせいで、「オネエっぽい」と言われる日が来るとはまったく思わなかった。

かといってすっごいショックを受けたわけでもないし、そもそもオネエとかそ例外の性の在り方の言葉の定義なんて簡単に定められるようなものじゃないと思ってる。

ただ、はっきり言えるのは自分はオネエじゃない。

他人から見た振る舞いがオネエっぽいとしても本人の心の内はその人にしか分からないんだから、そういうことを軽々しく口にするもんじゃないと思った。

それと同時に後悔したことがある。

中学時代の同級生

地元のすし屋のチェーン店で働いているところを実家に帰るたびに目撃するからか今でも記憶に残っている人がいる。ここではNと呼んでおこう。

Nとは同じ小学校を卒業し、そのまま同じ中学へと進学した。多くの人が地元の小学校から公立の中学校へと進学する普通のルートである。だから同じ学年の半分以上は小学校からの顔見知りだ。

そのNとは覚えている限りだと小学校6年生の時と、中学校3年生の時に同じクラスになった。今でも覚えているその印象は、甲高い声で笑っていて、とても元気そうで、いつも複数人の女子と行動している人。

いくら普段から女子と一緒にいるのが楽しいといっても、体育の後に服を着替える時まで一緒に居ることはできないはず(男と女だからっていうことよりも倫理的なことでの問題があると思うから)

それで、後悔してるのはこの時のことなんだけど、多分聞いて聞かないふりをしちゃったんだよね。体育の後の着替えの時間に誰かが言ったどこからか聞こえてくる「あいつオネエっぽくない?」という言葉を。

それを言った人は多分悪気は無いんだろうけど、少なくともその場にいたら耳に入っちゃうようなことを平気で言ってしまったみたい。

かといってその時の自分はただNはそういう風にいるのが一番楽な人なんだとしか思ってなかったし、今でこそ知っているLGBTQのことに関しては何の知識もなかった。

だから僕は聞いて聞かないふりをして何事もないかのように過ごしてたはず。

5年以上も前のある日のことになると記憶はかなり曖昧だから、所々推定的な表現を使ってるけど、今になって考えてみると何かできたんじゃないかなって思う。その何かをするのはとても難しいことだけど。

その日のことが強く記憶に残っているくらいで、その後の中学生活のことなんてほとんど記憶になく、自分がNとどのように接していたのか分からない。

ただ他にもNに関して記憶に残っている日がある。

それが高校に進学した後のある日のこと。僕が進学した高校とNが進学した高校は隣同士に学校があった。

僕は高校1年生の時だけバスケ部に所属していたんだけど、ある日放課後にNの高校へ練習試合をしに行くことになり荷物を持ってその高校へ自転車で行った。

そして自転車を駐輪場に停めている最中にたまたまNと遭遇。その時Nが「あー!○○くん!」といつもの高めの声と屈託のない笑顔でこちらに手を振っていたのを覚えている。

あの日聞いて聞かないふりをしたはずの僕に向かって、こんなにも元気に手を振ってくる人っているんだと思った。だからこの日のことが記憶に残っているのかもしれない。

その時Nの中にどういう感情があったのか知らないけど、「オネエっぽい」という同じ言葉を投げかけられた身としてはあの時は申し訳なかったなと思う。

そう言われて初めて言動や振る舞いだけで自分が「~っぽさ」の枠に収められるのは嬉しくないってことがわかった。

だからなるべく他人を自分の偏見で決めつけることはしないように意識していきたい。

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