「夜は長い」
ここ最近夜更かしをするのが当たり前になっている。
何の目的もない僕は、ただひたすら時が経つのを待ち続けている。
「ねえ、今時間ある?電話しない?」
最近やけに電話しようと誘ってくる女友達がいる。
正直めんどくさいがまあ時間をつぶすのにはちょうどいい。
「いいよ、電話かけるわ」
時間は午前1時を回るところだ。
「あっ、もしもし~?今日も元気してたー?」
「ああ、んー、まあ普通かな」
「何その返し、曖昧過ぎでしょww」
もう1時近くになるというのにテンションが高い。
「今日さー、彼氏に振られたんだよね」
「ふーん」
「しかも、その振り方がひどくてさー。彼氏の家行ったら、知らない女の子が一緒にいて、私がその人だれ?って聞いたんだけど、何て言われたと思う?」
「さあ、わかんないや」
「‘’こいつ俺の新しい女‘’って言われたの。意味わかんなくない?そんなことする男こっちから願い下げだっつーの」
彼氏に振られて感情が高ぶっているらしく、その後も元カレの愚痴をさんざん聞かされて気が付けば3時近くになろうとしていた。
「はー、しゃべったらなんか疲れてきちゃったなあ」
「寝ないの?明日も仕事あるんじゃないの?」
「明日は休みもらってるから大丈夫」
「そうなんだ。ゆっくりできるじゃん」
「あんたは明日何すんの?」
「別に何もしないよ。いつものように彷徨い続けるだけ」
「ふーん、ならまた明日も電話するか?明日だけじゃなくて明々後日もそのあともずっと毎日電話しようよ」
「まあ、別にいいけど」
そう返事をしたものの、これからもずっと電話し続けるなんて不可能である。それは向こうも分かっているはずであるが、お互い何も知らないふりをしている。
それから半年近く経つが僕たちは毎日電話をした。電話の時間が来るのを楽しみに生きていたと言っても過言ではない。それが一生続けばいいのになんて考える自分がいた。
「ねえ、ちょっと言わないといけないことがあるんだけどさ電話しない?」
「わかった」
「もしもし、あのね私もう行かないといけなくなっちゃったんだ」
「そうなんだ、意外と早かったね」
「うん、だから電話するのこれが最後になると思うんだ」
「そっか、次は楽しめるといいね」
「うん、ありがとう。君も、腐らずにずっと彷徨い続けてるんだからいつか報われる日がくるよきっと」
「それ褒めてる?」
「もちろん褒めてるよ!だって誰よりも近くで見てたんだから。」
「そっか。ありがとう」
「うん。てことでさ私もう行かなくちゃ。また会えるといいね。それがどんな形だとしても」
「ああ、そうだな。いい人が見つけてくれれば会えるよきっと」
「そうだね、じゃあさようなら」
「ああ、またな」
あれからどのくらい時間がたっただろうか。電話をする習慣が無くなった僕には日付感覚がない。いつかは見つけてもらえると思っていたのに、その‘’いつか‘’がやってくることはなさそうだ。
「あなたは今どんな暮らしを送っているのだろう。楽しい人生を送って、いい人とめぐり逢っているのだろうか。ああ、君の子供として僕を見つけてはくれないだろうか」
そんなことを考えながら今日も彷徨う。
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