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【自作詩集】 霧の森〜記憶を彷徨いながら〜

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オーストラリアに来てからの風景や心情を綴った詩 心から消し去ることのできない想いなどの書き殴りの詩
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#フリー台本

【詩】霧雨の降る街

【詩】霧雨の降る街

鉄の扉を両手で開くと
霧雨に包まれた街が
視界に広がっていた

小高い丘の上に建つこの家からは
街全体を見下ろすことができる

あの頃は
雨に濡れたグレーの街が
湿り気を含んだ黴臭さが
私を陰鬱の果てへと押しやった

変わらぬ信念と祈りを大空に掲げ
見知らぬ敵から身を護り
傷つきながら森を彷徨い戦い続けた

希望に向けて最後の光の矢を放つ

悲しみの果てに築き上げた
魂のディストピアは
燃え上がる

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【詩】自己愛

【詩】自己愛

いつもと同じように
鏡の前に立ち
指でゆっくりと
唇をなぞりながら
口紅をつける

長年愛用している
ピンク色の口紅
初めて買ったのは
いつだっただろう

あの頃の私と今の私
ふふっと笑みが溢れた
目尻と口元にできる笑い皺
祖母譲りの頬骨

悪戯に知識と知恵を
詰め込んだけど
瞳の奥に棲む私は
あの頃と変わらない

今にも壊れそうな
脆いガラス細工
自信がなくて不安で
いつも「これで良いのかな?」

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【エッセイと詩と写真】サンスターを追え!

【エッセイと詩と写真】サンスターを追え!

欧米でよく売れる写真の一つがサンスター。
太陽光を星が輝くように撮影した写真のことである。
サンスターは、希望、夢が叶う、縁起が良いなど色々言われているらしい。
私は、太陽の光が眩しくて、撮りたいと思う被写体が見つからないとサンスターを撮り始める。
もちろん、最も美しく、縁起が良いサンスターは日の出直後。
山の端であったり、木や岩の陰から輝く様を切り取る。
カメラ側も、サンスターを撮るための設定を

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【詩】通り過ぎた香気

【詩】通り過ぎた香気

有名ブランド店が立ち並ぶ大通り
ウインドウを横目に見ながら
少しだけ時間を気にして歩いていた
今日は面接の日だ
昨日まで何度も練習したから大丈夫
それでもまた
頭の中で繰り返し繰り返し
シミュレーションしていた

完璧...絶対に上手くいく

時々すれ違う人のことなど気にかけていられない
よくありがちなこの街のグレーの空だが
溢れる街のエナジーが
街全体を灰色に染めることはない

突然頭の中に艶か

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