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読書レビュー:「国家破産はこわくない」橘玲 著書

■目的(得たいもの)
以下につき理解すること
・①国家破産がどういう背景・仕組みで起こるのか
・②どのように備えればよいのか

■仮説(読む前の見立て)
①国家破産とは中央銀行破綻の事で、以下の流れで発生するのではないか
・少子高齢化(高齢者増に伴い積み上がる社会保障費と財源元の現役世代の減少)⇒国債発行過多⇒円(中央銀行)の信用失墜(円安)⇒ハイパーインフレ発生⇒中央銀行解体(旧円に代わり新円の登場)

②円建て資産を分散すべき
・円の資産はハイパーインフレにより価値が希釈化する
・従い、外貨建てやインフレに強い不動産など、円建て以外或いは円と相関の薄い資産を持つべき

■まとめ(読んで分かったこと)
橘氏が想定する今後の日本経済の3つの可能性
・楽観シナリオ:アベノミクス成功
・悲観シナリオ:金融緩和は効果が無く、デフレ不況がこれからも続く
・破滅シナリオ:国債価格暴落・高インフレに伴い財政破綻⇒金融危機
 - 破滅シナリオの場合、3つのステージで進む
  ・1st stage: 国際価格下落⇒金利上昇
  ・2nd stage: 円安&インフレ進行⇒国家債務の膨張
  ・3rd stage: 国債デフォルト宣告

国が借金を返せないとき(破滅シナリオ)におこることは3つ
・(国債暴落による)金利の上昇
 - 金融機関:保有する国債の巨額の評価損
 - 個人:住宅ローン変動金の上昇に伴う破産
 - 企業:借入金の金利上昇に伴う倒産
・円安
・インフレ
 - インフレ税で国家は国民を犠牲にして借金を目減りさせる

破滅シナリオの2nd stageに備える金融商品
・国債ベアファンド
 - 国際価格下落に伴い利益を生む設計
・物価連動国債ファンド
 - インフレに伴い元本増、但しデフレ時は目減りする
 - 機関投資家向けのみ
・シンプルに外貨預金
・最近では仮想通貨も一案

尚、財政破綻におけるインフレでは、地価も株価も下落する
・一般的に、株と不動産はインフレに強いと言われるが、これは賃金の上昇と経済成長があるという前提
・例えば、長期金利2%時は投資利回り5%でもOKだが(ネットで3%の利回り)、長期金利が5%に上昇した場合は、グロスの投資利回りは当然5%以上になる必要ある(otherwise、誰も投資しない)
・グロスの投資利回りを上げる能動的な方法は、不動産の賃料を上げるのみ
だが、財政破綻時に賃料を上げても借りる人間は誰もいないというロジック
・従い、不動産価格は下落するしかない。なぜなら、債券と同じで、金利の上昇=価格の下落ということであるから。株価も同様

金やコモディティも微妙
・金は用途が無く、貨幣と同じく共同幻想に支えられているだけ。現にリーマンショック直後も3割程度下落しており、ヘッジ先としては微妙
・コモディティは、ほとんどが外貨建てなので円からのヘッジという意味では正しいが、需給としての変動があり、そこに日本の財政破綻の影響が及ぼす可能性もあり微妙(シンプルに外貨預金の方が良い)

破滅シナリオの3rd stageでは、預金封鎖や新円切替も有り得るが、おそらくデフォルト宣言を選択するのではないか
・日本の国債は大半が国内で消化されているので、1400兆円の国民の金融資産を差し押さえ、1000兆円の借金と相殺して財政赤字を帳消しにする方法として、預金封鎖や新円切替も有り得る(通貨発行権と暴力を独占する国は理論的には何でもできる)
・但し、憲法における財産権の侵害に当たるのは明らかであるため、自ら悪者になるよりは、グローバリズムのせいにしたがるはず

流動性の高い金融資産を保有しているのなら、政治的なリスクを過度に恐れる必要は無い

・経済には強い粘性あり、破滅シナリオでも各ステージの進みはゆっくり
・国家はそれほど俊敏に動けない

■示唆(血肉にできそうなこと)
・仮説①については、概ね理解通り。但し、時間軸として、経済に強い粘性があるので、個人として火急で焦って準備しなくても良いということは気付き(周りが対策し始めたときは既に時遅しという感覚だったが、周りが対策始めてからでも遅く無さそう)
・仮説②については、不動産も有効かと思っていたが、財政破綻ケースにおけるインフレは不動産という打ち手も微妙ということが分かったのは大きい(財政破綻しても不動産持ってたらヘッジになるしということで、無意識にいつかマイホームを購入する際の一つの理由にしていたかもしれない)

■ネクスト
藤巻健史氏や高橋洋一氏の議論を踏まえて、もう少し国家財政破綻に関する解像度を上げる
・藤巻氏:「日銀破綻」の本を読む
・高橋氏:記事や本を読む




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