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私の冬はコペンハーゲンで色づいた

私の生まれは千葉で、特に冬といって何か特別な思い出は特にないのです。
寒いのは苦手だったし、お風呂の脱衣所が寒くて仕方ないし、雪がめちゃくちゃ降るわけでもないし、家でクリスマスにホールチキンを焼くでもないし。ただこたつが出てきて、灯油ストーブを焚き、クリスマスにはケーキを買ってプレゼントが貰えるという子供にとってラッキーなイベントが発生するだけの季節でした。

そんな私にとって冬という季節が、クリスマスが、今ほど特別な意味を持つようになったのは、間違いなくデンマーク・コペンハーゲンで暮らした2年半の月日で培われた、何か郷愁に近い感情なんです。

北欧・デンマークに訪れる真っ暗な冬

デンマークにきて初めての冬は、
噂には聞いていたものの、寒い。いやもうそれはそれは寒い
デンマークの北緯は約55度。
北海道のその先よりもさらに北にある国。
何せ、私たちは真夏の国、アメリカテキサス州から引っ越してきたのです。
まず揃えたのは北国で生き抜くための防寒具でした。

そして北緯が高いということは、
そうです。【極夜(きょくや)】になります。
(完全な極夜ではないですが)
白夜の反対で、デンマークでは真冬になると
日の出が朝8時半ごろ、
そして日の入りはなんと15時半ごろ。
朝起きる時も、夕方にももう真っ暗。

「おおおお〜!!これが噂の極夜!すごい!夜が長い!」

一年目は、そんなふうに太陽と地球の関係などをまじまじと観察しながら物珍しさに乗り切ることができました。

2年目からどっとくる「暗い冬」

2年目にもなると少し慣れてはきますが、
11月ごろになると

「あ〜、、、長くて暗い冬が来る」

とテンションが下がってきます。

というのも、デンマークの冬って、本格的に11月から3月くらいまで5ヶ月くらい続き、寒いし暗いし長いしで結構精神的に参ってくるんです。

息子を幼稚園に送るのも、迎えに行って帰るのも真っ暗。
帰りはともかく、行きも真っ暗な中で幼稚園へ連れていくのはなかなかハードでした。

しかも諸事情あり、我が家は幼稚園からどんどん遠ざかって引っ越したため、最初の家の時は徒歩5分でしたが、それが自転車で25分になり、さらに次の引っ越し後は電車とバスを使って45分ほどかけて通っていたんです。

さらにやっぱり純粋に、
太陽を浴びられないと人間って衰弱するんですよね。
特にメンタルが結構きつくなってきます。

なのでデンマークでは冬になると、大人も子供もビタミン剤を飲む週間があります。太陽を浴びて生成すべきビタミンを外から補わないと、心や体の調子を崩してしまう人が多発するからです。

さらに意外に思われる方もいるかもしれませんが、デンマークにはあまり雪が降りません。おかげでただひたすらに暗いです。雪が降ると不思議と暗くても明るく見えたりしますが、デンマークの冬は、ただただ寒くて暗くて長いのです。

デンマークの人たちは、そんな寒くて長くて暗い冬を、
精一杯楽しもうとしていた

そんな冬という季節、もし自分が受け身で居続けたら、きっと私もメンタルを維持するのが難しくなってただろうなあと思います。でもそんな時、デンマークの人たちは、どうしてたか?

自分たちで暗くて寒い冬を乗り越えていくために、本当にちょっとした創意工夫をたくさんたくさん日常の中に織り込んでいたんです

例えば彼らは、そういう冬に家の中で過ごす時間が増えることが当たり前に想像できるので、家の中を自分たちにとって過ごしやすいものにするようにものすごく気を遣っています。例えば家具の選び方一つこだわりがすごい。だって、たくさんの時間を家族とそこで過ごすから。本当に良いもの、心地よいもの、好きなものをちゃんと買う。家の中のインテリアもひとつひとつ気を配って、冬にはたくさんのキャンドルやライトを灯し、家の中を彩っていきます。

クリスマスには、全力で街の中をクリスマス色に染めていきます。暗いコペンハーゲンの夜を彩るイルミネーションに救われる心は本当に本当に多い。灯りが人の心を照らす。ウキウキした気持ちにさせる。「暗い冬も悪くないな♬」なんて思えるようになる。

街中にはたくさんあちこちにクリスマスマーケットが広がります。たくさんの屋台が立ち並び、ホットワインやドイツソーセージなんかも。場所によって少しずつラインナップが違うので、あちこちのクリスマスマーケットをはしごしてクリスマスを楽しみます。

極寒であっても、遊園地にもいきます。コペンハーゲン中央駅の目の前にある国民的に人気の遊園地、Tivoliはクリスマスシーズンも大盛況。イルミネーションだけでなく、しっかり屋外アトラクション(ジェットコースターとか、ブランコとかまで。いやもうみているだけで寒い。でも私たちももちろんクリスマスの遊園地には何度も何度も足を運んだ。寒くても。

幼稚園からはニッセと呼ばれる妖精(のぬいぐるみ)が、クラスの生徒たちの家を一晩ずつ泊まり、各家庭でちょっとしたいたずらをしていく(親がやる)というイベントがあったり、大人たちも職場でニッセのいたずらを1ヶ月にわたり(!)シークレットの相手にし続けるというなんとも面白い風習があったり。

クリスマスはプレゼントを家族全員からそれぞれ家族全員分用意し、おなじみのフレスクスタイ(皮付き豚のカリカリロースト焼き)を焼き、歌を歌ってみんなで手を繋いでツリーのまわりをくるくるまわる。

本当に全力でクリスマスという季節を楽しんだ覚えがとても印象深く残っている。

自分の暮らしを、自分で明るく灯していく

全部全部、ほんのちょっとしたことだし、日本だってやってるよーって思うかもしれない。でも、多分そのひとつひとつがどれだけその人の暮らしを支えているかとか、そのありがたみとか、どれだけ意識的に自分の暮らしにあかりを灯そうとしているかとか、きっと違うと思う。少なくとも、私はそうだった。

ただイベントとして楽しみを受け取っているんじゃなくて。

「自分の暮らしを豊かに彩るにはどうしたらいいか」を、彼らは知っていたんです。

ある環境の中でそれを否定するのではなく、その環境下でどうしたら最も自分たちが楽しく生きていけるか、どう豊かになれるかを実践している人たちだったんです

冬が厳しいからこそ、
彼らは太陽の光を大切にして、
クリスマスの灯りを心から喜んで、
人との時間を心地よくして、
夏のあたたかさを存分に楽しんで、
また寒くて長くて暗い冬を迎える。

厳しい環境下にいる人の方が、本当に大切なものをしっかり見極めて大切にしているんだよね。

そうやってコペンハーゲンでの冬を3度経験し、私にとって冬っていう季節は、何だかその時の暮らしやその街の人たちを想う、郷愁を誘う特別な季節になりました。

そして熊本でもクリスマスマーケットに出会った

そしてそんな私たちは、2017年の12月の半ばに日本の熊本へと引っ越すことになった。コペンハーゲンのクリスマスを迎えられず、クリスマスマーケットも楽しみきれずで後ろ髪を引かれる思いで帰国。そんな私に、翌年2018年に熊本でのクリスマスマーケット初開催の文字をみた時の驚きと喜びったら、本当に何か運命を感じたほどだった。

もちろんだまってなんかいられなかった
どうにか仲間に入れてもらえないだろうかと。
地元に知り合いもろくにいない、熊本に来てまだ1年もたってない私が、実行委員の方に猛烈にアプローチしたのは本当に忘れられない思い出。

そしてまさにこのチームが、「自分たちのまちは、自分たちで灯す」、そんな想いを抱えた本当にほんとうに素晴らしい人たちで、私は眼から鱗の連続だったし、こんなにアクティブで、誰かのためにまちのために全力を注ぎ込むことができて、そして本当にきらきらワクワクがつまった空間を作り上げてしまった。しかも他にはない、熊本だけのクリスマスマーケット。どこにでもあるものじゃなくて、このまちにしかない、やさしい時間が流れるクリスマスマーケット

コペンハーゲンからはじまった、冬の物語はまだ続く

私にとっての冬は、やっぱりコペンハーゲンから始まり、色づいていった季節だなと改めて思う。それまではただの一つの通過する季節だったけど、私はあれから冬がくるのを待ち遠しくなったし、冬という季節を全力で楽しもうとするようになった。家にツリーも飾るようになったし、冬用のマグカップやメニューも食卓に並べるようになった。暖かく過ごすためのアイテムを新調してみたり、車の中の音楽をクリスマスソングにしてみたり。

そして冬を楽しもうと思うと、他の季節も大切になってくる。

冬を精一杯楽しむと、春が待ち遠しくなり愛おしくなる。

駆け足ですぎる春が終わると、今度はまた楽しむべき夏がくる。

秋は彩りの見納め、豊な食の季節だし、

冬がきたらまた全力で寒さの中のきらめくクリスマスを楽しむ。

コペンハーゲンでの暮らしが私たちにくれたもの。
それは、豊かな暮らしを実現するためのマインドだったりするかもしれないな、と、冬という季節がくるとあらためてしみじみ感じる。

さてクリスマスまで今日からあと10日。
ちょっと思い出にひたってみましたが、
みなさまにもどうか素敵なクリスマスが訪れますように!

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