見出し画像

「マリー・ド・メディシスの政策についての神々の協議」ピーテル・パウル・ルーベンス【ルーヴル美術館の名品150選】96

作品が語っているメッセージは何か?
世界屈指のコレクションを誇るルーヴル美術館。何万という作品中、絵画に注目、世界的に有名な作品群のうち「意味を読み解く」観点から面白い150の作品を厳選。
人物は?場面は?出典は?意味深なディテールが語っているものは?作品に隠されたメッセージを読み解きます。

*ピーテル・パウル・ルーベンス作 連作「マリー・ド・メディシスの生涯」、1622-1625年、北方絵画部門、リシュリュー翼 ©2011 Matt Biddulph (CC BY-SA2.0)

【名品88から101】はルーヴル美術館の至宝、ルーベンスの最高傑作。
全24枚の大型絵画からなる一大作品。
では、後半部分に入ろう。
後半は、夫であるフランス国王アンリ4世(在位:1589-1610年)が亡くなって、物語の主人公であるマリー・ド・メディシスが、幼い息子ルイ13世(在位:1610-1643年)の摂政になった時代から始まる。

「マリー・ド・メディシスの政策についての神々の協議」、1622-1625年、INV1780、3.94×7.02m、北方絵画部門、リシュリュー翼

続く場面はマリー・ド・メディシス最大の政策が、神々の意思に基づくことを示す。

神々が話している内容は
子供たちをスペインのハプスブルク家と縁組みさせること。
フランス王家とハプスブルク家は宿敵。
国内で反対のあったこの政策が、神々の意思によることを強調します。

◆先立つ場面◆

右下:ルーベンス作「王の死とマリー・ド・メディシスの摂政就任」、1622-1625年、INV1779、3.94×7.27m、北方絵画部門、リシュリュー翼

こちらに先立つのが、右下の場面【名品94】。
アンリ4世を天に上げている左の神が、神々の王、最高神のユピテル。
これから見ていく場面では、この最高神のユピテルが、神々の会議を統べている。

右下の場面でアンリ4世を支えるもう一人の神は、最高神の父で、神々の前の王であった、神サテュルヌス。
サテュルヌスは鎌が目印で、後ろにご覧いただいている場面では、ユピテルの向こうに位置している。

右下の場面では、空に弧をなす帯状の「黄道十二宮」が描かれ、天上の世界を表わす。
「黄道十二宮」は、天の太陽の通り道に並ぶ十二の星座。「牡羊座」・「牡牛座」・「双子座」というアレ。
「黄道」というのが天の太陽の通り道。
後ろの場面にも、下の場面同様、黄道十二宮の一部が描かれて、これが天の世界を示す。
下の場面で、上の方に描かれていた神々が、後ろの場面ではクローズ・アップされている。

では、ここで協議されている婚姻政策の内容が、具体的にはいかなるものであったのか、解説することにしよう。

◆マリー・ド・メディシスの婚姻政策◆

ここから先は

3,251字 / 21画像
この記事のみ ¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?