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#映画感想文『THE MOLE(ザ・モール)』(2020)

マッツ・ブリュガー監督の『THE MOLE(ザ・モール)』を映画館で観てきた。

モールとは、スパイを意味する単語だそうだ。

時間を持て余しているデンマーク人男性が北朝鮮の支援団体に入会し、スパイ活動を行い、北朝鮮による武器売買の秘密までを明らかにしていく、というとんでもない作品だった。この作品に、図らずも登場してしまった北朝鮮の人々が無事かどうかが心配である。

この映画を観て思ったことは「人は暇だと何でもやってのけてしまう」ということだ。

デンマークの北朝鮮支援団体に所属している人たちは、ほとんど無職(失業者)なのだと、映画の中でさらりとではあるが説明があった。おそらく、福祉が手厚いので、日本のような困窮状態には陥らずに済む。その余裕で職業訓練を受けてキャリアアップしていく人もいれば、ある種の活動にのめり込んでいく人たちもいるのだろう。

この作品は、デンマークならでは、ある種の社会的な余裕が生み出した映画なのだが、北朝鮮が武器商人として外貨を稼いでいることがはっきりとわかる。

そして、ISが弱体化した今、武器を売る相手がいないのだと北朝鮮は率直に述べていた。彼らが今、武器を売れるのはアフガニスタンになるだろうか。しかし、アフガニスタンは金融制裁を受けており、北朝鮮から武器を買う余裕はないだろう。

北朝鮮は、戦争の準備をしながら。世界のどこかで戦争が起こるのを待っている。一石二鳥と言えるかもしれない。

そして、スパイ活動をしている人たちの共通語は、英語であった。英語ができなければ、スパイもできやしない。

もうちょっと英語の勉強を頑張ろう、と思った。

重いのはスパイの妻が、夫が元の生活に戻れるのか、家庭が維持をできるのか、と心配している様子であった。刺激を求め続けた先に何があるのか。自分を重要人物、特別な人間だと扱ってくれる北朝鮮の人々との関わりのない人生に彼は耐えられるのだろうか、というところで映画は終わる。

人生には、ある種の目的が必要で、それを達成するために淡々と日常を生きるが必要があるのだと改めて感じた。

007のように暮らすのはドラッグ中毒のようなものだ。

マッツ・ブリュガー監督の前作『誰がハマーショルドを殺したのか』のレビューはこちら

北朝鮮といえば、ライアン・ホワイト監督の『わたしは金正男を殺してない ASSASSINS』がドキュメンタリー映画としては傑作なので、ぜひ観てほしい。

ほかの監督も、ライアン・ホワイトの水準でドキュメンタリーを撮ってほしい、と思うぐらい洗練されている映画です。

そういえば、武器商人に関する映画には『シャドー・ディール』もある。

こちらは米英の悪い政治家がオールスター的な感じで登場する。チェイニーとかラムズフェルドとか、もはや懐かしいよね。

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