杉森共和

学校経営/新設校開設/総合学科/キャリア教育/キャリアコンサルタント/総合的な探究の時…

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学校経営/新設校開設/総合学科/キャリア教育/キャリアコンサルタント/総合的な探究の時間・課題研究・PBL/コンピテンシー/不登校・中退対応/

最近の記事

人生は山登り?筏(いかだ)下り?(進路のことを考え始めた高校生のみなさんへ)

 人生を比喩として譬(たと)えた場合、頂上というゴールに向かってコツコツと歩みを進めていけばいつかはゴールに到達するという「山登り型」でしょうか。それとも、急流を下る筏(いかだ)に乗ってどこに流されていくかわからない「筏下り型」でしょうか。皆さんはどう考えますか。  アメリカの心理学者で意思決定理論のハリィ・ジェラットは「人生は激流を筏で下るようなものだ」と言っていて、キャリアに関わる人たちにとっては「人生は筏下り」が現代の常識となりつつあります。  人は、人生がガラッと変

    • 複数の選択肢から、自分の意志で選択決定し行動する。キャリアの視点から見た自由。

      自由って何でしょう。キャリアの視点からどうしても伝えておきたくて夏休み明けのお話しとして話しました。体育館が工事に入ってしまいましたので、今回は事前に動画撮影しホームルーム教室で視聴しました。動画の際にプレゼンソフトを用いると味気なくなってしまうので、わざと手書きのフリップカードを用意しました。太字のところがフリップです。 今日のテーマは自由です。 みなさん、自由とはどんなことでしょうか。 「一生の間、自由にしてよい」と言われたら何をしますか? 悪いことをするのも自由です

      • 戦争は実際に経験してはいけないものだから、しっかり伝え聞くことが大事

         夏季休業前の集会の時に、生徒のみなさんが平和について考えてほしいと思ってお話をしました。  先日5月に広島サミットが行われました。広島は第二次世界大戦で原子力爆弾を投下され10万人の尊い命が奪われた街です。  原爆の投下は1945年8月6日、午前8時15分のことでした。  私は、この原爆投下から25年後の1970年から広島で過ごしました。爆心地からはやや離れたエリアでしたが、近所には被爆している方がたくさんいました。  隣に住んでいたBさんは、かつてもう少し爆心地に近いと

        • 教員のWell-being

           学校現場の業務は確かに大変です。でも、仕事ってコスパじゃないと思うのです。先生方から「本校は生徒のウェルビーイングについて掲げているが、教員のウェルビーイングについてはどのように考えているのか、校長の私見を伺いたい」と言われたので、先生方向けに少し時間をもらってお話ししました。その時のお話しをまとめました。実際のお話はこの通りではありません。 (1) ウェルビーイングについて  2019年9月にアンドレアス・シュライヒャー氏の講演を聞きに行きました。『教育のワールドク

        人生は山登り?筏(いかだ)下り?(進路のことを考え始めた高校生のみなさんへ)

          「相乗」と「表彰」と「陰徳」と「相良」

          始業式のお話をまとめました。体育館の壇上は入学式の準備ができているのでスクリーンを設置することができません。A3の紙に大きく「相乗」「表彰」「陰徳」「相良」と印刷しました。4枚の紙を壇上の4ヶ所に固定し、逸脱していく話題に応じて場所を移動してお話ししました。 「相良」って何?と思わせれば良しとしましょう。 皆さんこんにちは。 今日使う言葉は4つ「相乗」と「表彰」と「陰徳」と「相良」です。 まず、「相乗」です。 前回のお話しは「シナジー」でした。 人間関係における相乗効果

          「相乗」と「表彰」と「陰徳」と「相良」

          リアルとバーチャル

          修了式で生徒にしたお話です。 プレゼンテーションソフトを使って表示しながらお話ししています。 これはその時の原稿ですが、実際は原稿見ながら話しているわけではないのでこの通りではありません。 ChatGPTに入試の作文問題を書かせた話から、リアルとバーチャルの話になります。 ChatGPT話題ですよね? 知っている人はどのくらいいますか? ChatGPTは、対話型のサービスで、独自の文章を作ることができる人工知能ツールです。 質問に答えてもらうことも、詩や歌、エッセイ、短編小

          リアルとバーチャル

          総合学科だけじゃなく実施してほしい「産業社会と人間」の授業

           総合学科の高校では、「産業社会と人間」という科目が必修になっています。  高等学校学習指導要領は「産業社会と人間」について、次のように定めています。  リアルな体験や体験的な学習を通して、職業と生活のためのコンピテンシーを身に付け、産業と社会の未来を考察し、進路と自己実現のデザインをすることだと言っています。これは、学校の教育活動全体で行われるキャリア教育の学びの内容そのものでもあります。  具体的にはどのような内容なのでしょうか。本校で実施されている「産業社会と人間」の

          総合学科だけじゃなく実施してほしい「産業社会と人間」の授業

          東京都のチャレンジスクールは何がすごいか〈未来の学校をつくる6〉

           日本の教育は世界的にも優れていると言われています。ただし、単なる知識の獲得だけでなく、「総合的な学力」を身に付けることが課題だとされています。未曽有の事態に対応し、不確定な未来を生き抜いていくには、幅広く「総合的な学力」が必要だからです。  近年学校は、ウィルス感染を防ぐため、密集、密接、密閉を避ける工夫をしてきました。クラスの人数を減らして登校させる、通学に時差を設ける、知識はオンラインで学ぶ、先生は学びのまとめ役になるなどの工夫が始まりました。すると、多くの人が、こ

          東京都のチャレンジスクールは何がすごいか〈未来の学校をつくる6〉

          校歌を作ってもらったときの話〈未来の学校をつくる5〉

          本校の校歌の作詞は歌人の俵万智さん、作曲は現代音楽のヲノサトルさんです。 俵さんもヲノさんもちょうど高校生くらいのお子様がいらして、それまでの子育ての様子を作品やネットで表現されていました。お二人とも生活そのものが人間をつくるという「生活陶冶」の感覚をお持ちだと思いました。 新しい学校をつくるにあたって、体験的な学びの中で生きていくための幅広い力を身に付けることが大切だと考えていたので、お二人の教育の感覚とよく一致していると思ったのです。 そこで、「(俵さんの/ヲノさん

          校歌を作ってもらったときの話〈未来の学校をつくる5〉

          価値観についてレベルを上げる

           前回は運がよくなる話でした。チャンスの神様カイロス、セレンディピティ、プランドハプンスタンスセオリーのじじコラボの法則をお話ししました。では幸運とは何か、あるいはさらに幸福とは何か、人によって違いうんじゃないかという話でした。  そこで、今日は価値観の話です。価値観について考え、皆さんのステージを2段階あげます。興味深いお話なのでついてきてくださいね。  なんとか観って言葉ありますね。例えば?  人生観、作品観、世界観とか価値観を表すために「観」を付ける言葉がたくさんあ

          価値観についてレベルを上げる

          運が良くなる話

           冬休み前に生徒の皆さんにお話ししました。毎回プレゼンソフトを使ってお話ししています。生徒はみんな面白そうに訊いてくれましたし、若い先生からも好評でした。ちょっと励みになったかもしれません。    今日は運がよくなる話をします。  新出単語はカイロス、セレンディピティ、プランドハプンスタンスセオリーです。  ではまずカイロスについてお話します。カイロスをご存知の方いますか? ポケモンではありません。ギリシャ神話の時間の神様です。  画像(出典: フリー百科事典『ウィキペディ

          運が良くなる話

          心の健康面の支援はどんな学校でも全てのこどもたちに行うべきユニバーサルなもの〈未来の学校をつくる4〉

          チャレンジスクールは心の健康面の支援が充実しています  チャレンジスクールはもともと不登校の生徒の対応校として誕生した学校です。  ですから、私たちの学校も心の健康面の支援については充実した取り組みをしております。  本校の支援の取り組みは以下の3つで代表されます。(1)まず交流プログラムを実施していること。(2)次に相談の体制や問題解決の体制を充実させていること。(3)最後に心を支える場所や居心地のいい場所があることの3つです。  これからその3つについて、お話ししていき

          心の健康面の支援はどんな学校でも全てのこどもたちに行うべきユニバーサルなもの〈未来の学校をつくる4〉

          不登校はトランジションです。そしてトランジションは体験した方が良い。

           中学生や保護者の前でお話しするときに最近ではよくトランジションのお話しをしています。  最近トランジションについて気づいたことは、トランジションはライフイベントで起こるのではなく、外部の環境の変化でも起こりうるのだということ、つまり激動の現代ではいつどこでトランジションに入るかわからないということです。  そして、青年期というトランジションは子供を大人に変容しますが、現代ではトランジションを経由する度に、人は、子供(α)から大人(β)という1回きりの変容ではなく、αからβ

          不登校はトランジションです。そしてトランジションは体験した方が良い。

          未来の学校をつくる3〈教育活動の裏付けはありますか〉

           今日は新しい学校を作るための教育活動の裏付けについてお話しします。学校づくりのバックヤードツアーのようなお話で、ちょっと小難しいお話ですが、記録として残しておけばもしかすると誰かの役に立つかもしれません。  小台橋高校のセールスポイントは「キャリア教育」「選択科目」「交流プログラム」「課題研究」「ゼミナール制」です、と言っていますがその裏付けとなった調査をご紹介します。  だいぶ前のことになりますが、平成16年3月にアンケート調査をしたことがあります。  当時、お世話に

          未来の学校をつくる3〈教育活動の裏付けはありますか〉

          未来の学校をつくる2〈学校の理念を掲げる〉

           今回は学校の理念についてお話しします。学校の理念を掲げることは、私が開設準備の一番最初に着手したことです。東京都教育委員会による「足立地区チャレンジスクール基本計画検討委員会報告書」がおおもとになっていますが、そこからの変遷はまた日を改めてお話したいと思っています。    私は不登校や中退は、本人の問題のほかに学校というシステムそのものにも課題があると考えます。学校のシステムそのものを改善し、バージョンアップさせていくことが大切です。  その結果、不登校経験者や中退者を支援

          未来の学校をつくる2〈学校の理念を掲げる〉

          未来の学校をつくる1〈チャレンジスクールの誕生〉

           東京都の「チャレンジスクール」は、不登校や中途退学などでこれまでの学校生活では個性や能力等を十分に発揮できなかった生徒でも、安心して存分に学ぶことができる時と場を提供する高等学校です。  最初のチャレンジスクールである東京都立桐ケ丘高等学校は、今から21年前に開校しています。その当時は、長引く不況によってニートやフリーターが社会問題となり、不登校や中途退学がクローズアップされ始めていました。  こんなに不登校の生徒が増えたのは、単に本人の問題だけではなく、学校や社会といった

          未来の学校をつくる1〈チャレンジスクールの誕生〉