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祖母から母へ母から娘へそして、日本へ。

先日、親しい友人から伝統衣装を受け継ぐことになりました。
ピンク色の布で作られたとても美しいチュニジアのドレスです。


彼女のお婆ちゃんからお母さんへ、お母さんから彼女へ。
そして私の手へ。

チュニジア人の家族に代々受け継がれたドレスが、日本人である私の手元にきたのです。


きっかけは、私と一緒に食事をした日のこと。
彼女は急に「あなたに受け取って欲しいものがある」
と言い出しました。

急にどうしたのかと思っていたら、彼女はバッグの中からきれいにたたまれたドレスを出し私の目の前に差し出しました。

「お婆ちゃんの時代からのドレス、受け取って欲しいの…。」

ドレスは見覚えがあるものでした。
彼女が国際親善パーティーのときによく身に着けていた衣装だったからです。


私はとても戸惑いました。
祖母から母へ母から娘へと代々受け継がれた大事なドレスです。
なんの縁もない日本人の私が受け取って本当によいのだろうかと迷ったのです。

どうしてこんなに美しいドレスを自分の手元におかず、手放すのか私は彼女に訊ねました。
そうしたら、

「私や母たちがたしかに存在したという事をあなたに覚えていてほしい」

と返事が帰ってきました。

彼女の目が一瞬潤んだのでそれ以上は聞きませんでした。

彼女の年齢は現在62歳。
祖国で1度、日本で1度結婚生活をしましたが子供はおらず今はシングルになり日本で生活をしています。

衣装に触れたとき、お婆ちゃんからお母さん
お母さんから彼女にと受け継がれ、とても大切にされてきた想いがあるのだろう事を感じました。

もし彼女に娘がいたら衣装と一緒にその想いを娘に受け継ぐ流れになったのではないかな…と思います。

……………

さて、この衣装を受け継いだわたしはこの想いをどういう形で残していったらいいのかな、今はそんな気持ちです。


わたしの生活の中でドレスを着る機会が今の所思いつかないので、もしかしたら衣装自体は着ることはないのかもしれない、と今は思っています。
でも、受け取ったこの“想い”はいつか生かせたらいいな、そう思っています。

そして、私もこの想いをうけつぐべき誰かに出会ったら、このドレスを渡せたらいいな。


なんだか不思議だな人生って、と思います。
チュニジア人の彼女から
日本人の私が伝統のドレスを受け継ぐ。
自分の人生にそんな流れができるなんて思っても見なかったな。

そして、人生って不思議の連続なんだろうな。












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