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子どものいる人生いない人生

自分を縛っているもの、それは社会規範であり世間の目です。

もしくは心の奥底にあるプライドや自尊心、不安感みたいなものが自分の生き方を縛っていて、自由に生きることの何という難易度よ、、

「真っ当な人生」という、今まで生きてきた中で知らぬ間に構築された枠が私を捉える。

不妊治療。


それは費やす費用、時間、心、身体、そのすべてを人生のど真ん中に据えてしても尚、「妊娠」という二文字に辿りつく保証はどこにもない世界。

こういう言葉はあまり使いたくないけれど、最後は神のみぞ知る世界というのがこの世には存在する。

そこに1円もかけずに望まぬ赤ちゃんを授かる人
人生のあらゆる要素を犠牲にして長年治療を続ける人
その末に諦める人

なんという残酷さなのだろう。

1万円の化粧品は1週間悩んだ末に諦めたのに
1万円の治療費はいとも簡単に、まるで手品のように、
財布からスルスルと瞬く間にいなくなる。

タイミング法、
人工授精、
ステップアップするたびに期待は高まり、そして萎む。

果たして体外受精に進む覚悟が私にはあるのだろうか。

「子どもがいない人生を生きる」と決めてしまえば
「子どものいる人生」と引き換えに自分の人生のあらゆる主導権を握れる。

稼いだお金
限りある貴重な時間
情緒的安定
不妊を除けば健康な身体

その全てを未だ見ぬ不確実な未来ではなく目の前の自分自身に託してコントロールできる。

人間って、なんとまあ無いものねだりの生き物なのだろう。

そもそもを辿れば結婚するなんてつい数年前までは想像もしなかった。

夫にはただただ感謝しかない。

何の変哲もない面白みのない私に興味と関心を抱き続けてくれることへの感謝である。

きっと妊娠したら、今度は健康な子であってほしいとか、願わくば夫に似た女の子をなんていう次のとりとめのない欲望に囚われるのだろう。

不妊治療に保険適用が開始されたことはとてつもなく大きい。

その大きさに比例するように、診察室の待ち時間は異様に長い。

清潔な室内は、それでいて闇深き空間である。

待合室で鬱々とした思考に支配されそうになるとき、私は比較対象を変える。

半径10メートルではなく、
世界をメタ認知するよう心掛ける。

以前、Netflixで観た北朝鮮からの脱北者の語る言葉を反芻する。

「You cannot choose your country of birth, but you can choose your life.」

そしてまた、漫画『こち亀』の両さんは語る。

「入試 就職 結婚 みんなギャンブルみたいなもんだろ 
人生すべて博打だぞ!」

秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』第六〇巻

意志や努力次第でどうにか切り抜けられる瞬間は存在する。

だがしかし、そういう道徳的建前を繰り返すのではなく、運が不断に織り込まれたものとしての人生を面白がれる人間になりたい。

この一回限りの人生を
子どもがいてもいなくても
謳歌したい。








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