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子どもゆうびんでひみつの文通をした話。〜図書室のまつい先生へ〜

本は好きだけど、読むのがなかなか苦手なわたしも、
小学生の頃まではそれなりに本を読んでいた。

だから小学生の頃の思い出の中には、
図書室でのエピソードがいくつかある。
今日は「子どもゆうびんきょく」の話をしたい。

「子どもゆうびんきょく」
ご存知だろうか。
今でも学校によってはあるんじゃないかな。たぶん。
記憶が曖昧なのだけれど、
「ゆうびん係」なるものを生徒の中から募って、
小学校手作りの郵便ポストと郵便はがきが校内各所に置かれた。
疑似お仕事体験のようなこのイベントはとても人気だった気がする。

子どもたちは、違うクラスのお友だちや、
仲良くしてくれている高学年のお姉さんお兄さんなどに宛てて、
思い思いにえんぴつを走らせた。

「今日はだれからはがきがとどくかな。」
みんな毎日どきどきわくわくしていた。

わたしもこの手のイベントごとは大好きだった。
たわいもない内容も、はがきにすると
なんだか特別な気持ちがしていた。

もちろんわたしも、きっといくつかはがきを出したし、もらったりしていた。大人になった今となっては、どんな内容だったのか思い出せない。
けれど、唯一ずっと忘れられない一枚がある。

小学校2年生のわたしは、その頃「手話」に夢中だった。
異国のことばを一つ話せるようになったような、
特殊な暗号を解読できるようになったような、
そんな感覚が、わたしの目を輝かせていた。

自由課題の発表の場で、手話のイラストクイズをして、
誰にも手を挙げてもらえなかった苦い記憶も、
今ではかわいらしい思い出だ。

わたしの手話の先生は、学校の図書室の本だった。
何冊も借りて、たくさんの手話を覚えた。
小学校低学年で手話に興味を持っていたのが珍しかったのか、
図書室の先生が一緒に覚えてくれるようになった。
先生に覚えた手話を披露して、喜んでくれるのが嬉しかったのを覚えてる。この出来事をきっかけに、わたしは図書室の先生が大好きになった。

だから、子どもゆうびんの時も、
先生に宛てて、とっておきのはがきを描いた。
大好きな先生の絵を描いた。

先生は喜んでくれるだろうか。お返事をくれるだろうか。
どきどきしながら一生懸命描いた。

お返事はすぐに届いた。
大好きだったその先生は、
さすがわたしのことをよくわかっていたなと思う。

手話を混ぜた暗号で書かれた、愛情たっぷりのはがきをくれた。

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すみれが咲きました。
もう春ですね。はがきをありがとう。
うれしいです。絵をもらって幸せです。
◯◯さんは手話を熱心に覚えていましたね。すばらしいです!
応援しています。

今でも大事に大事にしまっている。
宝物だ。
誰かに褒めてもらえることは、こんなにも嬉しいものかと、
学びの楽しさを教えてくれた。


まつい先生へ
お元気ですか?
あれから19年、もうすぐ26歳になる。
わたしは元気にやっています。


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