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私の人生を変えた一冊

今でこそ、息をするように読書をする私だが、生まれた時からそうだったわけではない。

実は幼少期、私はそれほど読書が好きではなかった。好きではなかったというより、特段興味を抱かなかった。ゲームやテレビ番組、漫画本など、読書よりも魅力的に思える娯楽があまりに多かった。


私が本格的に本を読み出したのは、大学生になってからだ。「趣味は読書です」と言えるくらいに本を読むようになったのは、この頃だ。

大学1年生で読書の世界に足を踏み入れて以来、私は常に積読を数十冊以上抱える債務者となった。そんな借金生活も、思い返してみれば、全てはあの一冊の本から始まったのだ。


ある1冊のミステリ小説によって、私は読書の底なし沼に両足を突っ込み、顔だけ出して、辛うじて呼吸するだけの生活を送ることになった。そのミステリとは、綾辻行人さんの『十角館の殺人』だ。

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける! 87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

あらすじ


『十角館の殺人』を初めて読んだのは大学生1年生の時だが、実は私が小学生の時から既に、『十角館の殺人』は我が家に存在していた。

もともとは母親が買って一読した後、長い間本棚の片隅で眠っていた本だった。漫画本ばかり読んでいた幼い頃の私は、分厚い文庫本である『十角館の殺人』が、全く視界に入っていなかったに違いない。


大学まで電車で片道2時間という、途方もない通学時間もとい退屈を手にした私は、電車の中で本を読み始めた。初めはほんの暇潰しのつもりだった。

そして、面白い本を求めて家の本棚を物色する中で、私は出会ってしまうのである。運命の邂逅は、突然に訪れる。


あの日、電車の中で読んだ『十角館の殺人』の衝撃と感動を、私は一生忘れないだろう。

それは、本格ミステリとの出会いであり、読書との出会いであった。私の人生に読書が入り込み、大部分を占領し、生活が一変する契機となったのが、あの日の『十角館の殺人』だった。まさに、私の人生を変えた一冊だったのだ。


『十角館の殺人』を読んで以来、まずは綾辻さんの「館シリーズ」を飛ぶような速さで読み、続いて有栖川有栖さんの「学生アリスシリーズ」、島田荘司さんの「御手洗潔シリーズ」など、王道本格ミステリを読み漁った。

私の大学時代の前半は、ほとんどミステリとともにあったと言っても過言ではない。現在、ミステリを読む比率はかなり減ってしまったが、それでもあの時味わったミステリの面白さや興奮は、私の読書の原体験として、強く記憶に焼き付いている。


皆さんにもきっと、人生を変えた一冊というものがあるのではないか。

この世に存在する読書好きの数だけ、一冊の本が人生を変える物語が存在するはずだ。そんな物語を、読書好きの人たちと夜通し語り合えたら、きっと楽しいだろうと思う。



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