小説は、こんなにも面白い!|今月のむささび選書
みなさん、こんにちは。
むささびです。
7月も、たくさんの素敵な作品と出会いました。
今回はその中でも、特に印象に残った作品たちをご紹介します。
少しでも皆さんの選書の参考になれば嬉しいです!
起きるはずがない連続殺人が起きた理由とは?
まずは、斜線堂有紀さんの『楽園とは探偵の不在なり』です。
第21回本格ミステリ大賞(小説部門)の候補作にもなった、「特殊設定もの」の本格ミステリー作品です。
著者の斜線堂有紀さんは、もともとライト文芸の分野で活躍されていた方ですが、この作品で本格ミステリーの世界に大きなインパクトを与えました。
「2人以上の人間を殺したら天使に連れ去られる」という滅茶苦茶な設定がひとつあるだけで、こんなにも新しいミステリーが出来上がるのかと驚きました。
読む前から「天使が事件に何かしら絡んでくるんでしょ…?」とは思っていましたが、予想外の場面で登場してきたりして、「そうきたか!」と思わず唸ることもありました。
しかし個人的には、この作品の最大の魅力は「青岸探偵事務所」の存在だと思います。
そもそも、本格ミステリーでメンバーがたくさんいる探偵事務所が登場するのって、珍しくないですか?(私が知らないだけかもしれませんが……)
魅力あふれる探偵事務所メンバーたちの存在が、この作品に深みを持たせてくれているように感じました。彼らの活躍がもっと見たかったです。
あの日、あの瞬間——人生の分岐点をめぐる物語
お次は、佐藤正午さんの『Y』です。
むささびが絶賛ドハマり中で、「小説の名人」とも称される佐藤正午さんの長編小説です。
この作品も、「特殊設定」が主軸の作品ですね。今月はSF要素が盛り込まれた小説が自分の中でブームになっていたようです。
佐藤正午さんといえば、何とも癖になる語り口と、奇想天外でありながら緻密に作り込まれた筋書きが魅力。
この作品も例外ではなく、冒頭の「プロローグ」の語り口から、グッと物語の中に引き込まれました。
物語は、主人公・秋間視点での「現実世界」と、フロッピーに入っていた北川視点での「物語世界」の2つが並行して進んでいきます。
フロッピーのパートを読み進めるにつれて様々な事実が明らかになり、初めは半信半疑だった秋間が徐々に突き動かされるように行動していく展開が良かったです。
そして、これでよかったのだろうかと考えさせられるような、絶妙なラスト。ぜひ読んでみてほしいです。
華麗な妙技!見え方が180度変わる、騙し絵のような作品
最後は、伊坂幸太郎さんの『ラッシュライフ』です。
言わずと知れた、伊坂幸太郎さん初期の傑作。『重力ピエロ』と並び、伊坂さんの名前を世に知らしめた作品だと思います。
私は伊坂さんの作品を既に全部読んでいて、こちらの作品は再読でした。
それでも今月のトップ3に入ってしまうほど、文句なしに面白い作品です。
伊坂さんと言えば、各話が巧妙に交錯する、緻密に計算された群像劇。
この作品も、一見関わりの薄い4つの物語が、いつの間にやら繋がってひとつの物語が完成します。そしてその完成した物語は、読者の予想を超える形で現れてくるのです。
最初と最後で世界の見え方がガラリと変わる、まさに騙し絵のような小説です。
実はこの『ラッシュライフ』、私が伊坂さんに初めて出会った作品でもあります。
当時の衝撃は、今でも忘れられません。「小説は、こんなにも面白いのか!」と、小説が持っている可能性の、無限の広がりを感じました。
まだこちらの作品を読んだことがない人は、ぜひ1シーン1シーン目を凝らして読んでください。全てが伏線です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
むささびでした!
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