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今日も、読書。 |小学生の私は、際限なく文章を書いていた

2021.12.5 Sun

池袋の梟書茶房という喫茶店へ行く。

お目当ては「ふくろう文庫」。著者名やタイトルが伏せられ、ジャンルやおすすめポイントのみが書かれた状態で、本が売られている。

開けてみるまで、それがどんな本なのか分からないのだ。普段は手に取らない、新しい本との出会いを楽しむことができる。

作品ごとにナンバリングがされていて、手に取った本がもし気に入ったら、カバーに記された作品番号を辿っていけば、それと近しい作品に出会える。

最近こういう、開けてみるまで中身が分からない福袋的な選書サービスにハマっている。Chapters書店もそうだった。これは依存性のあるサービスだ。梟書茶房には、定期的に通うことになるだろう。

こういう選書サービスは、享受する側はもちろん楽しいが、選書する側にも憧れがある。選書を通じて、自分の読書経験が、他の人に新たな本との出会いをもたらすこと。それはとても名誉なことだと思う。いつかそういう、人と本とを繋ぐような活動ができたらいい。

さて読書はというと、『坂の上の雲』をついに読み終える。1巻を読み始めてからどれほど経っただろうか。

日本海海戦が(陸軍の戦闘に比べると)あっさりと終結し、日露戦争が幕を閉じた。最後の、東郷と捕虜となったロジェストヴェンスキーのやり取りには、胸が熱くなった。国家間の争いである戦争も、細部を見れば人と人との交わりであり、そこにあるのは必ずしも、敵対や憎悪の感情だけではなかったのだと思う。



2021.12.6 Mon

160日目。
自分が今、本当にしたいことは何かと考えた時、それは小説を書くことだった。

小説を書くことは大学時代から持ち続けている夢で、持ち続けているだけで一向に叶う気配のない夢だった。叶う気配がない理由は明らかで、私が小説を書かないからだった。書かなければ、小説は書かれない。

あれだけ時間があり余っていて、部屋で芋虫のように丸まってばかりいた大学時代に、結局小説は書かれなかった。そんな私が今、社会人1年目、少しだけ動き出している。

小説を書くことは、私にとって何事にも優先すべきことだ。そうと分かっていながら、どういうわけか私は、気を抜くと違うことにばかり時間を割いている。SNSやYouTubeなど、優先順位が低いことを、優先して行うという可笑しな状況だ。小説は遅々として書かれない。これはどういうわけなのか、と自分を問い詰めても、よく分からない。

仕事があることはいい。平日に仕事があることは、予め考慮しておくべき前提条件であり、仕事があるから小説が書けないという言い訳は成立しない。

問題は、仕事が終わった後や休日の時間を、いかにうまく使うかだ。きっちりとした時間管理は必要ないと思う。ただ、自分が本当にやりたいことに、その日最も多くの時間を使えていましたか?ということなのだ。

では、この読書日記はどうなのだろう……と考えるが、一応自分なりの文章をこの世に生み出す行為であるから、小説ではないにしても、優先的に続けていきたい。今は読むに耐えない駄文の堆積となっているが、いつか名文が生まれるような土壌に育つかもしれない。

注意すべきは小説を書く時間やエネルギーを確保することで、そのあたりのバランスを考えながら、日記も継続していきたい。



2021.12.7 Tue

161日目。
小野不由美さんの「十二国記シリーズ」を読んでいる。かれこれ2年近くかけて、読んでいる。

第1作目の『月の影 影の海』を読んだときは、まだ大学生だった。ぽつぽつと、ゆっくり時間をかけて読み進め、ようやく『白銀の墟 玄の月』にたどり着いた。十二国記の世界を、時々思い出したように、旅している。

『黄昏の岸 暁の天』から『魔性の子』の流れが本当に良くて、十二国記すごい、と打ちのめされて、余韻に浸っているうちに、また数カ月が経っていた。『白銀の墟 玄の月』も私が好きな戴国の物語で、『黄昏の岸 暁の天』と『魔性の子』の続きとなる物語で、興奮が止まらない。

問題は、最近残業が目に見えて増えてきていることで、これは自分の仕事の進め方に原因があるのだが、読書の時間が減少傾向にあるのはよろしくない。



2021.12.8 Wed

162日目。
島田虎之介さんの『ロボ・サピエンス前史』という漫画を読む。

極限までシンプルな、独特の線描。人類とロボットの、数十万年単位の壮大な未来図。淡々と展開されていく不思議な物語は、私の理解を悠々と超えて、やがて読み手の心に問題を提起して静かに決着する。

こういう漫画は初めてで、今まで週刊少年ジャンプの王道漫画ばかり読んできた私は、とても新鮮に感動した。何より絵が好きだった。ひとコマひとコマ、非常に緻密に描き込まれていて飽きない。背景に図表化された文字が描き込まれていて、その表現に未来的な先進性が感じられて、何より可愛くて好きだった。

noteの記事を、最近この読書日記以外書けていなくて、本棚を紹介する記事などは書いていて楽しかったので、また書きたいと思う。



2021.12.9 Thu

163日目。
村上春樹さんの『蛍・納家を焼く・その他の短編』を読む。2021年の新潮文庫プレミアムカバーに選ばれていた、短編小説集。

村上春樹さんは、ひとまず長編を全て読んでみたいと思っていて、『ねじまき鳥クロニクル』の第1巻だけが今手元になくて、そのせいで久しく村上作品を摂取できていなかった。これまでのところ村上春樹さんの短編は、長編作品ほど楽しめてはいないが、そういえば夏の文庫フェアで『蛍・納家を焼く・その他の短編』を買っていたな、と思い出し、読み始めた。

「蛍」、すごく良かった。もしかすると、普通の恋人同士よりも純粋な愛の形が描かれていた。表題でもある"蛍"のメタファーが印象的で、最後の一文がもたらす静謐な読後感が良かった。

「納屋を焼く」を今は読み進めていて、いったい誰がどう納屋を焼くのだろう、と楽しみだ。"音楽"が小説に良いアクセントを加えていると感じ、色々なレコードが登場して楽しい。



2021.12.10 Fri

164日目。
文章を書くことは小さい頃から好きで、夏休みの宿題の絵日記は毎日楽しく書いていた、と言いたいところだが、私の小学校には絵日記の宿題がなかった。

代わりに、いくつかある写真の中から好きなものを1枚選んで、そこから連想される短い物語を書くという授業があった。夢のような授業だ、全部それで良かった。未だにこの授業で書いた物語のことはよく覚えていて、私が選んだのは、船頭のコスプレをした猫が船に乗っている写真だった。

9匹くらいの個性豊かな猫たちが乗る海賊船が、魔の海域で過去にタイムスリップしていまうという、冒険SF小説を書いた。選んだ写真の猫は1匹だったし、船は海賊船ではなかったし、浮かんでいるのもたぶん海ではなく川だった。しかし私の頭の中では、写真とかけ離れた物語が展開された。そして、9匹もの猫が登場したり、現在編から時を超えて過去編が始まったりすることからご察しの通り、私の物語はものすごく長くなった。

本来は原稿用紙数枚程度の短編小説を書くところを、私だけ提出期限を過ぎても家で書き続け(もちろん怒られた)、具体的な原稿用紙の枚数は忘れてしまったが、あの大きくていかついホチキスでも留められないくらいの厚さになった。仕方がないので、私だけ紐を通して製本した。

本来であればクラスのみんなで感想を言い合うのだが、私が書き終えたときには既に授業が終わっていたので、読者は先生ただひとりだけだった(先生ですらすべて読んでくれたか定かではない)。

筋書きもかなり詳細に覚えているが、ここでは割愛させていただく。当時読んでどハマりしていた、川口雅幸さんの『からくり夢時計』に、多大な影響を受けていた。

今思えば、よく途中で投げ出さず、完結するまで書き続けたものだと思う。歳を取って実感することだが、何か創作物を完成させることには、膨大なエネルギーが必要だ。書き始めの頃は楽しいのだが、すぐに小さな壁にぶつかり、そしてその壁の向こうに、長い長い道が続いていることに気づいて足がすくむ。完成なんて夢のまた夢、永遠にたどり着くことなどできないように思える。かつての私は、おそらく完成なんて一切意識することなく、ただ自分が書きたいことを、思いつくままに書いていただけだった。

そういう観点で言えばこの読書日記は、自分が書きたいことを好きなように書き連ね、完成形など一切考慮していないという意味で、まだ小学生だった私の、あの時の創作活動と似ていると思う。



2021.12.11 Sat

冬のボーナスを引っ提げて、いざBOOKOFFへ。金額を一切気にすることなく、本を買う。最高の贅沢。人間としての尊厳の回復。

明日は人生初の読書会を控えていて、今日はそこで紹介予定の本を読んでいた。内田洋子さんの『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』だった。要所に付箋を貼り、メモを取りながら丁寧に読書した。

丁寧な読書も良いな、と思った。どちらかと言えば乱読する方なので、丁寧に本を読んだ時のじんわりとした心の動きや、ふとした瞬間にはっと気づく文章への感動など、様々な発見があった。

今は、谷川俊太郎さんの『朝のかたち 谷川俊太郎詩集Ⅱ』を読んでいる。これまで全く触れてこなかった"詩"に、最近少しずつ挑戦している。まだ詩の読み方がよく分かっておらず、眼球を文章が滑っていくような勿体ない感じがあるが、言葉の並びや音感を、なるべく頭を空っぽにして読んでいる。

言葉の海を泳ぎ、夜はふけていく。



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