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イタリア旅。 |トスカーナをめぐる冒険 〜ピサ・フィレンツェ編〜
久しぶりの「イタリア旅。」、今回の旅先は、イタリア中部のトスカーナ州。
秋にピサ、冬にフィレンツェを訪れた時に撮った写真を眺めながら、イタリアの街並みの美しさについて、想いを馳せたい。
大学時代、イタリアで暮らしていたとき、私は肌身離さずに一眼レフを持ち歩き、ひたすら写真を撮っていた。
日本を出発する直前に、「美しいイタリアの街並みを撮るのに、良いカメラじゃないと勿体無い!」と思い立ち、勢いでCanonのEOS Kiss X9を購入したのだ。
その後、残念ながら手放してしまったが、当時は少しでも琴線に触れるものがあれば、躊躇なくシャッターを切るほどに、一眼レフにハマっていた。
撮影の技術を磨くわけでもなく、素人写真を量産するのみだったが、それでも当時の写真を振り返ってみると、なんとも言えない良さがあるから不思議だ。
当時は最新機種だった一眼レフの性能と、美しすぎるイタリアの街のポテンシャルに助けられて、どんなに適当に撮っても、それなりの写真になったのだ。
そんな写真たちを眺めながら、イタリアで生活していた頃のことを、のんびり回想しようと思う。お時間があれば、お付き合いください。
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ピサを旅する。
奇跡の広場、奇跡の斜塔
さて、「ピサ」と聞いて誰もが真っ先に思い浮かべるのは、かの有名な「ピサの斜塔」だろう。
1372年に完成したピサの斜塔。高さは約56m、傾斜角度は約4°の鐘楼塔で、建設の最中に地盤の沈下が生じ、傾いてしまったのだそう。
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実際に目の当たりにすると、想像以上にちゃんと傾いていて、「なんだ、ちゃんと斜塔してるじゃん」と謎に感心してしまった。
大地震など、これまで幾多の苦難を乗り越えてなお、傾いたままで立ち続けるピサの斜塔。貫禄がある。
風の噂で上に登れると耳にしたが、高所恐怖症の私は華麗に聞き流した。こんなに傾いているのに、上に登れるわけがない……。
ピサの斜塔といえば、イタリア随一のフォトスポットといっても過言ではない。
観光客は斜塔を題材に、遠近法を利用して、様々な工夫を凝らした写真を撮る。傾く斜塔を支えるようにしてみるか、はたまた斜塔と一緒に傾いてみるか、それはあなた次第だ。
一緒に訪れた友人が、「ピサの斜塔とどうやって写真を撮るかで、その人のパーソナリティが分かる」という、驚きの性格診断を発表していた。
私は、斜塔に寄りかかるようにして「人」という字を作る写真を撮ったのだが、友人には「金八先生」と診断された。なんだそれは。
そんなピサの斜塔が建っているのは、1987年に世界遺産に登録され、「奇跡の広場」とも称されるドゥオーモ広場。
この広場には、大聖堂、洗礼堂、カンポサントなど、ピサが誇る観光名所が結集している。小さいながらも、美しく洗練された景観を持つ、非常に素敵な場所だ。
何より、主要な名所が一箇所に集まってくれているのが嬉しい。イタリアの街の悪路を歩き回らなくても、お手軽に観光ができてしまうのだ。
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手前が大聖堂、奥が洗礼堂。ロマネスク建築という古い様式が用いられているそうで、繊細かつ堂々とした美しさを感じる。
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大聖堂のファサード。細かなエンタシスが4層に連なっており、荘厳ながら抜け感も感じられて好印象。
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写真だとコンパクトに見えるが、なかなか立派な洗礼堂。こちらも中段にエンタシスの層があって面白い。
友人が「カップケーキみたい」と発言してから、ホイップクリームを塗ったカップケーキにしか見えなくなったので、私は許さない。
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ピサ駅からドゥオーモ広場への道中。観光客向けのお土産の他、骨董品を販売しているお店も多く見られ、ウィンドウショッピングも楽しめそう。
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ランチは、チェアとカトラリーがカラフルで可愛いリストランテで、「ピチ」というトスカーナ伝統のパスタを食べた。
ピチは、手で生地を伸ばして作る太麺のパスタで、ホワイトラグーソースとあわせて食べた。これがあまりに美味しすぎて、後日自宅で、同じレシピのパスタを作ったことを覚えている。
フィレンツェを旅する。
夕焼けのヴェッキオ橋に走れ
私がイタリアに留学していたとき、大学の同期たちが、同時期にイタリア各地の大学に留学していた。
留学生活にも慣れてきた冬のある日、イタリア中に散らばる同期たちが一堂に会する機会があり、集合場所として選ばれたのがフィレンツェだった。理由は、真ん中にあるから。
ということで、観光目的ではなかったものの、兎にも角にも、フィレンツェを訪れたときの記録だ。
フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅に、集合時間よりもかなり早く降り立った私は(ボローニャからフィレンツェはすごく近いのだ)、ドゥオーモ周辺エリアをぶらぶら街撮りすることにした。
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”花の都”フィレンツェの顔、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂。圧倒的な存在感だ。
テラコッタとターコイズブルーの色合わせが、なんともお洒落。内部も荘厳で素晴らしい。
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ドゥオーモのすぐ近くにある、サン・ジョヴァンニ洗礼堂。真っ白な外観が眩しい。
こんなに角張っているのに、やっぱりカップケーキに見えてしまう。友人にはなんとしても責任を取ってもらわなければならない。
集合時間になるまで、ひたすら街を撮る。
途中、背負っていたナップザックの中身をスられそうになったが、高速で後ろを振り返るという高等技術で、なんとか撃退した。
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アルノ川に向かってフィレンツェを南下し、私がフィレンツェで一番好きな場所、ヴェッキオ橋へ。
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観光客で溢れかえるシニョリーア広場を素通りし、巨大なウッフィツィ美術館には目もくれず、一直線にヴェッキオ橋を目指す。
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ヴェッキオ橋に到着。
その名の通り、フィレンツェで最も古い橋で(「ヴェッキオ」はイタリア語で「古い」という意味)、現在橋の上には多くの宝石店が立ち並んでいる。
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横から見ると、橋側面の建築が所々出っ張っている。橋の上に住居を構える、かつての習慣の名残が見られて面白い。
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集合時間になり、同期たちとランチしながら談笑。
日本の大学で毎日のように顔を合わせていた同期と、遠く離れたイタリアの地で再会している状況を、心から嬉しく思った。
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この日食べたのは、「パルミジャーナ・ディ・メランザーネ」というイタリアの家庭料理(長いので、単に「パルミジャーナ」と呼ぶこともある)。
薄く切ったナスとトマトソース、チーズを重ねて層を作り、オーブンで焼いた料理だ。こんなの、美味しくないわけがない。
ランチを食べた後は、ドゥオーモが見える広場の段差に座り、みんなで当時流行っていた「人狼ゲーム」で遊んだ。せっかくフィレンツェにいたのに、やることが日本と同じすぎ……。
アペリティーボでドリンクを飲んでいたら、日が暮れてきた。
突如として、私の頭の中に「これは……!」という天啓が降りてきた。同期への説明もそこそこに、夕焼けのヴェッキオ橋を目指して走る。
私が最もお勧めするフィレンツェの絶景。それは、ヴェッキオ橋と夕陽をセットで眺めることができる、グラッツィエ橋からの景色だ。
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夕焼けに溶けゆくヴェッキオ橋。息を呑むような絶景だった。
橋の上でじっと待ち、空の色が徐々に変化していくのを、ただぼんやりと眺めていた。
あの時、突然中座した私に付き合って、一緒にヴェッキオ橋へと走ってくれたO君。
ふたり並んで橋の欄干にもたれかかり、ひたすら陽が沈むのを眺めていたあの時間を、私は忘れない。本当にありがとう。
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