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屋久島旅。 |登山初心者の10時間トレッキングと、全てをわかっている縄文杉 〜前編〜

長い間、「生涯で行きたい場所リスト」の最上位に君臨していた、屋久島

このたび、ついに屋久島を訪れることができた。今回はその感動について書きたい。


屋久島でやりたいことはひとつ。

樹齢7000年以上とも言われる、「縄文杉」をこの目で見ること。


樹齢7000年って、すごくないですか? 人類の西暦の3倍以上の年月、途方もなさすぎて想像がつかない。

これまで屋久島に行きたくても行けなかったのは、縄文杉にたどり着くまでの道のりが、10時間にも及ぶトレッキングであることが原因だった。

私は高校卒業と同時にあらゆる運動から引退した身なので、長時間のトレッキングに耐えられる自信が全くなかったのだ。


今回、高校時代の友人に誘われ、とうとう屋久島旅に踏み切ることができた。

若くて元気なうちに行かないと、いつかトレッキングが身体的に不可能になる時が来て、後悔することになるかもしれない。

ちょうどビル・パーキンスさんの『DIE WITH ZERO』を読んでそういう思考になっていた私は、誘いに乗る決意をした。

『DIE WITH ZERO』、良書でした。


前編となる今回は、何よりも拝みたかった縄文杉のことと、屋久島で宿泊した宿のことについて書く。

後編では、白谷雲水峡や太鼓岩を訪れたことについて書こうと思うので、そちらもお楽しみに。



屋久島旅。 〜前編〜


10時間におよぶ試練を超えて

羽田空港から鹿児島空港へと空の旅、そこから高速船に乗り換えて、憧れの屋久島までやって来た。


私は高校卒業以来、運動らしい運動をしていない。旅のお目当てである縄文杉を拝むためには、高低差約700mの山道を、およそ10時間かけて登っていく必要がある。

……と事前に知っていながら、結局何の準備もしなかった運動不足男が、ついに屋久島の地に降り立った。


さて、縄文杉トレッキングコースの玄関口、荒川登山口に到着。

年中雨の多い屋久島、心配していた天気も、この日は良好。

時折日差しも差し込むくらいのちょうど良い気候で、トロッコ道をすいすいと進んでいく。

トロッコ道の段階で、既に森の木々や岩は青々とした苔に覆われ、「これぞ屋久島……!」という美しい景観が楽しめた。心が躍る。


……と油断していたら、トロッコ道が終わる大株歩道入口を境に、突如として本格的な登山が始まる。

それまでのトロッコ道はあくまで前哨戦、ここからが本当の戦いだとばかりに、急勾配の階段が続く。運動不足がたたり、ふくらはぎは一瞬でパンパンになり、すぐに息も切れる。

しかしそれでも、なぜか自然と足は進む。まるでこの先に待ち受ける縄文杉に引き寄せられるかのように、身体の疲労は実感しつつも、歩みが止まることはなかった。


運動不足かつ登山初心者の私が、なぜ10時間トレッキングという試練を乗り越えることができたのだろう。

考えるに、それは山道の景色が良すぎるからだと思う。

屋久島の山道は、本当に、どこを切り取っても絵になる。何気なく視線を上げた風景が、意図せずシャッターを切った一枚が、奇跡のような美しさを備えている。

どんなに辛い山登りでも、景観が素晴らしいと辛さを感じない。そのことを強く実感した。

例えば、これが植物ひとつない荒地の山道だったら、私はものの10分で根を上げていただろう。……ていうかそんなの、普通に平坦な道でも嫌だ。


ここでちょっと休憩、縄文杉トレッキングコースの見どころ紹介。

中腹にあるウィルソン株という切り株は、根回り約32mにも及ぶ巨大な杉の木で、空洞になっているため中に入ることができる。

かつて豊臣秀吉の命で切り落とされたと言われるこの株は、アメリカの植物学者ウィルソン博士によって再発見され、その名がついたそう。

内側から眺める杉の木は、何千年にも及ぶ歴史の重みを感じさせるような迫力で、人智を超えた自然のうねりを楽しめる。

そして、内部のとある場所から空を見上げると、切り株の上部がハートマークに見えることでも有名。ここまでの疲れも癒やされる、おすすめの撮影スポットである。



全てをわかっている縄文杉

縄文杉までの道中、「大王杉」「夫婦杉」など、疲れた頭だと「もしかしてこれが縄文杉?」と思ってしまうような、見応えのある杉がたくさん登場する。

大王杉
夫婦杉

ていうか、そこら辺に生えている、名もなき杉たちでも十分すごい。

縄文杉に近づくにつれて株の規模が大きくなっていき、生命力に圧倒される。

果たして、これら全ての杉を統べる縄文杉先輩は、どれだけすごいのか……! 知らず知らずのうちに、期待が高まっていく。


山深く、そろそろ登山も終盤に差し掛かろうかというところで、突然霧が立ち込めてきた。

なにこのラスボス演出……!!

まるで縄文杉に近づく者たちの行手を阻むかのように、深い霧が足元を覆い隠す。足を滑らせないように慎重を期して、険しい岩道を進んでいく。

しかし、濃霧に包まれた屋久島の景観は、神秘的で素晴らしかった。さすが屋久島、最後のまで我々登山者を盛り上げてくれる。


そしてついに、念願の縄文杉とご対面!!

……霧に包まれていてよく見えない。濃霧の向こう、うっすらとではあるが、縄文杉らしき存在を確認できる。

まさかそんな……せっかく何時間もかけてここまで登って来たのに、縄文杉を薄ぼんやりとしたシルエットでしか拝むことができないなんて。肩を落としかけていた、その時。


縄文杉

縄文杉を包み込んでいた霧が立ち所に晴れ、ついにその全貌が姿を現した!

私を含め、周りの登山客から思わず「おお〜…!」という感嘆の声が漏れる。さすが縄文杉先輩、7000年も生きてきただけあって、人間が喜ぶ演出を全てわかっていらっしゃる。

明らかに他の杉とは一味違う、どこか神々しさを感じさせる佇まい。人類の歴史なんて本当にちっぽけで、地球という星が命を宿しているのだということを、肌で感じた。

10時間かけてここまで登ってきて、本当に良かった。縄文杉は、やはり偉大な存在でした。


……なお、その後に地獄の下山が待っていることは言うまでもなく。宿に帰るまでがトレッキングです。



屋久島の宿は前岳荘しか勝たん

屋久島を楽しみ尽くすなら、最低でも2日、できれば3日は島に滞在したいところ。

島内に宿泊するなら、前岳荘を心からおすすめさせていただく。


一番の魅力は、食事が美味しすぎること。

トビウオの定食、しゃぶしゃぶ、焼肉……と、トレッキングで疲労困憊の宿泊者を生き返らせる、美味しい夕食を振る舞ってくれる。


なのに、安すぎる

ハイシーズンのゴールデンウィークに泊まったのに、3泊でなんと約18,000円(6名で宿泊)。

これだけ豪華な食事付きで、なぜこのお値段で宿泊できるのか——? 謎は深まるばかりである。


トレッキングに行く際は、道中で食べられるようにお弁当を持たせてくれるし、トレッキング用具の貸し出しもしてくれる。

さらに、大人数でも宿泊できるログハウスあり、お湯の温度がかなり熱めの大浴場もあり。

私が今回の屋久島旅を楽しめたのは、間違いなく前岳荘さんのおかげだった。ありがとうございました!



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