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本が好き、その想いだけで書く文章たち。
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#わたしの本棚

これから太宰治を読みたい人へ 〜「太宰治全部読む」を終えて〜

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。 太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。 前回の『地図 初期作品集』をもって、これまで約1年半にわたり続けてきた「太宰治全部読む」が、めでたく最終回を迎えた。 今回は、企画の締めくくりとして、これまでの「太宰治全部読む」の取り組みを総括してみたい。 太宰作品をひたすら読み続けた結果、私は何を思ったのか。 そして、せっかく太宰作品をたくさん読んできたので、これから太宰治を読みたい人に向け

すっかり熟成した”積読候補本”たちを供養しよう #うちの積読を紹介する

面白そうなお題を見つけたので、急遽noteを書くことにした。 「#うちの積読を紹介する」は、読んだ本ではなくて、まだ読んでいない本、これから読もうと思っている本を紹介するところに、いつもと違う面白さがある。 昨年ひとり暮らしを始めたタイミングで、実家にあった本を少しだけ新居に持ってきてはいるが、ほとんどは手放すか、実家に置いてきてしまった。 加えて最近は、図書館を頻繁に利用している(ひとり暮らしの出費スゴい……)。そのため、今新居にある積読本は、実はかなり少ない。 そ

読書は、”知の冒険”。 〜孫泰蔵『冒険の書』を読む

『冒険の書』と聞くと、「ドラゴンクエスト」というRPGゲームを思い浮かべてしまうのは、ゲーム好きの幼少期を過ごした者の習性である。 幼い頃の私にとって、「ドラゴンクエスト8」は、間違いなく革命だった。同世代の方は、きっと頷かれていると思う。 ドラクエ8は、それまでのナンバリング作品に比べ、「冒険している感」が段違いだった。3次元的にどこまでも広がる、大地、海原、そして青空。 今でこそ、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」に代表されるオープンワールドゲームは一般的になっ

森見登美彦『四畳半神話大系』の好きな台詞選手権!

先日、高校時代の友人と森見登美彦氏の『四畳半神話大系』の読書会をした。 徹底して硬派で知的な文体、なのに内容はくだらなくて馬鹿馬鹿しい。この絶妙な”ズレ感”が癖になり、すっかり森見ワールドに取り憑かれてしまった。 ということで、勝手に『四畳半神話大系』好きな台詞選手権を開催! このnoteをお読みの皆さんにも、森見ワールドの一端を体感いただきたい。 まずは冒頭の名文から。 森見登美彦作品の魅力のひとつに、「キレッキレの冒頭」が挙げられる。開幕からエンジン全開の森見節

ずっと心に残っている短編たち 〜第三弾〜

私の心の中に、ずっと残っている短編がある。 読んだときの感動や衝撃が忘れられなくて、今でも鮮やかに思い出すことのできる短編たち。 以前、前後編に分けてお届けした、「ずっと心に残っている短編たち」のnote。 全部で6つの短編を取り上げ、完結したかに思えた本シリーズだったが、その後も素晴らしい短編に出会ったり、思い出したりした。 そこで今回は”第三弾”として、珠玉の短編をさらに3編ご紹介する。多分このシリーズは、これからも続いていくことになるだろう。 それぞれどんな短

【2023年版】夏の文庫フェア購入本紹介

今年も、この季節がやってきた。 「夏は、文庫フェア!!」(あとポケモン) 読書好きにとって夏の文庫フェアは、毎夏最大のイベントと言っても過言ではない。6月になると早くも身体がソワソワしてきて、各社から情報が解禁されるごとに胸が高鳴るわけである。 今年も文庫フェアの対象作品を買ってきた。今回はただそれを紹介するだけのnoteである。 新潮文庫の100冊まずは新潮社の「新潮文庫の100冊」から。 やはり注目は、夏の文庫フェア限定の「プレミアムカバー」である。今回も往年の

ずっと心に残っている短編たち 〜後編〜

私の心の中に、ずっと残っている短編がある。 読んだときの感動や衝撃が忘れられなくて、今でも鮮やかに思い出すことのできる短編たち。 前編に引き続き、私がこれまで読んできて、特に心に残っている短編を3つご紹介する。 それぞれどんな短編なのかわかりやすいように、「◯◯を読みたい人へ」というキャッチコピーをつけてみた。気になる短編があった方は、ぜひ収録されている短編集を手に取ってみていただきたい。 米澤穂信|玉野五十鈴の誉れ〜「伏線回収に背筋が凍るホラー作品」を読みたい人へ〜

ずっと心に残っている短編たち 〜前編〜

私の心の中に、ずっと残っている短編がある。 読んだときの感動や衝撃が忘れられなくて、今でも鮮やかに思い出すことのできる短編たち。 短編集の中から、ひとつの短編だけをピックアップして紹介する記事はあまり見かけないが、今回から前後編に分けて、私がこれまで読んできて、特に心に残っている短編を6つ取り上げたい。 それぞれどんな短編なのかわかりやすいように、「◯◯を読みたい人へ」というキャッチコピーをつけてみた。気になる短編があった方は、ぜひ収録されている短編集を手に取ってみてい

私の価値観を変えた本

普段はほとんど小説しか読まないのだが、ごく稀に、何かの拍子に、ちょっとした奇跡が重なって、自己啓発本を読むこともある。 大抵は右から左に読み流すだけで、内容が頭に残ることは滅多にない。これはひとえに、私が真面目に読んでいないからである。もう少し真面目に読んでほしい。 それでも、これまたごく稀に、何かの拍子に、奇跡が奇跡を呼び、私の人生における価値観をガラリと変えてしまうような本と出会うことがある。 世に数多ある自己啓発本。 結局どれを読んだらいいの……? と途方に暮れ

本を贈ろう

誰かに本を贈るのは、難しい。 本は、個人的なものだと思う。どんな本を読むかは、その人がどんな考えを持ち、どんな生き方を選択しているかに直結する。 相手が喜んでくれる本、相手が望む本は何かを考え始めると、あっという間に時間が過ぎる。本を贈るためには、相手のことをよく知らなければならない。この世に無数に存在する本の中から、ぴったりの一冊を見つけ出すのは、非常に難しい。 でも、誰かに本を贈るのは、素敵なことだ。 幼い頃に読んだ絵本のことを大人になってもずっと覚えている、とい

【2023年版】#名刺代わりの小説10選

2023年が始まって、早くもひと月が経った(信じられない)。 今年も、「#名刺代わりの小説10選」を更新しようと思う。 こういう選書企画は、あれこれ悩みながら本を選ぶ過程が、とにかく楽しい。 いつも時間はかかってしまうが、自分が好きな小説とは何かを見直す機会として、毎年続けていきたい習慣だ。 2022年版 #名刺代わりの小説10選まずは、2022年版の#名刺代わりの小説10選を振り返りたい。 (私にとっては)錚々たる顔ぶれが並んでいる。学生時代から現在まで、私の読書

【文庫本の世界】カバーの先の装丁デザイン

はじめに 私は、本を文庫で購入することが多い。 ひとつは経済的な理由からだが、もうひとつには、本棚に並べた時の背表紙の統一感が好きだという理由もある。 装丁の世界で言えば、文庫本よりも単行本の方が、デザインや用紙に趣向が凝らされている。カバーを外した本体表紙においても、その作品独自のデザインがあしらわれており、唯一無二の世界が広がっている。世の中には、カバーを取った表紙デザインだけの展示会も存在するくらいだ。 しかし。 文庫本には文庫本の、装丁の良さがある。定められ

【2022年版】新潮文庫の100冊について語る

本好きの夏の風物詩。私にとって夏の訪れは、「夏の文庫フェア」によって告げられる。 「今日も、読書。」を読んでくださる本好きの皆さんには、夏の文庫フェアについて、説明は不要だろう。いつもの書店が夏一色に染まる、あの「お祭り」のことである。 角川文庫の「カドブン」、新潮文庫の「新潮文庫の100冊」、そして集英社文庫の「ナツイチ」。書店に夏の文庫フェアの特設コーナーが並ぶと、心が浮き立ち、今年も夏が来たかと感慨に浸りつつ、冊子を持ち帰るまでが一連の流れである。 カドブン=緑、

【本棚紹介】読書の現在地

本棚は、私がこれまで読んできた本の集積であり、読書の現在地だ。 今回は、ただただ我が家の本棚を眺めるだけの、私の現在地の記録である——。 この他、漫画や大学時代の参考書、雑誌などを収めている本棚もあるが、長くなるので今回は割愛。 今後この本棚がどのように変わっていくのか、楽しみだ。 ↓本に関するおすすめ記事をまとめています。 ↓読書会のPodcast「本の海を泳ぐ」を配信しています。 ↓マシュマロでご意見、ご質問を募集しています。