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今日も、読書。

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読書の記録。明日読みたくなる本を。
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2022年10月の記事一覧

今日も、読書。 |内田洋子さんの魅力を伝えたい

今日も、読書。 |内田洋子さんの魅力を伝えたい

内田洋子|カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想

読書ラジオ「本の海を泳ぐ」、2回目のテーマ本として選んだ作品は、内田洋子さんの『カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想』。数ページほどの短編が20作品収められたエッセイ集だ。

「本の海を泳ぐ」で自分が選書をする番になったら、最初は内田洋子さんの作品にしようと決めていた。内田洋子さんの作品の魅力を、少しでも多くの人に知ってもらいたかったからだ。

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今日も、読書。 |学生だった、あの頃の私と出会う本

今日も、読書。 |学生だった、あの頃の私と出会う本

伊吹有喜|犬がいた季節

昭和から平成、そして令和へ。移り変わる時代の中で、変わらずあり続ける、学び舎の高校。

生徒たちが入学、卒業し入れ替わっていく中で、学校で飼われている犬のコーシローだけが、不変の視点を持っている。

昭和63年、コーシローは高校にやって来た。以来「コーシローの世話をする会」の生徒たちが、代々コーシローの世話をする。

本作は、そんな世話をする会のメンバーとコーシローを中心

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今日も、読書。 |読書とは、他者の人生を追体験することだ

今日も、読書。 |読書とは、他者の人生を追体験することだ

日本文学史上、直木賞と山本周五郎賞のダブル受賞を果たした例は、わずか2例しかない。

ひとつはまだ記憶に新しい、佐藤究さんの『テスカトリポカ』。そしてもうひとつが、遡ること20年近く、熊谷達也さんの『邂逅の森』である。

通例的に、同一作品に直木賞と山本周五郎賞を両方受賞させることは、避けられてきた。しかしそんなハードルを乗り越え、見事ダブル受賞を果たした小説には、他の小説にはない圧倒的な力がある

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今日も、読書。 |信念と時代の狭間で

今日も、読書。 |信念と時代の狭間で

カズオ・イシグロ|浮世の画家

カズオ・イシグロさんといえば、2017年にノーベル文学賞を受賞したことで有名だ。長崎で生まれ、幼少期にイギリスへ渡り、以来英語で小説を執筆している。日本にルーツを持つ作家がノーベル文学賞を受賞したということで、当時非常に話題になった。

『わたしを離さないで』『日の名残り』といった彼の代表作に、「日本」の要素はあまり見られない。しかしデビューしたばかりの頃は、日本に

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