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せっせと書きためてきたその手記を破棄し、それとともにあなたがた、未来の読者も葬り去ることになるだろう。 2020/10/11

 たった1週間で人生は劇的に動き出す。2年近く探していたマンション候補の内見に行ったのは先週の土曜日なのだけど、そこから1週間、契約書に捺印してきた。手付金などまとまった現金は手元にないのでコツコツ積み立てていた投資信託などを換金して資金にしたのだけど、emaxisシリーズのような国内の投信でも海外のindexと連動しているようなものは、売り注文を出してから現金の受け渡しまでに1週間以上かかるものもあるということを今回身をもって知った。まぁ、そんなに急な資金需要なんて滅多にないので普段気にする必要のないことではあると思うのだけど。

 アトウッドの『誓願』を読み終わったので、次は何か日記ものを読もうと思っていて、つげ義晴の『つげ義晴日記』を読み始めた。日記を読みながら日記ってなんなんだろうということを考えていたら、急に『誓願』の一節を思い出したので再びどこに書いてあったかな、とパラパラとめくってみた。

 その場合は、せっせと書きためてきたその手記を破棄し、それとともにあなたがた、未来の読者も葬り去ることになるだろう。炎を灯す一本のマッチがあれば、あなたがたはすっかりいなくなるのだーー元々存在していなかったし、これからも存在しないかのように、消し飛ぶことになる。なんとも神のごとき気分だ! 破壊の神ではあるけれど。
マーガレット・アトウッド『誓願』P.444

 これはある人物の手記の中で語られる言葉なのだけど、書かれたものは消すこともできる。このアカウントを消滅させることもできる。そうすると読者も同時に消え去る。手記はそもそも誰かに読まれることを想定して書かれているけれど、日記はそもそも誰かに読まれることを想定して書かれている訳ではなくて、自分のために綴られているものが、たまさか人の目にも触れる場所に置いてあるというだけのことだ。

 わざわざ読んで欲しいのかというとそれは本当に微妙なところで、別に誰かに読んでもらうために書いているという感じはしないのだけど(もしそうなら、もう少し読みやすくまともな文章で書こうとするだろう)、ただnoteでこれを書き続けているうちにスキを押してくれたりする人もいる訳で、書かれた物に対して好意的なリアクションが返ってくることは意外な嬉しさがあることを知った、という感じではある。

 まぁそれはそれとして、リノベについて学び続けている。親友におすすめされた増田奏『住まいの解剖図鑑』を読んだ。

 住宅の建築における住みやすさ、生活しやすさを教えてくれる本。これを読むとつくづく導線とは大切なものであるよ、と思うし、なるべく家族で一緒に過ごす時間、と言ってもリビングで一緒に本を読む、とかなのだけど、そういう時間を大切にしたい自分としては、それぞれのプライベートスペースに引きこもるような家というよりは、皆が集う場所としてのリビングの使い勝手をどこまで向上させるかと、本の収納をどうするかが重要な問題だなと改めて思うのでした。

 たとえば月に 30冊買うとすると、いや、めんどくさいな、年間365冊買うとすると、10年で3650冊。そう考えると1万冊くらい収納できれば余裕?なのかな、とかよくわからん試算を仕出している。今まで何冊買ったかなんて知らんけど、でも20年そのペースで買ってたらすでに7300冊と思うと、1万冊では足りないのだろうか。いやいや、それでもマンガは自炊したし、新しいものはkindleで買うようにしているのでやっぱり1万冊収納できれば問題ない気もするけれど、それがどれくらいのボリュームなのかはよくわからないし、無理なら無理で実家の壁も本棚にならざるを得ないのかもしれない。あるいは書庫を建てるしかないのかもしれない。

 この本を見たおかげでなるほど、書庫というのは8坪あれば建つのか、と心が軽くなったのだけど、この書庫で1万冊ということは、マンションに1万冊収めるのは土台無理な話だなということがわかる訳で、暗澹たる気持ちになってくる。そうなると、自宅にはせいぜい数千冊、それも数千前半が現実的な数字になるのだろうからいずれ書庫が必要になるということなのかもしれない。などとなんだかよくわからなくなってくるけれど、こうやって明文化して見ると、なんでこんなに本を中心に考えているのか自分でも不思議ではある。別に稀覯本を集めたいという古本マニアな訳でもないのだから、もう少しやりようがあるような気もする。

 そうなると自宅の棚は未読本と厳選された書籍を前提に構成されることを想定したほうがいいのかもしれない。そうすればグッと減るような気もする。

 一応契約も無事済んだし、おめでたいことなのだと思ったので、赤ワインを開けた。別に特別なものではないけれど、なんとなく、めでたさを感じたかったのだと思う。妻は赤飯のおにぎりを買ってきていて、二人で分けて食べた。なんとなく、めでたい気がする。


自分の好きなことを表明すると、気の合う仲間が集まってくるらしい。とりあえず、読んでくれた人に感謝、スキ押してくれた人に大感謝、あなたのスキが次を書くモチベーションです。サポートはいわゆる投げ銭。noteの会員じゃなくてもできるらしい。そんな奇特な人には超大感謝&幸せを祈ります。