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Bitter Vacation 〝ユリカ〟と夏 【短編小説】
Bitter Vacation〝ユリカ〟との夏
美位矢 直紀
目次
1 僕だけの再会
2 背中合わせの真実
3 見つめていたい
4 許せないキス
5 悪戯好きの神様
6 充分な沈黙
7 理不尽な衝撃
8 事実の価値
9 止められない恋
最終話 誓うべき誠実
Bitter Vacation〝ユリカ〟との夏 #美
3 見つめていたい 【短編】
「ほんとに奪うつもりなの!?」
「冗談よ、冗談!!」
「ははっ!」
3人の会話は食事を口に運ぶ事もそこそこに繋がり続けていた。
僕は静かに席を立った。
(奪う、か・・・)
(今此処で振り向いたらどうなるんだろう・・・)
僕の感情はピーキーに揺れ動いていた
◇
僕はショッピングモールを形成するブティックを右に見ながら歩いていた。
カラカウア通りは昼夜
4 許せないキス 【短編】
「・・・さっきのお店でイヤリング外したんだけど、一つ無いの」
トートバックの中を掻き回しながらユリカはエレベーターに乗り込み、まだ掻き回していた。
「〝ゆりか〟っ!」
僕達と一緒に乗り込んだ数人の女性の、少し大きめの誰かの声がホールに響いた。
僕の後ろから聞こえたその呼び声に、僕の右側に居たユリカは顔を上げ、僕はユリカから〝ゆりか〟に顔を向け、誰かが締まろうとするドアに手を掛けた。
5 悪戯好きの神様 【短編】
「ダイビング行っちゃうよ」
「了解」
「ね、ほんとに行かないの?」
「・・・そうだね」
「ねぇ、一緒に行こうよっ、ねっ!」
「・・・止めとくよ」
「もう・・・じゃぁ・・・帰って来たらドライブ連れてって」
「了解」
「ハワイなのに海に行こうとしないんだから」
「まだ時間たっぷりあるからさ、そのうち行くよ」
◇
圭子 :「ゆり、アラモアナ行くよ」
ゆりか:「止めとく」
圭子
6 充分な沈黙 【短編】
二人の前にはHERMES風のデミカップに入ったエスプレッソがあった。
「すみません、言い忘れてました。春岡健二です」
「・・・私は・・・」
「長谷川ゆりかさん」
「・・・はい」
「〝ゆりか〟ってどう漢字で書くんですか?」
「友達に・・里に・・香るです・・・」
「そうだったんですね」
僕達はカラカウア通りとクヒオ通りを繋つなぐ細い通りに在るダイナーのオープンスペースに居た。
背
7 理不尽な衝撃 【短編】
「7時半か・・・」
僕は恋愛の必然を待っていた。
(・・・やっぱり無理かな・・・)
(いや、必ず来る・・・)
品川プリンスホテルで開催された経済セミナーに参加した僕は、その後行われる親睦会を予定通り欠席してイーストタワーに移動し、予定には無かった諦めや自己暗示をフロントロビーの煌びやかなアトリウムで繰り返していた。
(・・・楽しちゃいけないな・・・)
ワイキキのダイナー
最終話 誓うべき誠実 【短編】
個性豊かな賑わいがそれぞれのテーブルで華やかに溢れていた。
終わる事など有り得ない幸せだと全ての笑顔が信じていた。
友人としての〝在り来たり〟なスピーチを終えた僕は自分の席に戻っていた。
隣には会場の雰囲気に溶け込んでいないユリカが座っていた。
◇
「追いかけないで!!」
僕は友里香の声に動きを止められていた。友里香の声は呪文となって、魔法となって、僕の背中を捕まえて