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医療 製薬業界|グラフで読み解く企業分析【第一三共】

クリニファー株式会社でインターンシップをさせて頂いております、大学院生のオダニと申します。
今回の記事は「グラフで読み解く企業分析【第一三共】」です。コメントやアドバイス等ありましたら、ぜひお願いいたします!

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記事本文↓↓

抗体薬物複合体(ADC)技術でがん領域に特に強みを持ち、血液領域にも強い第一三共。本記事では第一三共の①成長性、②強みを持つ領域・モダリティ、③将来性の3つに焦点を当て、企業分析を行った。それぞれの項目について、グラフを用いて述べていく。


① 成長性

 売上高、営業利益の5年間推移

第一三共の5年間(2018~2022年度)の売上高と営業利益を、決算情報(*1)~(*5)をもとに下のグラフにまとめた。なお、2023年度は第一三共の決算情報(2023年3月期)で報告された業績予想である。

※23年度は予想

売上高の5年間の推移をみると、緩やかではあるが順調に成長していることが読み取れる。特に2022年度の売上高は1兆2785億円で2021年度の1兆449億円と比較して22.4%の増収となった。営業利益の推移に関しては5年間でほぼ横ばいであるが、2019年度、2022年度は1000億円を超え、営業利益率は10%程度となった。現在好調の第一三共は決算情報によると、2023年度は売上高が1兆4500億円で13.4%の増収、営業利益は1350億円で12.0%の増収が予想されている。これは抗凝固剤「リクシアナ」やADCの抗悪性腫瘍剤「エンハーツ」が好調をキープするためであると考えられる。また、「エンハーツ」などDXd-ADCへの投資先行期を乗り越え、大幅な売上・利益成長を実現すると報告されている。2025年度には売上高が2兆円に達する見込みである。

 地域別売上高の5年間推移

第一三共の5年間の地域別売上高を下のグラフにまとめた。

日本国内での売上が2018年度は全体の64.1%であったが、2022年度は41.7%に減少している。特に2021年度から2022年度では国内売上比率が11.7%減少し、北米での売上比率が8.4%増加している。これは「エンハーツ」の売上が北米、欧州で大幅に伸びたことが要因である。2023年度以降も北米、欧州、アジアや中南米など世界中で「エンハーツ」の売上が伸びる予想であり、これを受け国内売上比率は減少、海外売上比率が年々増加していくと考えられる。

② 強みを持つ領域・モダリティ

 領域別の製品数と売上高

第一三共の2022年度における領域別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。

第一三共が最も売上を上げている領域は血液領域であり、「リクシアナ」が2,440億円だった。次いでがん領域となる。がん領域では「エンハーツ」が多くの2,584億円の売上を上げている。グラフから、第一三共は特に血液、がん領域に強みを持つことがわかる。

 モダリティ別の製品数と売上高

第一三共の2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。

※売上が100億円以上の製品をまとめた

第一三共の主要製品のモダリティは低・中分子だった。次いで、抗体が多かった。抗体では抗体薬物複合体(ADC)の「エンハーツ」の売上が伸長しており、今後主力モダリティへと成長すると考えられる。

 主力3製品の売上高の5年間推移

第一三共が開発した製品の中で最も売上を上げているのは「エンハーツ」、次いで「リクシアナ」「インジェクタファー」だ。これら3つの製品を主力3製品とした場合、第一三共の成長は主力3製品の売上高の増加に大きく依存していると考えられ、主力3製品の過去5年間の売上高推移をグラフにした。

主力3製品の売上が順調に伸びていることが読み取れる。特に2020年から販売が開始した「エンハーツ」の売上が急激に伸び、現在は最主力製品となっている。また、第一三共は2025年度にはがん領域での売上を9,000億円以上、総売上では2兆円を目標としている。今後はがん領域で「エンハーツ」を筆頭に、最も売上を上げて急成長していくと考えられる。

③ 将来性

 国内開発パイプライン数

第一三共の将来性を評価するため、国内開発パイプライン数を調べた。下に現時点(2023年7月期)でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数(*6)をまとめたグラフを示す。

現在申請の段階まで達している医薬品は2製品、P3は19製品ある。以上のことから、新薬となりえる開発パイプラインを多く有しており、今後の安定性を十分にうかがえる。

 領域別の国内開発パイプライン数

続いて第一三共が現在注力している領域を調べるため、2023年7月でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数を領域別でまとめた。そのグラフを下に示す。

現時点で申請まで進んでいる製品はがん領域で1つ、感染症領域で1つだった。P3段階まで進んでいるのはがん領域が最も多く14個、次いで感染症領域で4つ、生活習慣病で1つだった。第一三共はがん領域に特に今後注力していくことがわかる。感染症領域ではコロナワクチンの開発が進んでいる。

 モダリティ別の国内開発パイプライン数

最後に第一三共が現在注力しているモダリティを調べるため、2023年7月でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数をモダリティ別でまとめた。そのグラフを下に示す。

現時点で申請段階まで進んでいるのは抗体で1つ、ワクチンで1つだった。P3まで進んでいるのは抗体で12個、低分子が3つ、ワクチンが4つだった。抗体のほとんどはADCだった。ワクチンの中にはコロナワクチンもあり、mRNAワクチンを有している。モダリティ別のパイプライン数からもわかる通り、第一三共は抗体医薬(ADC)に強みを持つことがわかる。

 まとめ

✓ 成長性
● 順調に成長。2025年度までに急激に成長する予想。
● 海外売上比率を急激に伸ばす予想。

 強みを持つ領域・モダリティ
● 血液領域で最も売上を上げている。がん領域に強みを持ち、今後はがん領域が主力になる。
● 抗体薬物複合体(ADC)を有している。
● 「エンハーツ」を筆頭に売上を伸ばし、2025年度にはがん領域での売上を9,000億円以上、総売上では2兆円を目標としている。

✓ 将来性
● がん領域に注力しており、多くのパイプラインを持つ。
● ADCに強みを持ち、多くのパイプラインを持つ。mRNAワクチンを有している。

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*1 第一三共[4568]:2019年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
2018年度第4四半期_決算短信(訂正版).pdf (daiichisankyo.co.jp)
*2 第一三共[4568]:2020年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
2019年度本決算_決算短信.pdf (daiichisankyo.co.jp)
*3 第一三共[4568]:2021年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/quarterly_result/2020/pdf/Q4/FY2020_Q4_Financial_Results_J.pdf
*4 第一三共[4568]:2022年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/quarterly_result/2021/FY2021_Q4_Financial_Results_J.pdf
*5 第一三共[4568]:2023年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/quarterly_result/2022/FY2022_Q4_Financial_Results_J.pdf
*6 第一三共[4568]:2023年度 第1四半期決算 決算補足資料
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/quarterly_result/2023/FY2023_Q1_Reference_Data_J.pdf


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