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実際に使ってみて、「学会で発表していた症例報告は本当なんだ」と実感しました。コミュニティーホスピタル甲賀病院インタビュー

「自分で使うまでは、『本当にこんなに変化が出るのかな』と半分疑っていました」。

株式会社mediVRでは、VR(仮想現実)を活用したリハビリテーション用医療機器mediVRカグラを全国の医療機関や介護施設に販売しています。2022年8月には、静岡県焼津市にあるコミュニティーホスピタル甲賀病院が東海地方で初めてmediVRカグラを導入してくださいました。導入から半年、同院ではVRリハビリをどのように評価しているのでしょうか。実際に使用する前は半信半疑だったという脳神経外科医の根元琢磨先生、理学療法士の松下貢汰先生に、導入後の感想を伺いました。

根元先生の写真

根元琢磨(ねもと・たくま)先生 脳神経外科医
2011年山形大学卒業後、山形大学附属病院、山形県立中央病院で研修をした後、山形県立中央病院へ入職。新潟大学、長岡立川病院、桑名病院を経て、2021年8月にコミュニティーホスピタル甲賀病院脳神経外科に入職。

松下先生の写真

松下貢汰(まつした・こうた)先生 理学療法士
2016年に理学療法士の資格を取得。回復期リハビリテーション病院に務めた後、医療業界以外の仕事も経験し、2020年2月にコミュニティーホスピタル甲賀病院リハビリテーション科に入職。

「本当にこんなに変化が出るのかな」と半分疑っていた

——まずは、コミュニティーホスピタル甲賀病院の特徴を教えてください。

根元先生:大きな特徴は、複数の病床機能を持つケアミックス病院であり、急性期から回復期まで主治医が変わらず患者さんを担当することです。患者さんやご家族の安心につながると思いますし、医師としても担当した患者さんがその後どうなったのか、自分の治療が間違っていなかったかを確認できるのは仕事のやりがいにつながります。

松下先生:リハビリの場合は病棟をまたぐと担当も変わる仕組みなのですが、申し送りは対面で行うことができます。一般的な病院ではペラ一枚の申し送りサマリーを読み解くところからのスタートですが、当院では担当医と直接話せますし、急性期で行ったリハビリの内容やカルテを確認することも可能なので、適切なリハビリを効率よく提供できていると感じています。

社会医療法人駿甲会コミュニティーホスピタル甲賀病院

——自分の身体や症状をよくわかっている先生に診てもらえると、病気や事故で不安を抱えている患者さんの心の負担は軽くなるだろうなと思います。そんな貴院がmediVRカグラの導入を考えた背景を教えていただけますか?

松下先生:もともと私がVRやメタバースといった新しいものが好きで、「リハビリと組み合わせたら脳神経の再構築を促して効果を出せるんじゃないか」「これまで治せなかった人にアプローチできるかもしれない」と考えていたんです。でも、VRリハビリに関する研究を調べたところ、楽しいからリハビリ時間が増えるという側面はあるものの、肝心の効果に関しては一般的なリハビリと大差ないという結果がほとんど。「自分の直感は間違っていたのかな」と残念に思っていたときに、mediVRカグラの存在を知りました。

資料を読んだり社員の方に話を聞いたりして、「これまで見てきたVRリハビリ機器とは全然違う」という印象を抱きました。ただ、申し訳ないのですが、正直に言うとちょっとうさんくささも感じていて……(苦笑)。症例の変化がすごいものだったので、自分で使うまでは「本当にこんなに変化が出るのかな」と半分疑っていました。

mediVRカグラプレイ画面
医師の原正彦が大阪大学と開発したリハビリテーション用医療機器・mediVRカグラ。外部動力を使用せず、診断治療に有用な測定値、又は課題達成度を評価するために用いるリハビリテーション用訓練装置です。

——VRリハビリの前後で変化がありすぎて疑われるのはよくあることです(笑)。医療従事者としては、実際に自分で使って確かめてみないと信じられませんよね。根元先生はどのタイミングでmediVRカグラを知りましたか?

根元先生:リハビリに関わるようになり、「従来のやり方ではなかなか治せない人もいるんだな」という課題感を抱いていたときに、松下先生からmediVRカグラの話を聞いて興味を持ちました。ちょうど2022年6月に日本リハビリテーション医学界学術集会でmediVRカグラの機器展示と講演があると知って行ってみたのですが、ブースは大盛況でしたし、原先生のプレゼンの上手さに魅了されてしまって(笑)。VRリハビリによって患者さんに大きな変化が現れている症例を見て、当院でも試してみたいと思いました。

学会等での講演内容はYouTubeにアップしています

アプローチできる症状の幅が広かったことが導入の決め手に

——その後すぐに弊社スタッフが説明とデモンストレーションに伺い、数週間機器を貸し出して現場で使っていただきました。

松下先生:デモンストレーションのときは、2年ほど前に脳梗塞を発症した女性にVRリハビリを受けてもらいました。失調症状が強く腕を動かすときに震えてしまい、歩くときもガチガチに緊張を高めてなんとか一歩前に進むような状態だったのが、一度のVRリハビリで震えがかなり治まり、歩行も滑らかになったので衝撃を受けたことを覚えています。その次にリハビリに来ていただいたときもある程度その状態が維持されていたので、「効果が持続するんだな、これはすごいな」と思いました。

根元先生:実際に使ってみて、講演で説明されていたことは本当なんだ、と実感しましたね。レンタル期間中に効果が芳しくなかったら院内で「導入しましょう」とは言いづらかったけど、見に見える結果が出たのでよかったです。

——導入の決め手は何でしたか?

松下先生:理事長をはじめ当院として一番うれしいことは、やっぱり患者さんが良くなることなんです。患者さんが喜ぶ様子を見るとスタッフのモチベーションが上がりますし、病院全体の雰囲気も良くなってほかの患者さんにもいい影響が波及していきます。

それに、mediVRカグラは医療機器やリハビリ機器の中で考えると決して高くありませんし、アプローチできる症状の幅を考えるとむしろ安いと思います。なので、導入は割とすぐに決まりました。

根元先生:学会でいろいろな機器を見ましたが、大半のものが「上肢だけ」「指だけ」とアプローチできる範囲が限定的でした。それらを一つひとつ揃えていくとかなりの予算が必要になりますし、手間もかかります。まずは多くの患者さんにアプローチできる医療機器を導入したいと考えたことも大きいですね。

mediVRカグラの応用可能疾患図

70代を超えた患者さんも抵抗感なく取り組める

——2022年8月にmediVRカグラを導入していただいて、約半年が過ぎました。どんな患者さんに使っていただいていますか?

松下先生:一番多いのはパーキンソン病、次に慢性期脳血管障害の患者さんです。現在、リハビリテーション科では「慢性期脳血管障害にはまずVRリハビリを行ってみる」という決まりになっています。

——VRを使ったリハビリということで、戸惑われる患者さんもいらっしゃいますか?

松下先生:いただいたパンフレットをもとにしっかり説明してからリハビリに入るので、戸惑われることはあまりありません。最初のキャリブレーションのときなどは少し混乱している様子が見られることもありますが、リーチングを2〜3回繰り返せば、みなさんコツを掴んでどんどんできるようになりますね。70代以上の患者さんが多いのですが、終わった後に「新しいリハビリに取り組めた」という喜びの声をいただいたこともありました

ただ、一度スタッフが充分な説明をしないままリハビリに入ってしまったことがあって、その患者さんからは「もうやりたくない」と言われてしまいました。そうしたことが起こらないよう、私から全体に向けてアナウンスし、パンフレットの重要な箇所にマーカーを引いて「ここは必ず説明しましょう」と伝えました。それ以降はそうしたトラブルは起きていません。

松下先生によるリハビリの様子

——新しい機器を導入したときはどうしても混乱が生じるものですが、セラピストのみなさんはmediVRカグラの使い方をすぐに掴んでくださいましたか?

松下先生:最初は操作の面で戸惑っていましたが、セラピスト同士で練習して慣れていきました。いまはみんなテンキーを見ずに操作できますし、患者さんの動きを良く見て、代償動作などにすぐ気づけるようになりました。でも、より高いレベルでVRリハビリを実施できるようになるために、一人ひとりに御社のWEBサポートを受けてもらいたいなと考えています。

WEBサポートの様子
mediVRでは導入を検討している施設に対し機器を2週間無料で貸し出し、最低4回は社内セラピストがリハビリをサポートして効果的なVRリハビリの実施方法をレクチャーします。その後もご希望に応じてWEBサポートを行っています

——他組織のセラピストからサポートを受けることに対する抵抗感はありませんか?

松下先生:リハビリは結果がすべてですから。相手がどんなに偉くてキャリアのある人でも、患者さんを治せなければ話を聞こうとは思いません。VRリハビリならこれまでなかなか良くできなかった症状を改善できるかもしれないという期待があるので、みんな積極的に受け入れているのだと思います。

楽しそうに話をする根元先生、松下先生、mediVR荒木

脳梗塞から2年が経った慢性期。TUGテストが34秒から20秒に

——mediVRカグラの導入後、印象に残っていることはありますか?

松下先生:デモンストレーションの際に体験してもらった失調症状のある患者さんは、TUGテスト(Timed Up & Go Test:椅子から立ち上がり、3m先のコーンを折り返して着座するまでの時間を測るテスト)のタイムが34秒だったところ、最高で14秒を叩き出しました。循環器系の疾患も抱えている方なので調子の悪いときは下がってしまいますが、20秒前後はキープできています。慢性期でTUGが34秒から20秒前後まで改善することはなかなかないので驚いています。

震えもかなり良くなりました。ただ、日常生活ではものを取るときにまだ震えが出るそうです。ピアノや手芸を趣味としていた方なので、それらをもう一度できるところまで持っていけたら、と思っています。

根元先生:脳の主幹動脈が閉塞して血栓回収療法を施した患者さんがいるのですが、術後に起こっていた右側半側空間無視がVRリハビリを始めてから良くなったと感じています。診察の際に右から話しかけても答えてくれるようになりましたし、担当セラピストも良くなったと評価しています。

甲賀病院でのリハビリの様子はテレビ静岡のニュースでも放送されています

——mediVRカグラの強みはどういったところにあると思いますか?

松下先生:坐骨に左右交互に荷重をかける動作を繰り返すので、体重を両足に載せやすくなり、歩行が改善されますね。目に見えて変化が大きいのは失調です。通常、失調症状はなかなか変化が出ないものですが、いま新しい患者さんが入ってきたら改善できるのではと感じています。ただ、それがどういう機序によるものなのか、まだうまく言葉で伝えられないのがもどかしくて……。御社が公開している資料や論文を紐解いて、しっかりと説明できるようになりたいと思っています。

もうひとつ、日本語がほとんど話せない外国の方がいらっしゃったときに、VRだと問題なくリハビリができたので助かりました。言葉が通じなくても直感的に、しかも楽しくリハビリに取り組むことができるというのは大きなメリットだと感じています。


神経内科医・脳神経外科医向けの講演で、失調症状の改善機序や非言語的要素について説明しました

「あきらめないリハビリ=甲賀病院」と思ってもらえるように

——リハビリの効果以外の部分で、mediVRカグラを導入したことによるメリットは感じられていますか?

根元先生:宣伝効果ですね。mediVRカグラの導入は東海地方では当院が初めてということもあり、静岡新聞テレビ静岡に取り上げていただきました。遠方からmediVRカグラを目当てに来てくださったり、ケアマネージャーさんが受け持ちの患者さんに「甲賀病院で新しい機器を使ったリハビリを提供しているよ」と紹介してくださったり、患者さんに選ばれるきっかけになっていると思います。

——今後の展望や目標を教えてください。

松下先生:リハビリにおいて一番大事なのは患者さんが良くなることで、mediVRカグラはそれができる機器だと感じています。私たちがmediVRで働くセラピストさんと同じくらいmediVRカグラを使いこなせるようになれば、患者さんの身体はもっと良くなるし、アプローチできる症状の幅も広がるはず。地域のみなさんに「甲賀病院に行けば、これまでできなかったことができるようになる」「あきらめないリハビリを提供しているのが甲賀病院だ」と言われるようになりたいですね。

根元先生:セラピストたちが頑張って治療してくれているので、僕の役割はそのデータを集めて成果を見える化し、現場をサポートすることだと捉えています。これまでは“まず使ってみる”段階でしたが、どう使うと効果的かが見えてきたので、今後はVRリハビリを行う際には必ずbefore/afterを記録し、データを蓄積していきたい。ゆくゆくは論文にまとめて世の中に発表できれば、と考えています。

——ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします!

<インタビューを終えて:担当セラピスト荒木正人より>
コミュニティーホスピタル甲賀病院は、臨床面でのmediVRカグラの活用はもちろん広報面にも力を入れており、お話を伺う度に刺激を受けています。導入前から関わらせていただていますが、情熱や積極性が落ちることなく維持されていることにいつも驚かされています。これからも静岡の地域医療を盛り上げていってくださると期待しています。

取材日:2023.2.14
取材協力:コミュニティーホスピタル甲賀病院

■株式会社mediVR
HP:https://www.medivr.jp/
リハビリテーションセンター:https://www.medivr.jp/rehacenter/
Facebook:https://www.facebook.com/mediVR.media
instagram:https://www.instagram.com/medivr.jp/

(取材・撮影・文:飛田恵美子

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