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作りたいコンテンツと、求められるコンテンツが異なるとき

作りたいコンテンツは観られないという、クリエイターのジレンマ

作り手が届けたいというコンテンツを作っても、見られなかったりするんですね。人は、自分が観たいコンテンツを観に行きます。クリエイターが変に独自性を出すと、それが受け手には伝わらなかったりするんです。

例えば、昔映画業界にいたときに聞いた話ですが、すごく有名な映像クリエイター作家がいました。その人が手掛ける作品は確実にヒットを狙えるため、続編を待望されていたのです。
しかし、その作家は実はその続編を作るよりは、新しいオリジナル作品を作りたかったのだそうです。
オリジナル作品の制作を条件に、ヒット作の続編も制作する契約を結びました。ヒット作のオリジナル作品はもちろんヒットしましたが、当人が本当に作りたかったオリジナル作品は興業が奮わなかったというんですね。

このように、作りたいコンテンツを作ると観られないという、クリエイターのジレンマがよくあります。こういうときに、どう対処したら良いのでしょうか。

方法1:コンテンツの入れ物だけ変える:「嫌われる勇気」に学ぶ

たとえば数百万部を超える大ヒットになったビジネス書「嫌われる勇気」があります。アドラー哲学を分かりやすく解説してヒットを飛ばしたんですが、そもそもアドラー哲学は難解だと言われており、今までもメジャーではなかったんですね。
それを、若者と哲人が対話するという物語仕立てにしたことで、内容が分かりやすくなり、爆発的にヒットをしました。

このように作りたい、届けたいコンテンツが難しい内容である場合は、物語形式にしたり、漫画、アニメ形式にするなど、コンテンツの入れ物を、万人に受け入れやすいものに変える、という方法が考えられます。

ほかにも、「ひぐらしのなく頃に」という大ヒットコンテンツがあります。サウンドノベルとして大ヒットし、アニメ化、映画化もされたコンテンツですが、当初は小説や舞台用の脚本として書かれていたそうです。
音楽による演出や、ユーザーが謎を解き明かすインタラクション性を入れたサウンドノベルという入れ物に入れることによって、大ヒットにつながりました。
このように、コンテンツの入れ物を工夫すれば、対象となる受け手が広がる場合があるんですね。コンテンツの内容が難解であったり、臨場感が必要なコンテンツは、漫画やアニメ、動画にすることで分かりやすくなり、一気に広がる可能性があります。

方法2:コンテンツを2重構造にする:「風立ちぬ」に学ぶ


もう1つの方法は、コンテンツを2重構造にするということが考えられます。これは、かなり高度なテクニックなんですが、宮崎駿の「風立ちぬ」はこの構造になっているんですね。
表向きは零戦闘機を開発した航空機設計者、堀越二郎とフィアンセの悲恋物語としてストーリーが進行します。しかし、その裏側では、本格的に戦争へ突入し、自らが設計した戦闘機が戦闘へ投入されても、無自覚に設計をし続ける、クリエイターのエゴイスティックな一面も描いているんです。
メインのストーリーラインがありながらも、その裏には強いメッセージ性が込められていて、そのメッセージを読み取れるかどうかは観客によるんですね。
このように、メインストーリーを保ちながらも、二重構造にして自らのメッセージを込めるというやり方があります。
ただし、これは映像や小説など、尺が長いコンテンツに限られるんです。長い尺があるからこそ、二重構造を組み立てる余裕があるというわけですね。

方法3:マス受け8割、ブランディング2割のバランスを取る


コンテンツを量産している場合、全体の7~8割はマス受けのコンテンツを作り、認知を広げることに注力します。残りの2、3割のコンテンツは、自分が本当に作りたい、届けたいコンテンツを作るんです。
大勢には観られないかもしれませんが、少数の熱狂的なファンは獲得できるかもしれません。こういった熱量のこもったコンテンツは、コンテンツ全体へのブランディングに繋がるんですね。
このバランス戦略は、クリエイターとしての自己実現と、ビジネスとしての成功の両立を図る方法だと言えます。マス受けするコンテンツで安定した収入や知名度を確保しながら、自分の真の想いを込めたコンテンツでブランドの深みを作っていくんです。
例えば、人気漫画家が連載の合間に自主制作の作品を発表したり、ミュージシャンがヒット曲の間に実験的な楽曲を挟んだりするのも、この戦略の一例かもしれません。

まとめ:クリエイターのジレンマと向き合う


クリエイターのジレンマは、コンテンツ作りをする限り、常につきまとう問題です。コンテンツの入れ物を工夫したり、二重構造にメッセージを込めたり、マス向けと自己表現のバランスを取ったりと、状況に応じて選択肢があります。

大切なのは、自分の想いを伝えたいという欲求と、多くの人に届けたいという願いのバランスを取ることです。時には妥協も必要かもしれませんが、工夫次第で両立できる可能性もあります。

クリエイターとして、自分の作品と向き合いながら、どうすれば効果的に伝えられるか、常に考え続けることが重要です。そうすることで、自分らしさを失わずに、より多くの人に届く作品を生み出せる可能性が広がるんですね。
結局のところ、クリエイターのジレンマを完全に解消することは難しいかもしれません。でも、これらの方法を意識しながら制作に取り組むことで、よりバランスの取れた、そして多くの人の心に響くコンテンツを作り出せる可能性が高まるのではないでしょうか。


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