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ゆるホラー集

7
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#小説

気付いた

気付いた

私、もしかしたら炭酸が好きなのかもしれない。
お風呂あがり、ドライヤーで髪を乾かしながらふと思った。

入浴でたっぷり汗をかいた身体が、強烈に水分を欲していた。冷蔵庫には今朝用意した水出し紅茶があったはず。

……けど。

今は猛烈にコーラが飲みたい!
いやコーラじゃなくても良い。あまーくてしゅわしゅわの何かが飲みたい。

私は、基本的に缶やペットボトルで飲み物を購入することは少ない。家では趣味を

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事実は書き込みより奇なり

事実は書き込みより奇なり

 藤森豊は、暇を持て余していた。
何もすることがない。できることもほとんどない。くだらない夜の街へ繰り出し、くだらない奴らが歩いている様を俯瞰するのが楽しかったのなんて先週までだった。今では誰がどこをどう歩いていようが何をしていようが何も興味はない。
 藤森は、いくつかの暇つぶしを頭に浮かべては面白くないなと一蹴する作業をしばらく繰り返していたが、ふと思い立ったように近くのインターネットカフェに入

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汽車の夢

汽車の夢

ナースコールが響いた。
深夜2時、暗がりの中にぼんやりと浮かぶナース室には私しかいない。301の数字を確認し、ああ佐藤さんか、トイレかな……と考えながら部屋へ入った。
「佐藤さ~ん、どうされましたか?トイレですか?」
個室なので、ためらいなく明かりをつける。室内にふんだんにばらまかれた光を浴びながら、佐藤さんは静かに首を横に振った。
「いいえ。思い出したんです」
「え?何をですか?」
佐藤さんは認

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