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映画「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第10回

ジム・キャリーは強烈
2004年公開映画「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語(Lemony Snicket’s A Series of Unfortunate Events)」の指輪
文・みねこ美根(2018年7月15日連載公開)

 ディズニーの「ファインディング・ニモ」の音楽が怖い。なぜか聞くたびにゾッとする。作曲家トーマス・ニュートンによる楽曲なのだが、実は今回紹介する「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」の音楽も担当しているのだ。これを書くにあたって調べてみて初めて知った。「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」ではその雰囲気にぴったりの音楽で、不気味さはトラウマ級だ。脳の中で不気味さとニモがリンクしてしまっていたらしい。ごめんね、ニモ。

 この映画は、13巻から成る小説「世にも不幸なできごと」シリーズの1巻から3巻までの話をもとにしたストーリーとなっている。今回久しぶりに見直してみたら、ジム・キャリーがもうジム・キャリーすぎて困った。原作より騒々しく、おとぼけ感が増してしまっているのだが、あのオラフ伯爵の不気味さには、子どものころ恐怖を覚えた。そして主人公の3姉弟妹を囲む大人のキャストが、ティモシー・スポール(『ハリー・ポッター』のピーター・ペティグリュー)、メリル・ストリープ、キャサリン・オハラ(『ホーム・アローン』のお母さん)、ジュード・ロウ、ダスティン・ホフマンなど、錚々たる顔ぶれ。そして、陰気臭く灰色にさびれた世界観を支える、細やかなセットや丁寧に凝られた衣装に魅了される。

 「ハッピーエンドを好むのなら読まない(見ない)方が良い」というなんともひねくれたうたい文句の通り、両親を亡くした3姉弟妹に次々と不幸が降りかかるのだが、発明家の15歳の長女、読書家で博識な12歳の長男、噛むことが好きな赤ん坊の次女、この優秀な3人が互いを愛し、協力し合いながら出す知恵に毎回わくわくさせられる。この世界観はぜひ楽しんでもらいたい。エンドロール前のアニメも好き。

 私は小学生のとき、この原作シリーズに夢中になった。映画を見たのが先か、本が先か忘れたが、あの時の新刊が待ち遠しい気持ちや、表紙の手触り、想像した世界は忘れられない。物語であると理解していても、どこかで本当にこの登場人物たちが存在しているような気がして、毎回魅力的で秘密めいた作者のあとがきを推理して楽しんでいた。何度も読み返すほど好きなシリーズであったが、小学生の当時、ネットでこの本について調べたところ、大変ショックな記載を見つけた。

 「この作品はレモニー・スニケットというペンネームで作家ダニエル・ハンドラーが書いた子ども向けの小説である」…。これほどまでに残酷な説明書きがあるだろうか。登場人物がこの世界のどこかにいるかもしれないと信じる私のささやかなときめきを打ち砕き、「そんなことを信じるお前は子どもなのだ」と言われたようだった。泣きながら憤怒した記憶がある。でも、どんな物語でも信じることがそれを楽しむ一番のコツだろう。現実を突きつけてやろうと得意げな顔が近づいてきたら、彼らの人生を哀れみ、中指を立てよう。

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指輪:モチーフ…ヴァイオレットの黒いリボン、クラウスの本、サニーが開けた缶詰、 モンティおじさんのヘビ、あの“目”が描かれた旅行用のかばん、望遠鏡、 ヒルに食べられるオール
音楽:「VFD」 Thomas Newman(オルゴールver. cover)

オルタナティブ・シンガーソングライターの〝美根〟です。
作詞作曲をして、ギターとピアノの二刀流で唄い、自分の世界を届けています。
「みねこ美根」名義で活動していた2018年から、OKMusicさんにてweb連載を続けてきた「映画の指輪のつくり方」。
たくさんお世話になったOKMusicさんのサイト運営終了に伴い、noteに移行して連載を続けています。
毎月、大好きな映画から一つ選んで、それをテーマに指輪を制作。
勝手に皆様へお薦めするレビュー文章、制作作業動画を公開中。動画では劇中歌のカバーも。ぜひ、楽しんでいってください。
私の本業である音楽活動など、さまざまな情報はこちらのリンクからがとても良きです。
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オルタナティブ、ライブ活動、ランプ、弾き語りスタイル、バンドスタイル、耳と脳にこびりつく作品たち、心火、焔心の砦、美術館でも展示された指輪たち、自作ストップモーションアニメ、MV、毎週水曜生配信番組、2024年5月24日と6月9日のワンマンライブ、人生初の弾き語りツアー・・・
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