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映画「ロジャー・ラビット」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第17回

「結んで開いて…」
1988年公開映画「ロジャー・ラビット(Who Framed Roger Rabbit)」
文・みねこ美根(2018年11月1日連載公開)

正直に申し上げます。ディズニーランドが大好き。細部まで行き届いた世界観も、大切な思い出も、ガイドブックを何度も眺めて繰り返した妄想や、写真から想像した質感、想像で補った景色も、それぞれエリアのコンセプトに合った音楽も、すべてひっくるめて好き。

 アトラクションのもとになっているディズニー映画も小さいころにだいたいは見たのだが、ロジャー・ラビットは見たことがなくて、つい最近、一年前くらいに初めて見た。トゥーンタウンにある「ロジャー・ラビットのカートゥーンスピン」は、子どもながらに、いかがわしさ・不気味さ・グロテスクさを感じたことを覚えている。ビビットな色と、でかい音、「インスタント穴だよぉ」…。「ホーンテッドマンション」や「白雪姫と七人のこびと」、今はなき「シンデレラ城のミステリーツアー」のような異色の雰囲気があり、行けば必ず乗る。もう今もすごく乗りたい。

ロバート・ゼメキス監督作品であり、製作総指揮はスティーブン・スピルバーグ、アニメーションと実写の融合、ディズニーキャラクターやワーナーブラザーズのキャラクター(トゥイ―ティー、バッグスバニーとか)、他にもベティ・ブープ、フィリックス・ザ・キャットなど、めちゃくちゃにいろんなものが登場する本作。人間とトゥーン(アニメキャラクター)が共存する世界、という設定で、実写の中にトゥーン、アニメーション背景の中に実写、など合成が多く使用されているのだけれど、「えーっ!これどうやって撮ったんだ!?」というシーンばかりで、トゥーンの影、実写の小物の細かな動きなど、かなり丁寧に作り込まれており、30年前の映画だけれど、違和感なく楽しめる。

 私立探偵エディ(ボブ・ホスキンス、第7回紹介の「フック」でスミー役)は訳あってトゥーンを恨んでおり、酒浸りの生活の中、しぶしぶ引き受けた、映画スター:ロジャー・ラビットのグラマラスな妻ジェシカの浮気調査をきっかけに事件に巻き込まれていく。セクハラをする子役ベビー・ハーマンや、煙草を吸う子ども、殺人事件に、トゥーンを処刑する溶解液、などなど、大人向けの内容。「魔法使いの弟子」を演奏して箒たちに掃除をさせたり、メリーポピンズのペンギンたちが酒場で働いていたり、冗談のきついトゥーンたちも面白い。

途中、ロジャー・ラビットを探すドゥーム判事(クリストファー・ロイド、「バックトゥザフューチャー」ドク役)に酒場にいた一人が「あいさつしな、ハーヴェイ」と冗談を言うシーンがある。これは、もともとは戯曲で1950年アメリカ公開の映画「ハーヴェイ」のことだ。心優しい主人公にしか見えない2足歩行の大きなうさぎ「ハーヴェイ」、二人の不思議な関係を描いたコメディでこれも好きな作品。こちらもおすすめ。

 今日から11月。もう今年も残すところ2か月か、冗談きついな。何も考えなくとも楽しめる「ロジャー・ラビット」でユーモアセンスを得て頑張ろう。あと私のライブにも来てね。

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モチーフ:ジェシカの足、ロジャー・ラビットの蝶ネクタイ、
     溶解液、パンチングマシーンが出てくるハンマー、
     ベビー・ハーマンの腕と葉巻、エディの虫眼鏡、後ろに隠れるロジャー…
音楽:「Why Don’t You Do Right?」Alan Silvestri(オルゴールver. cover)

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