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たゆたえども沈まず・リボルバー・ゴッホのあしあと/原田マハ






私の中で、原田マハさんは最も信頼度の高い作家さんの一人です。
ただ、マハさんが得意とする美術系の著書は、まだ手を出せずにいました。
私が美術系にそこまで興味も知識もなかったから。


一方、母はマハさんの美術系の著書が好きで話にはよく聞いていたし、母棚にマハさんの美術系の著書が何冊かあったので、いつか拝読しなければとは思っていたのです。


そして、いよいよそのタイミングが来たようで。
マハさんの新刊、リボルバーを拝読しようとしたら、母が先に「たゆたえども沈まず」と「ゴッホのあしあと」を拝読した方がいいと言うので、素直に従い一気に3冊拝読しました。
同じ作家さんの本を続けて拝読しない私にしては珍しいことなのです。
(2021,9,16〜22読了)






「たゆたえども沈まず」


史実を基に描かれたフィクション。
実在した美術商・林忠正 と、画家・ゴッホ 、ゴッホの弟で美術商・テオを追う形でストーリーが進んでいきます。


いくら美術系に無頓着な私でも、さすがにゴッホのことくらいは知っていましたが。。。
マハさんの鋭い考察により、ゴッホの人となりが見えてきた気がして強く惹かれました。
そして林忠正という人がいたこと、美術史がどんなものだったかということがわかり、改めて美術というものの奥深さを知りました。



林忠正は、パリで日本の美術を広めるのに大きく貢献した方ですが、日本に戻ったら国賊などと呼ばれ、夢半ばでこの世を去ったそうです。
そしてゴッホも存命中には評価されず、兄の絵を世間に認めて貰いたいと考えていた弟テオと共に夢が叶わないまま若くしてこの世を去っているそうです。


報われなかった人たち。
でも、本当にそうなのだろうか。


たゆたえども沈まず


この言葉は、パリの標語です。
世の中の波にゆられ、沈んでしまったかのように思われる人たちですが、彼らの残したあしあとは後世にしっかりと存在しています。
沈まなかったんです。
マハさんが小説を通して、私たちに荒波に揉まれても沈まなかった人たちの生き様の手本を教えてくれたような気がします。




「リボルバー」

本書も、史実を基に描かれたフィクション。
ゴッホが何故若くしてこの世をさることになったのかということにスポットを当て、ゴッホとゴーギャンの関係性を紐解くようにストーリーが展開していきます。



ゴッホとゴーギャンは2ヶ月間だけ共に暮らし、切磋琢磨しながら絵と向き合っていたそうです。
真逆の2人ですが、芯にあるものは同じ。
絵画の新しい時代を切り開いて行った人たち。
新しい時代を切り開いて行く人たちの苦悩と情熱をまざまざと見せつけられたようなお話でした。



「たゆたえども沈まず」も、「リボルバー」も、マハさんなりの考察で描かれたフィクションなのですが、事実を織り交ぜてあるのと、マハさんのただの妄想に留まらぬ取材力と考察力で、もはやこれが事実ではないだろうかと思えてなりませんでした。


美術系に関して無知な私は、画家の名前や絵のタイトルが出てくる度に調べ、絵を拝見しながらマハさんの文章でその時々の想いや、人となりを頭で映像化し、吸い込まれるように読書していました。




小説の主人公たちは、きっとマハさん自身なのだと思います。
物語に出てくる実在した人物たちに寄り添い、まるで見てきたかのように描かれた文章。
改めてさすがマハさんだなと感じました。




「ゴッホのあしあと」

こちらは、「たゆたえども沈まず」を詳しく解説された1冊。
正直、驚くほどの取材力です。
だから、こんなに鮮明に考察できたのだと納得。



好きなものを公にプレゼンするならば、ここまでしないと情熱が伝わらないんだと思います。
自分の好きがどれだけ軽いものだったかを痛感させられました。
更にマハさんの素晴らしいところは、読者を置いてけぼりにしないところ。
凄い熱量の文章なのだけれど、独りよがりではないのです。
だから、興味なかったものでも途端に魅了されてしまう。




そして、美術の世界の奥深さを見せつけられた私はマハさんの策略にハマり、これから沼化していきそうな予感がします。








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