- 運営しているクリエイター
#小説
【短編小説】ブロークン・ストロベリー
何が『愛』だ。
バキバキに割れたスマホを、もう一度壁に向かってぶん投げる。どん、と鈍い音がして、ガラス片が飛び散った。次々に流れてくる涙と鼻水をそのまま垂れ流して、何もかもをぼんやりさせるためにストロングゼロを飲む。空になった缶を、床に投げ捨てる。もう既に、酒とモンスターの空き缶が10本転がっている。
ぴんぽん、と間抜けにインターホンが鳴った。なんなんだよもう。ドア越しに、はい、と答えると、ヤマト
短編小説:夢は泡沫、消えるまで
落選作。「美容室」をテーマにした短編小説賞に応募していたやつです。
「あのー……すみません……」
控えめに肩を叩いてみるけど、起きない。さっぱり起きない。
「何、また寝たの?」
僕より一年先輩の翔さんが、小さい声で尋ねてくる。僕は無言で頷いた。
新人の最初の仕事は、シャンプーだ。毎日毎日、シャンプー台の前で、ひたすら髪をシャンプーし続ける。それが新人の仕事。……とは言っても、だ。
「もうこ
短編小説:空が見えたら、それでいい
うわ~、三年前の小説だ。青いな~。これも「小説家になろう」のサイトから移動してきました。
潰れた煙草の空き箱と、折れたピック二つ。ところどころささくれた六畳半。馬鹿でかいアンプと五万のエレキギターは、この部屋にも、俺にも似合わない。
上京して五年。腐る、とはこのことだ。俺の人生設計では、もう既に東京ドームを満員にしているはずだった。一緒にステージにいるはずだったバンドメンバーは徐々に減り、最終
猿でも分かる白旗の振り方
嫉妬は「他の人と同等の物を得たい」という感情、妬みは「持っている物を奪いたい」という感情であると、何かの本で読んだことがある。いや、インターネットだっただろうか。もう忘れてしまった。
では、「今持っている物をすぐにでも手放したい」という感情には一体何という名前が付いているのだろうか。
「犯人に告ぐ! 今すぐ銃を捨て、人質を解放しろ!」
鳴り響くサイレン。目を容赦なく刺しにかかる赤いランプ。
「……
短編小説:さよなら、楽園
「小説家になろう」から移動させてきた、青すぎる短編小説。「小説家になろう」では「楽園を出る時」っていうタイトルで出してたけど、メモに残ってたタイトルの方が青さが分かりやすいので改題。
いつも通り。何もかも、いつも通り。チャイムと同時に教室を早歩きで飛び出して、駆け下りる西階段。東校舎の一階の、一番端。学校一『移動がめんどくさい教室』が、放課後の私の戦場。参上、とばかりに勢いよくドアを開ける。
「