見出し写真

嬉しい誤算だらけの安曇野移住生活 ​

ちょくちょくnoteを書きたかったけれど、最初の一発目を気合い入れてヘビーに書きすぎたせいか、同じ熱さで書くのにエネルギーを要しすぎて、いつのまにか半年も経ってしまいました。この半年、たった半年とは思えないほど濃密な毎日でした。楽しくて忙しくて人生変わりまくった半年でした。想像以上というか、予想外というか、嬉しい誤算だらけ。今回はそんな移住生活のことを書いてみたいと思います。

※2022年に改めて書いた移住の記事「安曇野移住5年目、安曇野と移住の良さを全力で語ります」も是非お読みください。

東京にいた頃より人と会っている


手塚建築研究所を退職して安曇野で設計事務所を始める決意をして、長年住んだ東京を離れて安曇野に来ることの一番の不安は、寂しいんじゃないかということでした。仕事の相棒の寺田が一緒に来てくれるとはいえ、大自然の中で孤独を感じることは多少覚悟していました。生まれ育った訳ではないから友達は1人もいない。親戚も知っている人すらちょっとしかいない。毎日あまり人と話さずに生きていくなんて、大丈夫かな。前職の手塚事務所がワイワイ賑やかな仕事環境だっただけに、これが一番不安でした。

ところがこれが大間違いで、毎週毎週、誰かが遊びに来てくれる日々が続いています。夏は特に多かったけれど、冬になった今でもほぼ毎週誰か遊びに来ています。安曇野という土地が良いからか、近くに来るとみんな立ち寄ってくれるのです。家が良いのもあって、遠くてもわざわざ遊びに来てくれます。最初は東京近辺の友人が中心で、そのうち安曇野近辺にも1人2人と知り合いができました。その人に今度うちでパーティーしましょうと声をかけたら、喜んでたくさんのお友達を呼んでくれて、大賑わいのパーティーをすることも。来てくれた人はみんな、こうやって集まって人の家でご飯をいただくことなんてなかなかないから嬉しいと喜んでくれます。一度来た人は次に来るときまた違う人を連れてきてくれるので、今では安曇野松本近辺にたくさんのお友達ができました。

画像1

画像2

画像3

東京に住んでいたころは友達は近くにたくさんいたけれどわざわざお互い会いに行ったりもせずいつのまにか日々が過ぎていましたが、遠くの豊かな場所に身を置いたら逆にみんなが遊びに来てくれるようになったり、自分も人に会うためにせっせと連絡をするようになったり、随分変わったなあと思います。人に会って話をするということが東京にいるときよりも貴重だからか、ありがたみが増したし、出会う人出会う人シンパシーを感じる素敵な人が多かったりで、人との縁をすごく大切にできるようになりました。

移住する前にまず掲げた目標は、今年度中に安曇野界隈で友達を100人つくるということでした。地方で何かを始めるのにあたって、大事なのは人との縁だということは今までの仕事での経験で心底感じていたことだったので、できるかわからないけどとりあえずキリよく100人と言ってみることにしました。そして、今では本当に100人に届きそうな勢いで、たくさんの素敵な人と出会い続けているのです!年始に開催した餅つき大会には、長野県内で知り合えた人をお声がけして、なんと40人もの方々にお越しいただきました。これは我ながらものすごいなあと感動しました。友達ゼロからスタートで、40人も集まってくれて、みんなでワイワイ。男性陣はせっせと餅をついたり薪をくべたりしてくれて、お母さんたちは餅の丸め方を教えてくれて、ご近所の人はお漬物を持ってきてくれたり、人の縁の素晴らしさをあらためて感じられた特別な一日でした。

画像4

画像5

画像6


田舎暮らしはものすごく便利


移住してまず意外だったのは、安曇野で暮らし始めて全く不便を感じていないどころか、逆に便利だということ。私の家・事務所のある安曇野市の豊科という場所は、安曇野インターのすぐ近くで、風景こそ北アルプスの眺望に田んぼが広がる美しい景観なれど、とても住みよい町です。夏は自転車でも行ける範囲に大型スーパー、美味しい野菜が買える大型産直ショップのハイジの里、とっても美味しいSWEETというパン屋さん、何より生活用品から仕事で使う材料系まで全部が揃う大型ホームセンターのカインズホームがあるのです。ちょっと何か足りなくなっても車で5分もしないうちに買いに行ける。これって東京にいたころよりよっぽど便利だと思うのです。

昔は大きな本屋さんがないのが不満だったのだけれど、最近は安曇野インターを降りてすぐのところに平安堂ができたし、大きな電気屋さんもできて、アウトドアマンに嬉しいmont-bellとA&Fまでできました。私はあまり行かないけど、ニトリもその一角にできました。いつのまにか田舎も便利になっている。土地が広すぎて密度は薄いけれど、必要なものがぎゅっとまとまってくれているおかげで、とてもコンパクトで住み良い環境ができあがっています。ちょくちょく買いに行きたい食料や生活用品以外は、AmazonやASKULその他インターネットで。地方でもちゃんと次の日には来てくれます。いちいち足を運ばなくても欲しいものがすぐに手に入る、本当に便利な時代になりました。

安曇野は新幹線が通ってないので交通は不便だね、と言われることもありますが、交通も意外と便利なんです。うちから車で松本インターまで10分ほど。松本インターのバス停に車を停めて高速バスに乗ってしまえば、3時間ちょっと寝ている間にいつのまにか東京に着いています。電車のほうが少し早いけど、最近は携帯で予約して携帯で乗車券を取れる高速バスの方がよっぽど便利で気楽。東京も出やすいけど、新潟や名古屋にも近くなりました。私たちのような仕事の場合は東京に出にくい地方移住はちょっと大変かなと思いますが、その点安曇野はちょうど良い距離感なのです。


コミュニケーションの多様化時代


設計の仕事をしていく上で一番大切なのがお客さんや業者さんとのコミュニケーションです。東京にいればすぐに会いに行ける人も、安曇野に身を置いたことでコミュニケーションが希薄になることは避けたかった。でもこの時代、全然大丈夫だろうという確信はもともとありました。最近はお客さんとのやりとりもLINEのグループメッセージ等で密に連絡を取り合えるし、画像ありの電話会議もできるし、遠くに居ても距離感を感じることや不便は全然ありません。

そして、地方に来てなにかをやっているということが、とても発信しやすい時代です。FacebookInstagramを使って日々考えたことやつくったものなどを発信していると、たくさんの人が共感してくれる。ちょくちょくは会えない友人や親戚も、SNSを通じて私のやっていることを知って、自分のことのように喜んだり応援したりしてくれる。安曇野でこういうことをやっているよと発信すると、近くに住んでいる面白い人と繋げてくれたりもする。本当にありがたいことです。東京にいた頃は人がたくさんいすぎてなかなか面白い人と出会えない、出会いを大切にできなかったのですが、今は絶対数が少なくなったのにも関わらず、SNSの力と地方らしい稀少価値的なものによって、良い出会いに恵まれ続けています。

そんな時代にも根強い発信力を持つ新聞。先日、長野県の地方新聞である信濃毎日新聞の折り込み雑誌、MGプレスにMIGRANTを紹介していただきました。一面にばーんと写真が出て、三面にも記事を載せてくださって、なかなかの目立ちっぷり。おかげさまでいろいろ電話をいただき、また良い出会いがたくさんありました。まだ設計事務所を立ち上げて間もない私たちのことをこれだけ大きく取り上げてくださって、喜んで応援してくれること、そしてそれを見た人たちがすぐに連絡をくれる、これが地方に出てくることの良さだなあと思いました。がんばればすぐに見つけてもらえる、おもしろい人たちを見つけたいとアンテナを張っている人もいる、新しくなにかを始めるには本当に心強いことです。

画像7


「スローライフ」「地方を元気にする」とは違う


移住を決めたときはほとんど勢いで、大してビジョンもなく絶対その方が楽しいじゃんという感覚的なものだけで突き進んできましたが、そろそろちょっと自分の目指すことを言葉にしていきたいなと思っています。

ちょっと前にスローライフって言葉が流行ったことがありました。田舎に言ってのんびり暮らそう、セカンドライフを豊かに暮らそう、という流れだったと思いますが、私たちの移住のかたちは結果的にそれとはちょっと違う方向性に来ていると思います。たしかに田舎で東京にいたころよりも夜遅くまでは働かなくなったし、気持ちはすごくのんびりしていて、空気も水も食べるものもとても豊かになっていて、それはスローライフ的なものであると思うのですが、セカンドライフとは違うのですよね。あくまで、私たちは設計の仕事という大きな世界の中で生き続けていて、別の人生を始めたというより「東京で得た能力を持った上であえて地方を拠点にすることで全然別の次元に進む」ということなのでした。私たちはこの豊かな土地に、設計者としても遊びのフィールドとしてもとてつもない可能性を感じて、それに夢を抱いてここにしかないすごいものを喜び勇んで受け取りに来たようなつもりなのです。

過疎化してきた土地を若い人の力でなんとか元気にしたい、みたいな話もあると思うのですが、そういうのとも全然違うんです。だって安曇野ってもともと豊かな土地なんだもん。若い人は減ってるってご近所さんは言うけど、でもここには元からとてつもない魅力と可能性があって、わざわざ私が元気にしてあげる必要はないんです。どちらかというと、東京でちょっと疲れた私は、「元気にしてもらいに来た」みたいな感じです。実際に、ここでたくさんの人と出会って、みんな本当に良い人たちばかりで、癒され励まされ、未来には希望ばかり見えて、不安よりもわくわくが芽生えるばかりですっかり元気にしてもらえました。居るだけで美味しい空気に癒され、水道の蛇口から出しただけの水はとても美味しく、野菜はツヤツヤで甘くて味が濃くて、なによりも生きていく中で感じるストレスが全くない。東京にいたころはちょっと電車に乗って出かけるだけで、小さなストレスが身体に蓄積していたんです。暮らしていたときは全く気づかなかったけど、外に出るとよくわかる。あのころ受け取っていたストレスがここでは全く無くなりました。これは本当にすごいことだと思うのです。

画像8

画像9

画像10


遊びは仕事に繋がる


全然話が変わりますが、私が去年やりたかった一番大きな目標は、独立とか仕事とかではなく、知床エクスペディションに絶対に行く!ということでした。冒険家の新谷暁生さんのツアー。私はもともと山が大好きで、暇さえあれば山に登っていて、それで憧れていた山岳アウトドアライターの高橋庄太郎さんが毎年参加しているツアー、人生変わるから絶対に行った方がいいと言われて、2年前から絶対に行くと決めていた旅でした。一週間かけて知床半島をシーカヤックでまわる旅、そこにそれだけの時間とお金を費やすのは、普通の社会人ならなかなか難しい話。でも私はどうしても行きたかったんです。

ところが9月に行こうと決めて申し込んだ後、とある小さい公共事業のコンペの詳細が出て、大きなチャンスだということに。それもやる気満々になっていたのですが、審査の日が知床に行く日と被っていて、どうしよう、と相棒寺田に相談したところ、「島田さんは知床に絶対に行った方がいい、仕事のチャンスはいくらでもあるから」と。なんて素敵なパートナーなんだと感動し、念願の知床に行くことができました。そこで出会った圧倒的な大自然や、一緒に旅をした素晴らしい人たちとの出会いは一生モノで、庄太郎さんの言ったとおり、大きく人生を変えてくれました。知床の旅の詳細はこちら。そしてその時の縁で、今まさにいろいろな仕事が動いています。本当に素晴らしい縁に恵まれた機会でした。寺田には冗談で知床に営業に行ってくると言っていたのですが、本当にそうなりました。どんな遊びでも、自分がこれをやると決めて全力で立ち向かったり楽しんだりしたことって力になるし、そうして出会えた人たちは確実に人生の価値観を共有できる人たちなんだと思います。

画像11

画像12


思いきり遊び楽しんで生きることを人生のNo.1プライオリティとすると宣言してきましたが、それはまた、巡り巡って楽しい仕事ができることにも繋がっていくのだなと気づきました。そしてそして、安曇野は外で遊んで生きるには最適の場所です。散歩するだけで大きな北アルプスがどーんとそびえて景色が雄大だし、自転車でわさび田のまわりを駆け巡るのは本当に気持ちがいいし、登山口まですぐ行けて山も登り放題、川がたくさんあるからパックラフトで川下りもし放題、白馬が近いから冬もスキーに行き放題、本気で遊びまくりすぎて最近疲れてきたほどです笑。本当に素晴らしい場所に暮らしています。

画像13

画像14

画像15

画像16


同じような人が増えたらいいと思う


最近ずっと考えているのが、あまりにも自分の移住生活がいいことばっかりなので、みんな安曇野に来てくれたらいいのに!ということです。ものすごい利己的な考えで恐縮ですが、本気でそう思っています。まあ、安曇野に来てくれたら嬉しいけど、他の場所でももちろんいいと思います。ある程度若くて、これから何かを始めるのに、今までのように当然東京、という流れではなくて、東京以外の場所に目を向ける人が増えたらいいなと、最近はそんなようなことをずっと考えています。

今の時代だからこそ、東京に身を置く必要のない人が増え、地方にチャンスを得られる人が増えてくるはず、そしてそうなっていったら、もっと豊かでゆとりのある社会になっていくんじゃないかと。東京に住んでいた最後の1年間、中野の実家から等々力の事務所まで毎日満員電車で通勤して、ああこれはやばいな、と思ったんです。そんなの今に始まったことじゃないけど、みんなイライラしていて、焦っていて、ずっとスマホをみつめて、ちょっとぶつかったら舌打ちして、そういう場所にいるだけで心が荒んでいきそうだと思った。私も、がむしゃらに働いてばかりいたころはまさにその中の1人で、まわりが見えていなかったし、自分さえよく見えていなかった。疲れていることにすら気付かず、ひたすらまわりと同じように走り続けていて、それしか人生の選択肢はないような気がしてた。でも一歩抜け出すと、自分が豊かに生きれる場所も、選択肢も本当はいろいろあるんですよね。

教育はたぶん、まだまだ東京でしか得られないものがたくさんあると思うのだけれど、仕事はどんどん変わっていくんじゃないかな?腰を据える場所は、もっと別のところでもいいんじゃないかな?老後じゃなくて、一番油ののってる時期に、あえて場所を変えるのもいいんじゃないかな?今年から地方創生の移住・起業支援金などもあるし、長野県は移住や創業支援がどんどん充実してきてるので、そういう考えに良い波が来てる感じがします。

なにより、私は自分のご近所に、たくさんのおもしろいお友達がほしいのです!!一緒に未来への希望を語り合って助け合える友人が、これからも増え続けてくれたらいいなと思います。いきなり移住は大変だから、まずはパソコンひとつもって、Wi-Fi あるところにノマドワークしに来てみたらいいじゃないかと。そんなわけで、もうすぐ始める我が家の民泊は、そんなこともコンセプトにしたいと思っています。一緒に北アルプスを眺めながら働いてみませんか?そちらはまたHPなどでお知らせします。

画像17

またまた長くなりましたが、最後まで読んでくれた方々、ありがとうございます。これからも少しずつですが、思ったことをいろいろ、書いていきたいと思います。

移住生活のその後

この記事を書いてから2年あまり経った今でも、かなりの数の方々がこの記事を読んでくれているようです。とっても嬉しいです。ただ、この記事ではあまりうまく安曇野の良さを語りきれなかったなあという気持ちがあり、また時間を見つけてなにか書きたいなと思っています。

2020年6月から、お隣の家を借りてシェアハウスを始めました。こちらの記事も読んでみてください。

2022年に、あらためて移住のことを書いた記事です。こちらもぜひ、続編として読んでみてください。

私の記事が移住者向けの安曇野市シティープロモーションサイトに掲載されました。こちらも読んでみていただけたら嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?