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GOOD WAR TOUR 21. おふろの跡地

昨晩東京にやってきました。
一晩眠り、北千住BUoY入り。
北千住BUoYは、元銭湯のおふろの跡地。

覗くよね。
覗くよね。

破壊されたタイル、剥がされた床、剥き出しの梁、柱、配管、あっちとこっち。
よっぽどストレートに跡地感がある。「剥き出し」という印象。
やっぱり地下には地下独特の雰囲気があるな。
広島の、平和記念公園内にあったレストハウスの地下展示室を思い出した。

お風呂に入るということはどういうことなのか。
癒し、憩い。フラットになれる場、リセットできる場。
お風呂に入ってるときっていろいろなことを思いつくんだけど、上がる頃にはぜんぶ忘れてるんだよな。

夢っぽい。
壊れてしまった夢とおふろ。
叶わなかったもの。
廃墟感、夢破れて。
楽園の終わり。
あの空間でティラノサウルスに宴会していてほしい。

お風呂の(空間の)中に入っていると「あっち側にいってしまう」感覚がある。
ああもう覚めてしまう、夢が遠くなってゆく。

展示の位置を決めて、照明が灯ってゆく。
今回ここには生ドラムがない。かわりに初登場の電子ドラムがある。
電子ドラムと生ドラムの違いについて改めて考える。
置き場所ひとつでずいぶん違うものになってしまう。
どっちがこっち? どっちがあっち?

遠くなってしまった「身体」「生身」。
往々にして、レプリカのほうが本物より近い場所にある。
本物はどんどん遠くなってゆく。

BUoYの真ん中、太い柱がどっしりと立っていて、どこにいても死角ができる。
名村造船所跡地ではたくさん釣られていたカーテン。
カーテンを「隠すもの」とすると、それは既に太い柱が叶えている。
「ゆれるもの」とすると、それは必要なのかもしれない。でもここは地下で、あの場所のような風は吹かない。
換気扇の音、暖房の唸り、やけに頻繁に通る救急車のサイレン、電車の音。

伊奈さんはもともとピアノから音楽を始めたらしい。
電子ドラムのいすがなく、仕方なしにピアノの椅子を電子ドラムの前に据えたとき、これはもう伊奈さんのモニュメントじゃんと思った。

モニュメントという言葉、乱用しすぎかもしれない。もはやなんでもこれでよくなってしまう。「エモい」くらい汎用性ある。

パイプ椅子に座って静かにピアノを弾く伊奈さんは、子供の頃見たオルゴールのような、とてもよいものに見えました。

覗くよね。

「こうなればよかった気がする、という作り方をしようかな」と朗くんが言った。


制作35回目
日時:2022年2月8日(火)
出席:たくさん
場所:北千住BUoY


『GOOD WAR』は、私たちが「あの日」と聞いて想像する争いと日常で構成されています。
私たちは生きている限り、これからも誰かと戦い続けなければいけません。現時点で戦っていなくても、生きている限りいつか争いに巻き込まれます。『GOOD WAR』ではいずれ来る「その日」と、過去にあった「あの日」との向き合い方を鑑賞者と共に考えるべく、だれかの「あの日」で集積された記憶のモニュメントとして演劇作品を立ち上げます。

『PIPE DREAM』は、演出と出演を行う河井朗の祖母が医療ミスで植物状態に陥ったことをきっかけに、河井自身がマッチングアプリなどで無作為に出会った人々に「理想の死に方」についてインタヴューを行い、その中で語られた言葉から構成されています。
自身で動かすことのできない自分の身体、生きることも死ぬことも決められなくなった遠い自身、その自身の決定権を握っている人、それぞれと意思の疎通を図ることを試みる作品です。

『GOOD WAR』『PIPE  DREAM』

原案 『よい戦争』(作:スタッズ・ターケル 訳:中山容 他 1985年7月25日出版:晶文社)
構成・演出 河井朗
ドラマトゥルク 蒼乃まを、田中愛美
出演 伊奈昌宏、諸江翔大朗、渡辺綾子
美術 辻梨絵子
音響 おにぎり海人、河合宣彦
照明 松田桂一
制作 金井美希
制作協力 (同)尾崎商店、黒澤健
衣装協力 MILOU
記録 田中愛美

日時・会場
2022年2月10日(木)〜2月15日(火)|北千住BUoY
※すべての上演は終了しました。ご来場いただきました皆様、気にかけてくださった皆様、誠にありがとうございました。

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