【ボカロになったらいいなと思う曲を自分で作詞しました】㊽"楽園を返して"

タイトル『楽園を返して』

よくもやってくれたな
こんなにメチャクチャにしやがって
『どうしたの？』って　何だよ
何？　いきなり部外者がやってきたから困惑しているの？
あなた達は楽園に住む私達を救ってくれるヒーロー
他のみんなも　あなたも　そう思っている
だけど　私は違う
あなた達は　この楽園は偽りだと言っていた
実は影で人工知能が働いていて
手首に埋め込まれた　マイクロチップで
あらゆる事を管理し支配されていると
私達は誘拐されて　洗脳されて
ここに住んでいる――と。
だから、あなた達は私達を元の居場所に帰るために
マザーコンピュータである人工知能を破壊した
そして、全ての機能を失ったこの楽園は
崩壊し　あなた達は洗脳された人達を
電車に乗せる真っ最中
はぁ　ふざけんなよ
なに正義のヒーロー気取りみたいな事をしてくれているんだよ
お前らはいいよね　帰れる場所があって
そこのお前も　お前も　お前も
助けているあなた達も
みんな　みんな　楽しい場所へと変えるんだ
私にはない
アルコール依存の両親と
毎晩暴力を振るってくる兄と
いつも警察のお世話になっている友達と
糞みたいな環境に帰らなきゃならない
こういうの何て言うんだっけ――そうそう、"地獄"って言うんだ
みんなは　優しい両親と　仲の良い友達と
美味しい給食を食べて　遊んで　勉強して
まるで"天国"みたいな所に変えるんだ
楽園から天国へ
ふーん、何と幸せなこと
あなた達もそうなんだよね
私みたいな奴は　ここにはいない
はぁ、実を言うと　正直に言うと
知ってたよ
いや、何となくは分かってたよ
逃げ出そうとしていた子が、いきなり真面目になったりとかしてさ
間違いなく何かしら裏があるんだろうな――とは思ってたよ
けど、それでもいい
あんな所よりは、ずっといい
あんな掃き溜めみたいな所よりは――本当に楽園だよ。ここは。
なぁ、ヒーロー気取りさん
あなた達の周りには、腕に傷跡がある子はいるのか？
首に縄の跡がある子はいるのか？
目に痣のある子はいるのか？
ずっと何かに怯えている子はいるのか？
トイレにこもっている子はいるのか？
身体に明らかに事故で出来たとは思えないほどの傷がある子はいるのか？
どうなの？　どうなんだよ！　答えろ！
やっぱり　そうだと思った
あなた達の周りはニコニコハッピーな連中しかいない
お前も　お前も　お前も　お前も　お前も
だから　私の気持ちなんて分かりはしない
見てよ　この腕の傷　何だと思う？
ここに来る前は毎日　リストカットしてたんだ
そんでもって　この首の跡　何だと思う？
てるてる坊主の練習　もちろんティッシュとかじゃなくて　私が部屋でぶら下がるの
ほんと人間じゃなかったわ　あの時の私
家庭にも居場所はなくて　悪友と豪遊して
快楽にふけっている時はいいけど
醒めた時の絶望感と　やるせなさと　
虚しさは　ハンパじゃない
夢であって欲しかった　夢を見たかった
寝ようにも　性欲に異常な兄に狙われる
部屋に鍵をかけても　やってくる
お前はスヤスヤ寝れていいよな
こっちは　まともに寝れやしない
もう何度目かの　トリップをしようとした時
私は光に包まれた　
そして、気づけばここにいた
ここは何もかも　今いた環境とは違っていた
周りの人達は優しいし　まともで美味しいご飯が毎日出てくる
楽しいゲーム　心休まる自然
ここには　酒やドラッグもない
歌声が響き渡る　最高の楽園
それが仮初かりそめだったとしても
偽りだったとしても　実験場だったとしても
私は　私は　それでよかった
洗脳されてよかった　暴力よりはずっといい
支配されてよかった　孤独よりはずっいい
このまま永遠に続ければいいのにと思った
私はここで一生を過ごすと思っていた
性欲ではない愛を知れたし
酒や金で動かない友達も出来た
なのに　なのに　なのに
あなた達は　私の楽園を奪った
木っ端微塵に
返して　返してよ
私の楽園を返して！
あんな場所には帰りたくない！
あんな所に帰るくらいならここにいる！
もうすぐ爆発するなんて知ったことか
地獄みたいな場所で生きたまま返される事の方がもっと怖いよ
せっかくまともになったのに
また堕落した生活を送るなんてまっぴらだ
じゃあね、正義のヒーロー気取りさん
私みたいな　みそっかすは　楽園と共に消えるよ
悪く思わないでね
私が悪運だっただけだから

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